糸リフトで失敗しないためには
加齢とともに気になる顔のたるみやほうれい線。メスを使わない「糸リフト」は人気の美容医療です。しかし、「失敗したらどうしよう」という不安もつきものです。
日本全国105クリニックの10万件を超える症例分析では、20代~30代にPDO、40代以上にはPCLが選ばれる傾向が報告されています。理想の仕上がりには、正しい知識とクリニック・医師選びが不可欠です。
この記事では、形成外科専門医が糸リフトの種類や効果を最大限に引き出すポイント、そして失敗を避けるクリニック選びの重要性を解説します。あなたの美しい笑顔のために、ぜひ参考にしてください。
糸リフトの種類と効果を最大限に引き出す5つのポイント
糸リフトは、加齢とともに現れる顔のたるみやほうれい線、マリオネットラインといったお悩みを、メスを使わずに改善できる人気の美容医療です。しかし、数多くのスレッド(糸)の中からご自身の状態に最適なものを選び、理想の仕上がりを実現するためには、糸リフトに関する正しい知識を持つことが非常に重要です。適切な知識なく施術を受けてしまうと、期待通りの効果が得られなかったり、後悔につながったりする可能性もあります。
形成外科専門医として、患者さんの美しい笑顔と満足のために、糸リフトの種類や効果を最大限に引き出すためのポイントを具体的に解説いたします。この知識を身につけて、後悔のない糸リフト選びにお役立てください。

吸収性・非吸収性の違いと各素材の特性
糸リフトに用いられるスレッド(糸)は、大きく分けて「吸収性スレッド」と「非吸収性スレッド」の2種類があります。それぞれの特性を理解することが、ご自身に合った糸を選ぶ第一歩です。
- 吸収性スレッド
- 体内で徐々に分解・吸収される素材でできています。
- 体内に異物が残る心配が少ないという大きなメリットがあります。
- 分解される過程で、周囲の組織に生体刺激(バイオスティミュレーション)をもたらし、コラーゲン生成を促す効果も期待できます。
- 主な素材は以下の通りです。
- ポリジオキサノン(PDO)
- 比較的短期間(数ヶ月程度)で体内に吸収される素材です。
- 引張強度が高く、たるみをしっかりと引き上げる効果が期待できます。
- まだたるみが軽度な方や、将来のたるみ予防、軽度な輪郭形成を目的とする方に多く選ばれる傾向があります。
- 当院のVOVリフトやEPLINでも用いられる素材の一つです。
- ポリ-L-乳酸(PLLA)
- PDOよりも長く、約18~24ヶ月かけて体内に吸収されます。
- 吸収期間が長いため、より持続的なコラーゲン生成促進効果が期待できます。
- ポリカプロラクトン(PCL)
- 吸収されるまでに約1年~1年半と、最も長い期間体内に留まる素材です。
- コラーゲン合成を促進する効果がPLLAやPDOよりも高い可能性があります。
- 肌のハリや弾力の低下がより顕著な方に適しています。
- 当院のVOVリフトやEPLINでも用いられる素材の一つです。
- ポリジオキサノン(PDO)
- 非吸収性スレッド
- 体内に半永久的に残る素材でできています。
- 過去にはシリコンやゴールドが使用されることもありました。
- シリコンスレッド
- 弾性があるという特徴があります。
- しかし、非吸収性であるため、体内に異物感が残る可能性や、不快感、炎症のリスクが考慮されます。
- ゴールドスレッド
- 抗炎症作用やコラーゲン生成促進効果が期待されていました。
- しかし、リフティング効果は限定的であり、X線画像への影響や、皮膚の色素沈着の懸念がありました。
- 現在では、吸収性スレッドの進化により、より安全で効率的な選択肢が増えています。
- シリコンスレッド
形成外科専門医の立場からは、知覚異常や糸の露出といった合併症のリスクが低い吸収性スレッドが、長期的な視点で見ても患者さんの安全と満足度につながると考えています。スレッドの選択においては、素材の特性だけでなく、糸の太さやコグ(とげ)の形状、糸にかかる張力なども考慮し、患者さんの顔の状態に合わせた最適な選択が不可欠です。
ほうれい線・たるみ・マリオネットラインへの効果
糸リフトは、加齢によって生じる顔のたるみ、特に多くの方が悩むほうれい線やマリオネットラインといった溝の改善に高い効果を発揮します。これらのたるみは、単に皮膚の弾力が低下するだけでなく、以下のような複数の要因が複雑に絡み合って生じます。
- 皮膚の弾力低下
- コラーゲンやエラスチンといった肌のハリや弾力を保つ成分が減少することで、皮膚が緩みやすくなります。
- 脂肪組織の下垂
- 顔の脂肪パッドが重力によって下がることで、たるみが生じます。
- 表情筋の衰え
- 顔の筋肉が衰えることで、皮膚を支える力が弱まります。
- 保持靭帯の緩み
- 皮膚と骨をつなぎ、組織を元の位置に固定する「保持靭帯(リガメント)」という組織が、加齢とともに緩むことも、たるみを加速させる大きな原因となります。
糸リフトでは、コグ(とげ)が付いた特殊な糸を皮膚の下に挿入し、たるんだ組織を物理的に引き上げて固定することで、即座にリフトアップ効果をもたらします。これにより、ほうれい線は浅くなり、口角から顎にかけてのライン(マリオネットライン)も引き締まり、若々しい印象へと改善されるのです。
施術の成功には、顔面解剖学に基づいた正確なスレッドの挿入位置と、たるみを解消するための適切な「リフティングベクトル(引き上げる方向)」の設定が不可欠です。
- 解剖学の理解の重要性
- 血管構造のナビゲーション: 出血やあざなどの合併症を避けるために、顔の血管の走行を慎重に把握することが重要です。
- 顔面神経の保護: 顔面神経の経路を熟知することで、神経損傷を防ぎ、顔の自然な表情を保つことができます。
- 脂肪隔壁の操作: 加齢に伴う脂肪組織の変化に対処するためには、脂肪隔壁(顔の脂肪を区切る膜)の適切な操作が役立ちます。
- 保持靭帯の利用: 組織の歪みなく持続的なリフトを実現するためには、保持靭帯を適切に利用し、たるんだ組織を元の位置に再配置することが不可欠です。
- 挿入深さの重要性
- スレッドは、皮膚のたるみを効果的に持ち上げ、副作用を最小限に抑えるため、SMAS(浅筋腱膜系)層またはその近傍に挿入することが理想的です。
- SMAS層とは、表情筋や脂肪を支える膜のことで、顔のたるみに大きく関わる重要な層です。深すぎるとリフト効果が不十分になり、浅すぎると糸が透けて見えたり、引きつり感が生じたりするリスクがあります。
- リフティングベクトルと固定点
- たるんだ組織を、側頭筋膜や頬骨靭帯といった顔の強固な組織に再配置し、垂直的または解剖学的に最適なベクトルで引き上げることが、効果の持続に不可欠です。
当院では、患者さんの顔の状態を詳細に診断し、ブルーローズリフトなどを用いて、ほうれい線、たるみ、マリオネットラインといった具体的なお悩みに合わせた最適な治療計画を提案しています。適切な施術により、自然な形で顔の輪郭を整え、表情筋の動きを妨げない美しい仕上がりを目指しています。
リフトアップだけじゃない!肌質改善とコラーゲン生成
糸リフトの効果は、単なる物理的なリフトアップだけにとどまりません。挿入された吸収性スレッドは、体内で分解される過程で、周囲の組織に「生体刺激(バイオスティミュレーション)」をもたらし、肌の内側から若返りを促す働きがあります。
- 生体刺激のメカニズム
- 生体刺激とは、体が本来持っている「治ろうとする力」や「新しい組織を作ろうとする力」を促すことです。
- スレッドの挿入によって線維芽細胞が刺激され、肌のハリや弾力を保つために不可欠なタンパク質であるコラーゲンやエラスチンの生成が促進されます。
- 肌質改善効果
- コラーゲン生成が活発になることで、肌の内側から密度が高まり、全体的な肌質の改善につながります。
- 具体的には、小じわの改善、毛穴の引き締め、肌のキメが細かくなるといった効果も期待できます。
- これにより、肌のツヤと透明感が増し、より健康的で若々しい印象を与えることができます。
- 先進的なスレッドとヒアルロン酸(HA)の役割
- 特に、ポリカプロラクトン(PCL)スレッドや、ヒアルロン酸(HA)を組み込んだ先進的なスレッド材料は、より強力な生体刺激効果が期待されています。
- P(LA/CL)コポリマーとHAを組み合わせたスレッドは、即時的な機械的リフティング効果に加え、真皮(皮膚の奥の層)の「リモデリング(再構築)」を刺激する持続的な生体刺激効果を発揮します。
- これにより、顔の輪郭補正と肌質の改善を同時に実現することが期待されます。
- NAMICA(NAno–MIcro–CApsule)技術のように、HAを持続的に放出するシステムを備えたスレッドも開発されています。
- この技術は、HAをナノスケールまたはマイクロスケールのカプセルとして生分解性ポリマー繊維内に封入します。
- HAの早期かつ過剰な放出を抑制し、スレッドの分解速度に合わせて長期的なHA放出を可能にします。
- これにより、真皮再生を持続的に促進することが期待されます。
- HAは、その分子量(大きさ)によって細胞増殖、遊走、血管新生、抗炎症作用など、創傷治癒の各段階で重要な役割を果たすことが分かっています。
この「リフトアップ」と「肌質改善」の二重効果は、糸リフトが単なる一時的な引き上げ治療ではなく、肌本来の力を引き出し、長期的なエイジングケアの一環として非常に有効である理由の一つです。内側から湧き上がるようなハリとツヤは、患者さんの自信にも繋がるでしょう。
20代~30代はPDO、40代以上はPCLが選ばれる傾向
糸リフトのスレッド素材選びは、患者さんの年齢層や肌の状態、期待する効果によって最適なものが異なります。日本の大規模な調査研究によると、このような傾向が明確に示されています。
- 日本の大規模調査による傾向
- 日本全国105クリニックにおける106,639件の顔面スレッドリフト症例を対象とした分析(2020年から2024年)では、以下のような結果が報告されています。
- ポリジオキサノン(PDO)スレッド
- 全症例の約57.2%で使用されています。
- 特に20代から30代の比較的若い患者さんに多く選択される傾向が見られました。
- PDO群の平均スレッド数は10.52本と、PCL群(6.57本)よりも有意に多いことが示されています。これは、細やかな調整が可能であることを示唆しています。
- ポリカプロラクトン(PCL)スレッド
- 40代以上の高齢患者さんにおいて、より頻繁に使用される傾向がありました。
- ポリジオキサノン(PDO)スレッド
- 日本全国105クリニックにおける106,639件の顔面スレッドリフト症例を対象とした分析(2020年から2024年)では、以下のような結果が報告されています。
- PDOスレッドの特性と20代~30代のニーズ
- 特性: 引張強度が高く、たるみをしっかりと引き上げる効果が期待できます。体内に吸収される期間が数ヶ月程度と比較的短めです。
- ニーズ: まだたるみが軽度な時期に、将来的なたるみ予防や、顔の軽度な輪郭形成を目的とする場合に適しています。また、初めての糸リフトとして、比較的短期間で効果を実感しつつ、体内に異物を残したくないという若い世代のニーズにも合致しています。
- PCLスレッドの特性と40代以上のニーズ
- 特性: 体内に吸収されるまでに約1年~1年半と長く、持続期間が長いという特徴があります。さらに、コラーゲン合成を促進する効果がPDOよりも高い可能性があります。
- ニーズ: 肌のハリや弾力の低下がより顕著になり始める40代以上の患者さんにおいて、長期的なリフトアップ効果と肌質改善効果の両方を求める場合に適しています。加齢による深いほうれい線やマリオネットラインの改善にも寄与します。
形成外科専門医の立場から言えるのは、患者さんの年齢層だけでなく、肌の質感、たるみの程度、ライフスタイル、そして「どのような状態を目指したいか」といった期待する効果を丁寧にヒアリングし、最適なスレッド素材を提案することが非常に重要だということです。当院では、VOVリフト、EPLINなど、それぞれの患者さんに最適なスレッド素材を提案できるよう、多様な選択肢をご用意しています。
メッシュスカフォールド型スレッドで組織接着と長期維持
スレッドリフト技術は日々進化を続け、近年では「メッシュスカフォールド型スレッド」と呼ばれる新しいタイプの糸も登場しています。これは、従来のコグ(とげ)付きの糸の機能に加え、網目状(メッシュ)の構造を組み合わせることで、より強力な組織接着と長期的なリフトアップ効果を目指したものです。
- メッシュスカフォールド型スレッドの構造とメカニズム
- 3Dメッシュ構造: 糸自体が立体的なメッシュ構造を持っています。
- 組織接着の強化: 挿入された後、周囲の皮下組織や脂肪組織がメッシュ内に入り込み、しっかりと絡み合います。これにより、糸と組織の接着面積が広がり、より強固な固定力が生まれます。
- スカフォールド(足場)形成: この強固な組織接着により、糸が皮膚組織の中で安定した「足場」を形成します。
- 長期的な効果維持の可能性: 従来の糸リフトでは、糸の吸収とともに効果が薄れてしまうことが課題でした。しかし、メッシュスカフォールド型スレッドは、糸が体内で吸収された後も、メッシュ状に形成されたコラーゲン組織が残るため、リフトアップ効果が比較的長く維持される可能性が期待できます。
- 再下垂の予防: 組織接着の強化は、たるんだ組織を元の位置に維持し、再下垂を防ぐ上で非常に重要な役割を果たします。
- 当院で採用しているメッシュスカフォールド型スレッド
- 当院では、Tess Liftや3D TEXリフトといったメッシュスカフォールド型スレッドを採用しています。これらのスレッドは、強力なリフトアップ効果と持続性を求める患者さんにとって、魅力的な選択肢の一つです。
形成外科専門医として、患者さんの「長期的に効果を維持したい」というご希望に対し、このメッシュスカフォールド型スレッドは非常に有望な選択肢であると実感しています。糸の特性を最大限に活かし、患者さん一人ひとりの肌の状態やたるみの程度に合わせて適切なスレッドを選ぶことが、満足度の高い結果につながると考えています。
失敗を避ける!クリニック・医師選びの重要ポイント5選
顔のたるみやほうれい線、マリオネットラインといったお悩みは、見た目の印象を大きく左右し、自信を失う原因にもなりかねません。メスを使わずに改善が期待できる「糸リフト」は、多くの方が検討される人気の美容医療ですが、「どのクリニックを選べば良いのか」「どんな医師なら安心して任せられるのか」という不安は当然のことです。もし、期待通りの効果が得られなかったら、あるいは不自然な仕上がりになってしまったらと考えると、大きなストレスに感じる方もいらっしゃるでしょう。
形成外科専門医、美容外科専門医(JSAPS)として、患者さんの美しい笑顔と心の満足のために、糸リフトを成功させる上で最も重要となるクリニックや医師選びのポイントを、現場の視点から具体的にお伝えします。この情報が、後悔のない選択につながることを心から願っています。

施術経験と症例数の豊富な医師を選ぶ
糸リフトは、医師の経験と技術力が結果に直結する、非常にデリケートな施術です。患者さんの顔の形やたるみの状態は一人ひとり異なり、理想の仕上がりも千差万別です。経験豊富な医師は、数多くの症例に携わる中で、多様な顔のタイプやたるみの程度に応じた最適なアプローチを熟知しています。
実際に、日本全国の105クリニックで10万件を超える顔面スレッドリフトの症例が分析された大規模な調査があります。この調査では、患者さんの年齢層と使用されるスレッドの種類(20代から30代の比較的若い世代ではポリジオキサノン(PDO)が、40代以上の高齢層ではポリカプロラクトン(PCL)が選ばれる傾向)に関連性があることが報告されています。
このような統計的な傾向だけでなく、以下のような技術的な要素を総合的に判断し、患者さん一人ひとりに最適な施術計画を立てられるのは、豊富な知識と経験を持つ医師ならではの専門性です。
- スレッドの素材と種類
- 吸収性・非吸収性の違い、コラーゲン生成効果など
- スレッドの太さや張力
- 強度の確保と自然な引き上げの両立
- コグ(とげ)の形状と数
- 組織への適切なアンカー力の確保
- 適切な挿入深さ
- 効果と安全性の両立(SMAS層など)
- リフティングベクトル
- 引き上げる方向と角度
経験の少ない医師の場合、画一的な施術になりがちで、患者さんの個性やたるみの状態に合わせた微調整が難しいことがあります。また、施術中に予期せぬ事態が起きた際も、経験豊富な医師であれば冷静かつ適切に対処できるため、より安心して施術を任せることができます。
丁寧なカウンセリングで希望とリスクを共有する
安全で満足度の高い糸リフトを受けるためには、医師との綿密なカウンセリングが不可欠です。カウンセリングは、患者さんの「どんな顔になりたいか」という具体的な希望を医師に伝え、それに対して医師が「どのような効果が期待できるか」「どのようなリスクや限界があるか」を十分に説明する大切な時間です。
顔面には血管や神経が複雑に走行しており、これらを傷つけずに施術を行うには、医師が顔面解剖学を深く理解している必要があります。出血や内出血、神経損傷といった合併症を避けるためには、血管や神経の経路を事前に確認し、細心の注意を払って施術を進めることが極めて重要です。
経験豊富な医師は、これらのリスクを曖昧にせず、具体的な言葉で丁寧に説明します。例えば、「この部分には太い血管が通っているため、内出血のリスクが他の部位より少し高くなります」「表情筋の動きを妨げないよう、糸の挿入位置を慎重に決めます」といったように、患者さんが施術内容と潜在的なリスクを十分に理解し、納得した上で治療を選択できるようサポートします。不安な点や疑問点は、遠慮せずに質問し、医師と希望やリスクを共有することで、安心して施術に臨むことができるでしょう。
顔面解剖学に基づいた最適な挿入位置とリフティングベクトル
糸リフトの成功には、顔面解剖学に基づいた正確な知識と高い技術力が不可欠です。顔のたるみを効果的に持ち上げ、その美しい仕上がりを長持ちさせるためには、糸を挿入する深さや引き上げる方向(リフティングベクトル)、そして糸をしっかりと固定する位置が極めて重要になります。
1. 挿入深さの重要性 スレッドは、皮膚のたるみを効果的に持ち上げ、副作用を最小限に抑えるため、SMAS(浅筋腱膜系)層またはその近傍に挿入することが理想的です。
- SMAS層とは
- 皮膚と表情筋の間にある薄い膜状の組織です。
- 顔のたるみに大きく関わる重要な層であり、糸リフトはこのSMAS層をターゲットとすることで、より効果的なリフトアップが期待できます。
- 深すぎる挿入のリスク
- リフト効果が不十分になることがあります。
- 浅すぎる挿入のリスク
- 糸が皮膚から透けて見えたり、引きつり感が生じたり、違和感が出たりするリスクがあります。
2. リフティングベクトルと固定点 たるんだ組織をただ引き上げるだけでなく、顔の強固な組織にしっかりと固定することが、効果を長持ちさせる秘訣です。
- 固定点の重要性
- 側頭筋膜や頬骨靭帯といった、顔の骨に強固に付着している組織を利用して糸を固定します。
- これにより、引き上げた組織が元の位置に戻りにくくなり、リフトアップ効果が持続しやすくなります。
- 最適なリフティングベクトル
- たるんだ組織を、解剖学的に見て最も自然で効果的な方向へと引き上げます。
- これにより、不自然な引きつり感を避け、顔全体のバランスが整った美しい仕上がりを目指します。
3. 顔面解剖学の包括的な理解 経験豊富な医師は、以下の要素を正確に把握しています。
- 血管構造のナビゲーション
- 出血やあざなどの合併症を避けるために、顔の血管の走行を慎重に把握します。
- 顔面神経の保護
- 神経損傷を防ぎ、顔の自然な表情を保つために、顔面神経の経路を熟知しています。
- 脂肪隔壁の操作
- 加齢に伴う脂肪組織の変化に対処するため、顔の脂肪を区切る膜(脂肪隔壁)の適切な操作を行います。
- 保持靭帯の利用
- 皮膚と骨をつなぎ、組織を元の位置に固定する「保持靭帯(リガメント)」を適切に利用し、組織の歪みなく持続的なリフトを実現します。
当院では、患者さんの顔の状態を詳細に診断し、ブルーローズリフト、Tess Lift、3D TEXリフト、アルテミスリフト、VOVリフト、EPLINなど、多様な糸リフトの選択肢の中から、ほうれい線、たるみ、マリオネットラインといった具体的なお悩みに合わせた最適な治療計画を提案しています。適切な施術により、自然な形で顔の輪郭を整え、表情筋の動きを妨げない美しい仕上がりを目指します。
カウンセリングで確認すべき質問リスト
後悔のない糸リフトを受けるためには、カウンセリング時に積極的に質問し、気になる点を解消することが非常に大切です。疑問を解消せず施術を受けてしまうと、後で「こんなはずじゃなかった」と後悔することにもなりかねません。ここでは、ぜひ確認していただきたい質問をリスト形式でまとめました。
- 医師の経験と専門性について
- 糸リフトの施術経験年数はどれくらいですか。
- これまでに何件くらいの症例を手がけていますか。
- どのような専門資格をお持ちですか(例:形成外科専門医、美容外科専門医など)。
- 定期的に新しい技術や知識を学んでいますか。
- 施術内容と使用する糸について
- 私の顔のたるみには、どの種類の糸リフトが最も適していますか。
- その理由と、期待できる効果を具体的に教えてください。
- 使用する糸の素材、特徴、体内で吸収されるまでの期間はどのくらいですか。
- 何本の糸を使用する予定ですか。また、その本数の根拠を教えてください。
- 施術で期待できる効果の範囲と、施術の限界についても教えてください。
- リスクと安全性について
- 施術にともなう一般的なリスクや副作用(腫れ、内出血、痛み、引きつり感など)について詳しく教えてください。
- 万が一、合併症(感染、神経損傷、糸の露出など)が起きた場合の対処法や、追加費用はどうなりますか。
- アレルギー体質ですが、施術を受ける上で問題はありませんか。事前の検査は必要ですか。
- 費用とアフターケアについて
- 施術にかかる総費用と、その内訳(糸の費用、麻酔代、手技料、アフターケア費用など)を教えてください。
- 支払い方法にはどのような選択肢がありますか。
- 施術後のアフターケアはどのように行いますか。また、費用はかかりますか。
- もし期待する効果が得られなかった場合の修正方針や、その際の追加費用はどうなりますか。
- 効果を長持ちさせるための自宅でのケアや、推奨されるメンテナンス(再施術の目安など)はありますか。
これらの質問を通じて、ご自身が納得できるクリニックと医師を見つけることが、糸リフトの成功への第一歩となります。決して焦らず、ご自身の目で信頼できる場所を見極めることが重要です。
施術前の注意点と準備
糸リフトを安全かつ効果的に行うためには、施術前の準備と注意点を事前に把握しておくことが非常に大切です。クリニックの指示に必ず従い、万全の状態で施術に臨むことで、合併症のリスクを減らし、スムーズな回復へとつながります。
- 服用中の薬の確認
- 現在、持病があり薬を服用している場合は、必ず事前に医師に伝えてください。
- 特に、血液をサラサラにする薬(抗凝固剤、抗血小板剤など)や、一部のサプリメント(ビタミンE、魚油など)は、内出血のリスクを高めることがあります。
- これらの薬やサプリメントは、施術の一定期間前から中止を指示されることがありますので、自己判断で中止せず、必ず医師の指示に従ってください。
- 飲酒・喫煙の制限
- 施術前は、飲酒や喫煙を控えるよう指示されることが一般的です。
- 飲酒は血行を促進し、内出血のリスクを高める可能性があります。
- 喫煙は血管を収縮させ、傷の治りを遅らせる原因となることがあります。
- 体調管理
- 施術当日は、体調を万全に整えておきましょう。
- 風邪をひいている、発熱がある、体調がすぐれないなどの場合は、施術を延期する必要があるかもしれません。
- 無理に施術を受けようとせず、必ずクリニックに相談してください。
- メイク・アクセサリー
- 施術部位に影響が出ないよう、当日はメイクを控え、アクセサリー類も外してご来院ください。
- クリニックによっては、施術前の洗顔や消毒が必要なため、すっぴんで来院するよう指示されることもあります。
- 運転の可否
- 麻酔を使用した場合、施術後に眠気やふらつきが生じ、運転が危険な場合があります。
- 公共交通機関を利用するか、ご家族やご友人に付き添ってもらうなど、事前に交通手段を検討しておきましょう。
これらの注意点を守ることで、安全に施術を受け、術後の回復もスムーズに進めることができます。
糸リフトに関するQ&A
患者さんが抱きやすい疑問について、形成外科専門医の視点からお答えします。
Q1: 糸リフトは痛いですか? A1: 施術中は局所麻酔を使用するため、痛みはほとんど感じません。針を挿入する際のチクッとした感覚や、麻酔液が入る際の軽い圧迫感がある程度です。麻酔が切れた後は、軽い筋肉痛のような痛みや、引きつり感を感じることがありますが、多くの場合、市販の鎮痛剤でコントロールできる程度です。痛みの感じ方には個人差があるため、心配な方は事前に医師に相談してください。
Q2: 糸リフトのダウンタイムはどれくらいですか? A2: ダウンタイムには個人差がありますが、一般的には数日〜1週間程度です。主な症状としては、腫れ、内出血、痛み、引きつり感が挙げられます。
- 腫れ
- 施術直後から数日間がピークで、1週間程度で徐々に引いていきます。
- 内出血
- 針を刺した部位に起こることがありますが、メイクでカバーできる程度のことがほとんどです。1〜2週間程度で自然に吸収されます。
- 引きつり感
- 糸で引き上げられている感覚で、口を開けたり笑ったりする際に感じやすいですが、時間とともに馴染んできます。 大切なイベントを控えている場合は、施術時期を十分に検討しましょう。
Q3: 糸リフトの効果はどのくらい持続しますか? A3: 糸リフトの効果の持続期間は、使用する糸の種類や本数、患者さんの肌の状態、生活習慣によって異なります。吸収性の糸の場合、一般的にPDOスレッドで数ヶ月、PLLAスレッドで約18〜24ヶ月、PCLスレッドで約1年〜1年半程度と言われています。糸が吸収された後も、糸が刺激したコラーゲン生成効果により、ある程度の引き上げ効果や肌質改善効果は継続します。効果を長持ちさせるためには、適切なアフターケアや定期的なメンテナンス、医師との相談が重要です。
Q4: 糸リフトで失敗するケースはありますか? A4: どんな医療行為にもリスクは伴います。糸リフトの「失敗」として挙げられるのは、以下のようなケースです。
- 効果が感じられない、または期待以下
- 医師の経験不足や、患者さんのたるみの状態に合わない糸の選択などが原因となることがあります。
- 不自然な引きつりや左右差
- 糸の挿入位置やリフティングベクトルが適切でない場合に起こりえます。
- 糸が透けて見える、触れる
- 糸が皮膚の浅い層に挿入された場合に起こることがあります。
- 感染や炎症
- 衛生管理が不十分な場合や、術後のケアが適切でない場合に生じる可能性があります。 これらのリスクを避けるためにも、経験豊富で顔面解剖学を熟知した医師が在籍し、丁寧なカウンセリングを行うクリニックを選ぶことが何よりも重要です。
Q5: 施術後、すぐにメイクできますか? A5: 施術直後は、針穴の部位や肌への刺激を避けるため、メイクは控えるよう指示されることが多いです。一般的には、施術から半日〜1日程度経ってから、軽いメイクであれば可能となることが多いですが、クリニックの方針や施術内容によって異なります。傷口が完全に塞がっていない状態でのメイクは感染リスクを高めるため、必ずクリニックの指示に従ってください。
最後に:あなたの理想の美しさを、私たちとともに実現しませんか
顔のたるみやほうれい線、マリオネットラインといったお悩みは、多くの方が抱える共通の課題です。しかし、その原因や状態、そして理想とする姿は、患者さん一人ひとり異なります。私たちは形成外科専門医、美容外科専門医(JSAPS)として、患者さんの内面の美しさまで引き出すことを使命とし、日々研鑽を積んでいます。
当院では、患者さんのお悩みに寄り添い、丁寧なカウンセリングを通じて、その方に最適な治療計画を提案することを最も重視しています。ブルーローズリフト、Tess Lift、3D TEXリフト、アルテミスリフト、VOVリフト、EPLINといった多種多様な吸収性スレッドの中から、最新の知見と顔面解剖学に基づいた専門的な知識を活かし、自然で美しい仕上がりを目指します。
「信頼できる医師に任せたい」「後悔のない糸リフトを受けたい」と願うなら、ぜひ一度当院にご相談ください。あなたの笑顔と自信を取り戻すお手伝いを、心を込めてさせていただきます。
糸リフト施術後のダウンタイムと効果を長持ちさせるケア5選
糸リフトの施術を受けて、理想のフェイスラインを手に入れた後、「どのようなことに気をつけたら良いのだろう」「せっかく施術を受けたのに、すぐに効果がなくなってしまわないか」といった不安を感じる方は少なくありません。形成外科専門医、美容外科専門医(JSAPS)である私たちも、患者さんが安心してダウンタイムを過ごし、そして糸リフトの効果を最大限に享受していただくことが何よりも大切だと考えています。
糸リフトは、単に施術を受けるだけでなく、その後の適切なケアを続けることこそが、美しい仕上がりを長持ちさせるための重要なステップです。ここでは、具体的な過ごし方やアフターケア、そして万が一の対処法について詳しくご説明します。

ダウンタイムの期間と症状(痛み・腫れ・内出血)
糸リフトのダウンタイムは、患者さんそれぞれの体質や施術内容によって異なります。一般的には、主要な症状が落ち着くまでに数日から数週間を要することが多い傾向にあります。施術直後から数日間は、痛み、腫れ、内出血が見られることが一般的です。
- 痛み
- 施術後に、軽い筋肉痛のような鈍い痛みを感じることがあります。
- 多くの場合、数日で和らいでいきますが、痛みの感じ方には個人差があります。
- 処方される鎮痛剤を服用することで、不快な痛みを効果的にコントロールできます。
- 腫れ
- 施術部位には、必ず程度の差はあれ腫れが生じます。
- 腫れのピークは施術後2〜3日目頃であることが多く、その後1週間から10日程度で徐々に引いていくのが一般的な経過です。
- 冷やすことで、血流を抑え、腫れが早く引くのを助けることができます。
- ただし、過度に冷やしすぎると血行不良につながるため、注意が必要です。
- 内出血
- 針を挿入した部位や、糸を通した経路に沿って内出血が生じることがあります。
- 最初は青紫色に見えることがありますが、時間の経過とともに黄色へと変化していきます。
- およそ1〜2週間程度で、ほとんど目立たなくなり自然に消失していきます。
- 多くの場合はファンデーションやコンシーラーで隠せる程度のことがほとんどです。
形成外科専門医は、出血やあざなどの合併症を最小限に抑えるため、顔の血管の解剖を熟知しています。施術時には、細心の注意を払って血管を避ける手技を心がけています。もし、これらの症状が予想以上に長引く場合や、これまで経験したことのないような強い症状が現れた場合は、異常のサインかもしれません。早めにクリニックへご連絡ください。
施術後の注意点と日常生活の過ごし方
施術後のデリケートな時期に不適切な行動をとってしまうと、挿入した糸がずれてしまったり、リフトアップ効果が半減してしまったりする可能性があります。また、合併症のリスクが高まることも考えられます。以下の点に注意して日常生活を過ごし、糸が安定するまでの期間を大切にしましょう。
- 洗顔・メイク・シャワー・入浴
- 施術当日からシャワーは可能ですが、湯船に浸かる入浴は数日間控えてください。
- 熱いお湯や長時間の入浴は血行を促進し、腫れや内出血を悪化させる可能性があるため避けるべきです。
- 洗顔やメイクは、施術部位を強く擦ったり、圧迫したりしないように優しく行うことが大切です。
- 傷口が塞がっていない場合は、メイクは控えるよう指示されることがあります。
- 食事
- 硬い食べ物や、大きく口を開ける動作は、施術部位に負担をかける可能性があります。
- そのため、しばらくの間は柔らかい食事を心がけ、ゆっくりとよく噛むようにしましょう。
- 食事の際に、口角を大きく広げるような動作も避けることが望ましいです。
- 飲酒・喫煙
- 飲酒は血行を促進し、腫れや内出血を悪化させる可能性があるため、少なくとも数日間は控えることが推奨されます。
- 喫煙は血管を収縮させ、血流を悪化させます。傷の回復を遅らせる原因となるため、施術後だけでなく、普段から控えることを強くお勧めします。
- 運動・マッサージ
- 激しい運動や、顔へのマッサージ、エステなどは、挿入した糸が安定するまでの1ヶ月程度は避けてください。
- 糸は、皮膚のたるみを効果的に持ち上げるため、SMAS(浅筋腱膜系)層またはその近傍に挿入されます。
- このデリケートな層に無理な力が加わると、糸がずれたり、効果が損なわれたりする原因となります。
- 自己流のマッサージも、かえってトラブルを引き起こす可能性があるため控えましょう。
- 睡眠時の姿勢
- 施術後1週間程度は、うつ伏せや、顔を圧迫するような寝方は避けてください。
- 糸が固定されるまでは、仰向けで寝るようにしましょう。
- 高めの枕を使用し、頭を少し高くして寝ることで、腫れを軽減できることもあります。
- 歯科治療
- 大きく口を開ける必要がある歯科治療は、挿入した糸が安定するまで1ヶ月程度間隔を空けることが望ましいです。
- やむを得ず歯科治療が必要な場合は、事前に施術を受けたクリニックに相談してください。
効果を最大限に引き出すアフターケアとメンテナンス
糸リフトで得られた効果をできるだけ長く維持するためには、施術後の適切なアフターケアと、状況に応じた定期的なメンテナンスが非常に重要です。私たちのクリニックでは、患者さん一人ひとりの状態に合わせたサポートを心がけています。
- 日常的なスキンケア
- 日常的な保湿と紫外線対策は、肌の健康を保ち、老化の進行を緩やかにするために不可欠です。
- 施術後の敏感な肌には、刺激の少ない成分を選び、優しくケアしましょう。
- 特に紫外線は、コラーゲンやエラスチンを破壊し、肌のたるみを進行させる大きな原因となります。
- 定期的なメンテナンス
- 糸リフトは、使用する糸の種類(例えば、当院で導入しているブルーローズリフト、Tess Lift、3D TEXリフト、アルテミスリフト、VOVリフト、EPLINといった様々なタイプの吸収性スレッド)によって持続期間が異なります。
- これらの吸収性スレッドは、体内で吸収される過程でコラーゲン生成が促され、たるみの改善をサポートする効果も期待できます。
- 特に、ポリ(L-乳酸-co-ε-カプロラクトン) [P(LA/CL)]コポリマーとヒアルロン酸(HA)を組み合わせた先進的なスレッドは、即時的な機械的リフティング効果に加え、真皮(皮膚の奥の層)のリモデリングを刺激する持続的な生体刺激効果を発揮することが分かっています。
- これにより、顔の輪郭補正と肌質の改善を同時に実現することが期待できます。
- 効果を持続させるためには、半年から1年程度を目安とした追加施術や、ハイフ(HIFU)やヒアルロン酸注入といった他のたるみ改善治療との併用も有効な選択肢です。
- 当院では、患者さんの状態とご希望に応じて最適なメンテナンスプランをご提案しています。
- 健康的な生活習慣
- バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動は、全身の健康だけでなく、肌のハリや弾力を保つ上でも非常に重要です。
- 過度なストレスや不規則な生活は、肌の老化を加速させる可能性があります。
- ストレスを管理し、健康的な生活を心がけることが、若々しい印象を維持することにつながります。
- クリニックでの相談
- 糸リフトの効果の持続期間や、肌の状態は患者さんによって個人差があります。
- 定期的にクリニックで相談し、ご自身の状態に合わせた最適なアフターケアやメンテナンスのアドバイスを受けることが、効果を最大限に引き出すことにつながります。
起こりうるリスクと対処法(引きつり、感染など)
糸リフトは比較的低侵襲で安全な施術と考えられていますが、どのような医療行為にも一定のリスクは伴います。形成外科専門医、美容外科専門医(JSAPS)として、私たちはこれらのリスクを最小限に抑えるため、患者さんの状態を正確に評価し、顔面解剖学に基づいた安全な施術を心がけています。万が一、次のような症状が現れた場合は、速やかに施術を受けたクリニックへご連絡ください。
- 引きつり感・凹凸
- 施術直後に、引きつり感や皮膚表面の軽微な凹凸が生じることがありますが、通常は数週間で自然に落ち着きます。
- これは、糸が組織を一時的に引き上げている感覚や、糸の周りの組織が馴染む過程で起こることが多いためです。
- しかし、改善しない場合は、糸の調整が必要になることもあります。
- 感染
- 稀に、施術部位が赤く腫れて熱を持ったり、痛みが強くなったりして感染を起こすことがあります。
- 感染は、衛生的でない環境や、術後のケアが不十分な場合に生じる可能性があります。
- この場合、適切な抗生物質の投与や、状況によっては糸の除去が必要となる場合もあります。
- 神経損傷
- 形成外科専門医は顔面解剖学の深い理解に基づいた慎重な手技を行いますが、非常に稀に神経を刺激し、一時的なしびれや表情の左右差が生じることがあります。
- ほとんどの場合、時間とともに改善しますが、持続する場合は適切な治療を検討します。
- アレルギー反応
- 糸の素材に対してアレルギー反応を起こすことも稀にあります。
- 赤みやかゆみが強く出る場合、抗ヒスタミン剤などで対応します。
- 一般的に、吸収性スレッドは非吸収性スレッドと比較して、知覚異常や糸の露出といった合併症のリスクが低いとされています。
- 糸の露出
- ごく稀に、挿入した糸の先端が皮膚から露出してしまうことがあります。
- これは糸が皮膚の浅い層に挿入された場合などに起こることがあります。
- この場合、簡単な処置で糸の先端を皮膚の下に納めることができますので、自己判断で触らず速やかにご連絡ください。
万が一の失敗に備えた修正方法と費用
「失敗」とは、期待していた効果が得られない、あるいは予期せぬトラブルが生じてしまった状態を指します。もしこのような事態が起こってしまった場合でも、修正方法がありますのでご安心ください。形成外科専門医、美容外科専門医(JSAPS)として、私たちは起こりうるリスクを事前に丁寧に説明し、患者さんの不安を軽減するよう努めています。
- 修正が必要なケース
- 主に、左右差が目立つ、引きつりが強く残る、凹凸が改善しない、感染や炎症が治まらない、あるいは期待したリフトアップ効果がほとんど感じられないなどの場合に修正を検討します。
- 施術後の経過観察期間を終えても症状が改善しない場合も、修正が必要となることがあります。
- 主な修正方法
- 糸の調整・除去
- 引きつりや凹凸の原因となっている糸を部分的に調整したり、場合によっては完全に除去したりすることもあります。
- これは、糸の挿入位置や固定が適切でなかった場合に検討されます。
- 追加施術
- 効果が不十分な場合や、特定の部位のたるみが気になる場合は、改めて糸を追加挿入することもあります。
- また、ヒアルロン酸注入やハイフ(HIFU)など、他のたるみ改善治療を併用することで、より良い結果を目指すことも可能です。
- 経過観察
- 軽微な左右差や引きつりは、時間の経過とともに自然に改善することが多いため、しばらく様子を見ることもあります。
- この場合も、定期的な診察で医師が状態を注意深く観察します。
- 糸の調整・除去
- 修正にかかる費用
- 糸リフトの修正施術は、基本的に保険適用外となります。
- 初回施術から期間が短い場合や、明らかな医師の過失と判断される場合は、無償で対応するクリニックもあります。
- しかし、多くの場合は追加費用が発生することが一般的です。
- 費用は、修正の内容や使用する糸の種類、クリニックによって大きく異なりますので、まずは施術を受けたクリニックに相談し、具体的な修正方法と費用について確認することが重要です。
- 当院では、患者さんが安心して治療を受けられるよう、万が一の事態にも誠実に対応いたします。
糸リフトに関するQ&A
患者さんが抱きやすい疑問について、形成外科専門医の視点からお答えします。
Q1: 糸リフトは痛いですか? A1: 施術中は局所麻酔を使用するため、痛みはほとんど感じません。針を挿入する際のチクッとした感覚や、麻酔液が入る際の軽い圧迫感がある程度です。麻酔が切れた後は、軽い筋肉痛のような痛みや、引きつり感を感じることがありますが、多くの場合、市販の鎮痛剤でコントロールできる程度です。痛みの感じ方には個人差があるため、心配な方は事前に医師に相談してください。
Q2: 糸リフトのダウンタイムはどれくらいですか? A2: ダウンタイムには個人差がありますが、一般的には数日〜1週間程度です。主な症状としては、腫れ、内出血、痛み、引きつり感が挙げられます。
- 腫れ
- 施術直後から数日間がピークで、1週間程度で徐々に引いていきます。
- 内出血
- 針を刺した部位に起こることがありますが、メイクでカバーできる程度のことがほとんどです。1〜2週間程度で自然に吸収されます。
- 引きつり感
- 糸で引き上げられている感覚で、口を開けたり笑ったりする際に感じやすいですが、時間とともに馴染んできます。 大切なイベントを控えている場合は、施術時期を十分に検討しましょう。
Q3: 糸リフトの効果はどのくらい持続しますか? A3: 糸リフトの効果の持続期間は、使用する糸の種類や本数、患者さんの肌の状態、生活習慣によって異なります。吸収性の糸の場合、一般的にPDOスレッドで数ヶ月、PLLAスレッドで約18〜24ヶ月、PCLスレッドで約1年〜1年半程度と言われています。糸が吸収された後も、糸が刺激したコラーゲン生成効果により、ある程度の引き上げ効果や肌質改善効果は継続します。効果を長持ちさせるためには、適切なアフターケアや定期的なメンテナンス、医師との相談が重要です。
Q4: 糸リフトで失敗するケースはありますか? A4: どんな医療行為にもリスクは伴います。糸リフトの「失敗」として挙げられるのは、以下のようなケースです。
- 効果が感じられない、または期待以下
- 医師の経験不足や、患者さんのたるみの状態に合わない糸の選択などが原因となることがあります。
- 不自然な引きつりや左右差
- 糸の挿入位置やリフティングベクトルが適切でない場合に起こりえます。
- 糸が透けて見える、触れる
- 糸が皮膚の浅い層に挿入された場合に起こることがあります。
- 感染や炎症
- 衛生管理が不十分な場合や、術後のケアが適切でない場合に生じる可能性があります。 これらのリスクを避けるためにも、経験豊富で顔面解剖学を熟知した医師が在籍し、丁寧なカウンセリングを行うクリニックを選ぶことが何よりも重要です。
Q5: 施術後、すぐにメイクできますか? A5: 施術直後は、針穴の部位や肌への刺激を避けるため、メイクは控えるよう指示されることが多いです。一般的には、施術から半日〜1日程度経ってから、軽いメイクであれば可能となることが多いですが、クリニックの方針や施術内容によって異なります。傷口が完全に塞がっていない状態でのメイクは感染リスクを高めるため、必ずクリニックの指示に従ってください。
最後に:あなたの理想の美しさを、私たちとともに実現しませんか
顔のたるみやほうれい線、マリオネットラインといったお悩みは、多くの方が抱える共通の課題です。しかし、その原因や状態、そして理想とする姿は、患者さん一人ひとり異なります。私たちは形成外科専門医、美容外科専門医(JSAPS)として、患者さんの内面の美しさまで引き出すことを使命とし、日々研鑽を積んでいます。
当院では、患者さんのお悩みに寄り添い、丁寧なカウンセリングを通じて、その方に最適な治療計画を提案することを最も重視しています。ブルーローズリフト、Tess Lift、3D TEXリフト、アルテミスリフト、VOVリフト、EPLINといった多種多様な吸収性スレッドの中から、最新の知見と顔面解剖学に基づいた専門的な知識を活かし、自然で美しい仕上がりを目指します。
「信頼できる医師に任せたい」「後悔のない糸リフトを受けたい」と願うなら、ぜひ一度当院にご相談ください。あなたの笑顔と自信を取り戻すお手伝いを、心を込めてさせていただきます。
まとめ
糸リフトは、顔のたるみ改善だけでなく、肌質改善も期待できる人気の美容医療です。しかし、「失敗したくない」と不安に感じる方もいらっしゃるでしょう。後悔のない糸リフトを実現するためには、糸の種類や効果といった正しい知識を持ち、ご自身の状態に合った施術を選ぶことが大切です。
そして何よりも、数多くの症例経験があり、顔面解剖学に基づいた専門知識を持つ医師を選ぶことが重要です。丁寧なカウンセリングで希望やリスクをしっかり共有し、最適な挿入位置やリフティングベクトルを提案してくれる医師を見つけましょう。
施術後の適切なケアや、万が一の際の修正方法まで、安心して相談できるクリニック選びが成功の鍵となります。あなたの理想の美しさを実現するために、ぜひ一度当院へご相談ください。
参考文献
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- Hong GW, Kim SB, Park SY, Wan J, Yi KH. Thread Lifting Materials: A Review of Its Difference in Terms of Technical and Mechanical Perspective.
- Hong GW, Hu H, Park SY, Wan J, Yi KH. What Are the Factors That Enable Thread Lifting to Last Longer?
- Hong GW, Kim SB, Park SY, Wan J, Yi KH. Basic concepts in facial and neck thread lifting procedures.
- Hong GW, Kim SB, Park YJ, Park SY, Chan LK, Lee KWA, Sydorchuk O, Wan J, Yi KH. Anatomical Considerations for Thread Lifting Procedure.
- Okumura K, Tamura T, Funakoshi Y, Teranishi H. Five-Year Trends in Facial Thread-Lift Practice: A Nationwide Cross-Sectional Analysis of 106,639 Cases by Age Group and Thread Material.