帯状疱疹について
「ピリピリ、ズキズキ」と神経を締め付けるような痛み。そして体の片側に現れる水ぶくれ。もしかしたらそれは、多くの方が経験する可能性のある「帯状疱疹」かもしれません。
この病気は、体の中に潜む水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化することで発症し、加齢やストレスによる免疫力の低下が引き金となります。特に50歳以上では発症リスクが高まり、顔面神経麻痺や失明といった重篤な合併症につながることも。
さらに、小さいお子さんへの水ぼうそうとしての感染リスクもゼロではありません。この記事では、形成外科専門医の視点から、帯状疱疹の症状、原因、感染経路、そして効果的な予防法までを詳しく解説します。大切なのは、早期に症状に気づき、適切な対処をすること。あなたの健康と未来を守るために、ぜひ最後までお読みください。
帯状疱疹の症状と感染経路、原因の3つのポイント
帯状疱疹は、多くの方が経験する可能性のある身近な病気です。この病気は、体の中に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化することで発症します。痛みや水ぶくれといった皮膚の症状だけでなく、時には生活に大きな影響を及ぼす合併症を引き起こすこともあります。特に、加齢やストレス、病気によって免疫力が低下している方は発症しやすく、小児期から高齢者まで幅広い年齢層に影響を及ぼす疾患です。形成外科専門医である私の視点から、帯状疱疹の主な症状、発症の原因、そして人への感染経路について詳しく解説していきます。早期に症状に気づき、適切な対処をすることが、つらい症状を長引かせないためにも非常に大切です。
ピリピリとした痛みや水ぶくれなど主な症状を解説
帯状疱疹の症状は、体の左右どちらか一方に強い痛みや違和感として現れることが特徴です。この初期症状は、発疹が現れる数日前から始まることが多くあります。多くの場合、チクチク、ピリピリ、ズキズキとした神経痛のような痛みや、焼けるような感覚を伴います。中には、電気が走るような痛みや、神経を締め付けられるような違和感を訴える方もいらっしゃいます。発熱や頭痛、倦怠感といった全身の症状を伴うことも珍しくありません。
痛みが始まってから数日後、同じ部位に赤い斑点が帯状に現れます。その上に小さな水ぶくれがいくつも集まって形成されます。これらの水ぶくれは、体の片側の神経の走行に沿って現れることがほとんどです。例えば、右の胸から背中にかけて症状が出た場合、それが左側に広がることはほとんどありません。これは、ウイルスが神経の走行に沿って症状を出すためです。胸から背中、お腹にできることが多いですが、顔や手足など全身のどの部位にも発生する可能性があります。
発疹は、以下のような経過をたどることが一般的です。
- 赤い斑点(紅斑)
- 痛みのある部位に、虫刺されに似た赤い斑点が出現します。
- 水ぶくれ(水疱)
- 赤い斑点の上に、米粒ほどの大きさの水ぶくれが多数集まってできます。これらは次第に大きくなり、中に体液がたまっていきます。
- 膿疱(のうほう)
- 水ぶくれの中が濁り、膿を持つことがあります。これは細菌感染を合併した場合に多く見られます。
- かさぶた(痂皮)
- 水ぶくれが破れたり、自然に乾いたりして、約7〜10日でかさぶたへと変化します。
かさぶたになってから2~4週間程度で、かさぶたが剥がれ落ちて治癒に向かいます。しかし、発疹が治った後も、色素沈着や傷跡が残る場合があります。形成外科専門医の目から見ても、皮膚に跡が残ることは患者さんの精神的な負担となるため、早期の適切な治療が重要となります。
顔や頭部、目にできた場合の注意点とリスク
帯状疱疹が顔や頭部にできた場合、体の他の部位に比べて特に注意が必要です。これらの部位に帯状疱疹が発症すると、以下のような重篤な合併症のリスクが高まります。見た目の問題だけでなく、機能的な障害につながる可能性もあるため、非常に警戒が必要です。
- 顔面神経麻痺(ラムゼイハント症候群)
- 顔の神経に沿ってウイルスが活動することで、耳の痛み、めまい、耳鳴りといった症状に加えて、顔の半分が動かしにくくなることがあります。
- まぶたが閉じにくい、口角が下がる、水を飲もうとするとこぼれる、といった症状が現れます。
- この状態になると、飲食がしにくくなったり、見た目にも変化が現れるため、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。
- 眼帯状疱疹(がんたいじょうほうしん)
- 目やその周囲に帯状疱疹ができた場合は、眼球自体に影響が及ぶ可能性があるため、特に危険です。
- 角膜炎
- 目の表面にある角膜に炎症が起き、目の痛み、異物感、充血、視界のかすみ、視力低下などを引き起こします。
- 結膜炎
- 白目が赤くなり、目やにが増えます。
- ぶどう膜炎
- 目の奥にあるぶどう膜に炎症が起こり、強い目の痛みや視力低下、光がまぶしく感じるなどの症状が現れます。
- 重症化すると、視力障害や失明につながる可能性もあるため、顔や目の周りに症状が現れた場合は、速やかに専門医(眼科医)の診察を受けることが不可欠です。
顔や頭部は、人目に触れる部位でもあります。そのため、発疹やその後の傷跡、麻痺などが残る可能性は、患者さんの精神的な負担にもつながります。形成外科医の視点からも、早期の適切な治療が、これらのリスクを軽減し、後遺症を最小限に抑えるために極めて重要であると強調させていただきます。
帯状疱疹の原因ウイルスと免疫低下のメカニズム
帯状疱疹の原因となるのは、「水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)」と呼ばれるウイルスです。このウイルスは、子どもの頃にかかる「水ぼうそう(水痘)」の原因ウイルスと同じ種類です。水ぼうそうが治った後も、ウイルスは私たちの体の中から完全に消え去るわけではありません。実は、ウイルスは脳から全身に伸びる頭蓋神経や、背骨の近くにある感覚神経節という場所に潜伏しています。そこでじっと活動を停止して潜伏し続けているのです。
通常、私たちの体は「細胞性免疫」という免疫システムによって、この潜伏しているウイルスの活動を抑え込んでいます。細胞性免疫とは、体内に侵入したウイルスを監視し、増殖を抑え込む役割を持つ免疫細胞の働きのことです。しかし、次のような状況で免疫力が低下すると、潜んでいたウイルスが再び活発に活動を開始し、神経に沿って皮膚へと移動し始めます。水痘帯状疱疹ウイルスが感覚神経根神経節で再活性化し、神経経路に沿って皮膚、角膜、外耳道などの支配下の標的組織へと広がっていくことで発症するのです。
- 加齢
- 特に50歳を過ぎると、体の免疫力は自然と低下していく傾向があります。多くの研究でも、高齢者で帯状疱疹の発生率が高いことが示されています。水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫が、加齢により低下することが主な原因です。
- 過労やストレス
- 精神的なプレッシャーや睡眠不足、身体的な過労など、強いストレスは免疫システムに悪影響を与えます。ウイルスの再活性化を促す要因となり得ます。
- 病気
- がん、糖尿病、膠原病、自己免疫疾患などの慢性疾患や、感染症などによって免疫力が低下している場合も、帯状疱疹のリスクが高まります。
- 免疫抑制剤の使用
- 臓器移植後や自己免疫疾患の治療などで免疫抑制剤を服用している方は、免疫機能が抑制されるため、ウイルスの再活性化が起こりやすくなります。
- 外傷や手術
- 身体的な大きな負担も、一時的に免疫力を低下させる要因となることがあります。
ウイルスが神経に沿って移動する過程で、神経に炎症を起こすため、特徴的なピリピリとした痛みや、赤い斑点、水ぶくれといった帯状疱疹の症状が引き起こされるのです。免疫力の低下が帯状疱疹の発症に大きく関わっていることを理解し、日頃から免疫力を維持する生活を心がけることが大切です。
帯状疱疹は人にうつる?感染経路と予防法
帯状疱疹そのものは、直接的に人から人へうつる病気ではありません。帯状疱疹は、すでに水ぼうそうにかかった人の体内に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが、免疫力の低下をきっかけに再活性化して発症する病気だからです。
しかし、帯状疱疹の患者さんの皮膚にできる水ぶくれの中には、まだ活動性の高い「水痘・帯状疱疹ウイルス」が大量に含まれています。この水ぶくれが破れて飛び散ったウイルスに、水ぼうそうにかかったことがない人や、水ぼうそうの予防接種を受けていない人が接触した場合、「水ぼうそう」を発症する可能性があります。水ぶくれが破れて飛び散ったウイルスに触れたり、空気中に漂うウイルスを吸い込んだりすることで、感染するリスクがあるのです。
特に注意すべきは、水ぼうそうにかかると重症化しやすい以下のような方々です。
- 乳幼児
- 水ぼうそうの予防接種を受けていない乳幼児は、ウイルスに感染すると水ぼうそうを発症します。高熱や、肺炎、脳炎といった重い合併症を引き起こすリスクがあります。
- 妊婦
- 妊娠中に水ぼうそうにかかると、おなかの赤ちゃんに影響を与える可能性(先天性水痘症候群など)があるため、特に注意が必要です。
- 免疫不全者
- がん治療中の方、免疫抑制剤を服用している方、HIV感染者など、免疫力が著しく低下している方は、水ぼうそうにかかると肺炎や脳炎といった重篤な合併症を起こしやすくなります。場合によっては命に関わることもあります。
このような方々への感染を防ぐため、帯状疱疹の患者さんは以下の予防策を徹底しましょう。
- 水ぶくれに直接触れないよう注意し、ガーゼなどで患部を覆いましょう。
- 水ぶくれが治り、かさぶたになるまでは、できるだけ感染しやすい人との接触を避けましょう。
- 手洗いをこまめに行い、特に患部を触った後は必ず石鹸で手を洗いましょう。
- タオルや食器など、日常生活で使うものの共有は避けるのが望ましいです。
他の皮膚病との見分け方:水疱瘡や湿疹との違い
帯状疱疹の初期症状は、他の皮膚病と見間違えやすいことがあります。特に、水ぼうそう、湿疹、虫刺されとの区別が重要です。経験豊富な医師でも、初期段階や非定型的な症状のケースでは、他の皮膚疾患と見分けるのが難しいこともあります。ご自身の症状がどのようなものか、それぞれの違いを理解して、適切な対処につなげましょう。
1. 帯状疱疹と水ぼうそう(水痘)の違い
- 原因と発症の仕方
- 帯状疱疹
- 過去に水ぼうそうにかかった人が、体内に潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化して発症します。
- 水ぼうそう
- 初めて水痘・帯状疱疹ウイルスに感染することで発症します。
- 帯状疱疹
- 発疹の広がり
- 帯状疱疹
- 体の片側に、神経の走行に沿って帯状に発疹(水ぶくれ)が現れます。
- 水ぼうそう
- 全身に水ぶくれが散らばるように広がり、赤い斑点、水ぶくれ、かさぶたといった異なる段階の発疹が同時に見られるのが特徴です。
- 帯状疱疹
- 痛み
- 帯状疱疹
- 発疹よりも先に強い神経痛のような痛みを伴うことがほとんどです。
- 水ぼうそう
- かゆみが主な症状で、通常、痛みはあまりありません。
- 帯状疱疹
2. 帯状疱疹と湿疹・虫刺されの違い
- 痛みやかゆみ
- 帯状疱疹
- 特徴的なのは、発疹が現れる前から、あるいは同時に、ピリピリ、ズキズキとした強い痛みを伴うことです。かゆみは比較的少ないです。
- 湿疹・虫刺され
- 主にかゆみが強く、痛みはほとんど伴わないか、あっても軽いことが一般的です。
- 帯状疱疹
- 発疹の形状と分布
- 帯状疱疹
- 体の片側に、神経に沿って帯状に、ブツブツとした赤い斑点と水ぶくれが連なります。
- 湿疹
- 特定の神経に沿わず、かゆみを伴う赤いブツブツや小さな水ぶくれが不規則に広がります。
- 虫刺され
- 蚊やダニなどに刺された跡にできる、一つまたは複数の赤い盛り上がりです。中心に刺し口が見られることもあります。
- 帯状疱疹
- 全身症状
- 帯状疱疹
- 発熱や倦怠感などの全身症状を伴うことがあります。
- 湿疹・虫刺され
- 通常、発熱などの全身症状はありません。
- 帯状疱疹
これらの情報から、ご自身の症状が帯状疱疹に当てはまるかもしれないと感じたら、自己判断せずに、速やかに皮膚科などの医療機関を受診してください。特に、ピリピリとした痛みがあり、その後に赤い斑点や水ぶくれが帯状に現れた場合は、早期の受診が重要です。当院は形成外科専門医が在籍し、保険診療で皮膚科診療も行っております。土日も午前9時から午後6時まで診療しておりますので、気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
帯状疱疹に関するQ&A
Q1:帯状疱疹は一度かかると二度とかからないのですか?
A1:いいえ、残念ながら帯状疱疹は一度かかっても再発する可能性があります。特に、加齢やストレス、病気などで免疫力が低下した際に、体内に潜伏していたウイルスが再び活発になることで再発することがあります。
Q2:帯状疱疹の痛みはいつまで続きますか?
A2:急性期の痛みは、通常、発疹が治るにつれて徐々に軽減していきます。しかし、一部の方では発疹が治った後も痛みが3ヶ月以上続くことがあります。これは「帯状疱疹後神経痛(PHN)」と呼ばれ、慢性的な痛みとなる場合があります。早期治療が、このPHNのリスクを減らすことにつながります。
Q3:治療せずに放っておくとどうなりますか?
A3:帯状疱疹を放置すると、痛みが長引く「帯状疱疹後神経痛」のリスクが高まります。また、顔や目にできた場合は、顔面神経麻痺や視力障害、最悪の場合失明に至るなど、重篤な合併症を引き起こす可能性もあります。皮膚に跡が残る可能性も高まるため、症状に気づいたら早めに医療機関を受診することが非常に重要です。
帯状疱疹の診断・治療と合併症を防ぐ3つの対策
帯状疱疹は、一度発症すると非常に強い痛みや特徴的な発疹に悩まされる病気です。この病気の治療において、私たちが目指す大きな目標は以下の3点です。
- 症状を早く改善させること
- 帯状疱疹後神経痛(PHN)という長引く痛みを防ぐこと
- 脳炎や眼症状、運動麻痺などの重篤な合併症を起こさないこと
そのためには、症状に気づいたらできるだけ早く正確な診断を受け、適切な治療を開始することが何よりも重要です。
帯状疱疹と診断されたら?早期発見と受診の目安
帯状疱疹の診断は、多くの場合、患者さんの訴える症状と皮膚の見た目の特徴的な経過から行われます。ピリピリとした痛みや違和感が先に現れ、その後に赤い発疹や水ぶくれが体の片側に帯状に広がる典型的な症状があれば、医師の診察で診断が可能です。**
帯状疱疹の予防と再発防止!2種類のワクチンと費用
帯状疱疹は、痛みや発疹といった辛い症状だけでなく、後遺症として長く痛みが続く帯状疱疹後神経痛(PHN)に悩まされることもある病気です。この厄介な病気から身を守り、快適な毎日を送るためには、事前の予防が非常に大切です。特に、ワクチン接種は帯状疱疹の発症を効果的に防ぎ、もし発症しても重症化を抑えるための有力な手段となります。
形成外科専門医である私の視点からも、皮膚に跡を残さないためにも、早期の予防と適切な治療の重要性を強く感じています。ここでは、帯状疱疹の予防と再発防止に役立つ情報について、詳しくお伝えします。
帯状疱疹ワクチンは2種類!生ワクチンと不活化ワクチンの違い
帯状疱疹の予防に用いられるワクチンには、現在、大きく分けて「生ワクチン」と「不活化ワクチン」の2種類があります。それぞれのワクチンには特徴があり、患者さんの健康状態や希望に応じて選択することが大切です。どちらのワクチンがご自身に適しているか、医師と一緒に考えることをおすすめします。
生ワクチン(水痘ワクチン)
- 特徴
- 弱毒化された水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)を体内に取り込むことで、免疫を作るワクチンです。
- 子どもの頃にかかる水ぼうそう(水痘)の予防に使われるワクチンと同じ種類です。
- 日本では2016年3月から帯状疱疹予防に承認されています。(渡辺 大輔「特集 ウイルス感染症ワクチンの最前線 帯状疱疹ワクチン」より)
- 効果
- 帯状疱疹の発症頻度を約51%減少させる効果が確認されています。
- 帯状疱疹後神経痛(PHN)の発症も約66%減少させる効果が示されています。
- これは「渡辺 大輔「特集 ウイルス感染症ワクチンの最前線 帯状疱疹ワクチン」」で報告されています。
- 接種回数
- 基本的に1回の接種で完了します。
- 注意点
- 生きたウイルスを使用しているため、免疫機能が低下している方には接種できません。
- 例えば、免疫不全の方や免疫抑制剤を使用している方、妊婦の方などは対象外となります。
不活化ワクチン(サブユニットワクチン:シングリックス®)
- 特徴
- ウイルスの一部(糖タンパクE)のみを用いて作られたワクチンで、感染する力はありません。
- アジュバントという免疫を刺激する成分が加えられているため、高い免疫応答を引き出します。
- 「渡辺 大輔「特集 ウイルス感染症ワクチンの最前線 帯状疱疹ワクチン」」でもその特性が述べられています。
- 効果
- 50歳以上の健康な方において帯状疱疹の発症を97.2%阻止すると報告されています。
- 70歳以上の方でも91.3%と、極めて高い予防効果が確認されています。
- PHNに対しても高い有効性が報告されており、発症リスクを大幅に減らすことが期待できます。
- これらのデータは、「渡辺 大輔「特集 ウイルス感染症ワクチンの最前線 帯状疱疹ワクチン」」に記載されています。
- 接種回数
- 2回の接種が必要です。
- 注意点
- 生ワクチンを接種できない方でも、不活化ワクチンは接種できる場合が多いです。
- どのような場合に接種できるか、必ず医師にご相談ください。
当院では、患者さんの健康状態や生活背景、ご希望を丁寧に伺いながら、どちらのワクチンが適しているかを一緒に考え、最適なワクチン選択をサポートしています。
帯状疱疹ワクチンの高い予防効果と気になる副反応
帯状疱疹ワクチンは、その高い予防効果で注目されていますが、接種に際しては副反応についても知っておくことが大切です。ワクチン接種は、帯状疱疹とその合併症であるPHNの発症を予防する上で非常に有効な手段であると「帯状疱疹診療ガイドライン 2025」でも強く推奨されています。
予防効果について
- 帯状疱疹の発症予防
- 特に不活化ワクチンは、50歳以上の方で90%を超える発症予防効果が報告されており、その有効性は非常に高いです。
- 生ワクチンも約50%の発症予防効果が期待できます。
- 重症化の予防
- もしワクチンを接種した後に帯状疱疹を発症してしまっても、症状が軽く済むことが期待されます。
- 発疹の範囲が狭まったり、痛みが和らいだりする効果も報告されています。
- 帯状疱疹後神経痛(PHN)の予防
- PHNは、帯状疱疹の最も頻度の高い合併症で、神経の痛みが数ヶ月から数年にわたって続くことがあります。
- 「渡辺 大輔「特集 ウイルス感染症ワクチンの最前線 帯状疱疹ワクチン」」でも、PHNなどの合併症は患者のQOLを著しく低下させると指摘されています。
- ワクチン接種は、このPHNの発症リスクを大幅に減らすことが分かっています。
- 不活化ワクチンはPHNの予防効果も90%以上と報告されており、その効果は非常に顕著です。
- 「Elsam Koshy et al.」のレビューでも、60歳以上のワクチン接種がPHNの発生率を大幅に減少させると指摘されています。
副反応について
ワクチン接種後には、以下のような副反応が起こることがありますが、ほとんどは一時的なものです。
- 接種部位の症状
- 痛み、赤み、腫れなどがよく見られます。
- これは体内で免疫が作られている証拠であり、通常は数日で治まります。
- 不活化ワクチンの方が、生ワクチンに比べて接種部位の症状が出やすい傾向があります。
- 全身症状
- 倦怠感、頭痛、発熱、筋肉痛などが起こることもあります。
- 重い副反応
- ごく稀にアレルギー反応(アナフィラキシー)などの重い副反応が起こる可能性もゼロではありません。
- しかし、医療機関では万が一の場合に備えて迅速に対応できる体制が整っています。
副反応について不安な点があれば、遠慮なく医師にご相談ください。形成外科専門医として、患者さんの安全を第一に考え、丁寧な説明を心がけています。
帯状疱疹ワクチンの費用・回数・接種対象年齢を解説
帯状疱疹ワクチンの接種を検討する上で、費用や接種回数、そしてご自身の年齢で接種できるのかは気になる点です。
費用
帯状疱疹ワクチンは、原則として保険適用外の「任意接種」となるため、全額自己負担となります。ワクチンの種類によって費用が異なります。
- 生ワクチン
- 1回接種で、費用はクリニックによって異なりますが、およそ5,000円から1万円程度です。
- 不活化ワクチン
- 2回接種で、1回あたり2万円から3万円程度となることが多く、合計で4万円から6万円程度かかります。
一部の自治体では、帯状疱疹ワクチン接種費用に対する助成制度を設けている場合があります。お住まいの地域の自治体のホームページなどで、助成制度の有無や内容をご確認ください。
接種回数と間隔
- 生ワクチン
- 1回接種で完了です。
- 不活化ワクチン
- 2回の接種が必要です。
- 通常、1回目の接種から2ヶ月後に2回目の接種を行います。
- ただし、遅くとも6ヶ月後までに2回目の接種を終えることが推奨されています。
接種対象年齢
- 生ワクチン
- 50歳以上の方が対象です。
- 不活化ワクチン
- 50歳以上の方が対象ですが、「帯状疱疹診療ガイドライン 2025」によると、2023年6月からは接種対象が拡大されました。
- 18歳以上の帯状疱疹発症リスクが高い方、例えば免疫不全者や免疫抑制剤を使用中の方なども接種対象に含まれます。
ご自身の健康状態や年齢、費用に関するご希望などを考慮し、最適なワクチン接種プランを一緒に検討させていただきます。
帯状疱疹の再発を防ぐ!免疫力アップの生活習慣
帯状疱疹は、一度かかっても再発する可能性がある病気です。ウイルスの再活性化には、加齢による免疫力の低下や、ストレス、疲労、病気などが大きく関わっています。これは「渡辺 大輔「特集 ウイルス感染症ワクチンの最前線 帯状疱疹ワクチン」」でも、加齢に伴うVZV特異的細胞性免疫の低下が主な原因であり、悪性腫瘍や自己免疫疾患も発症リスクを高めると説明されています。また、「Elsam Koshy et al.」のレビューでも、年齢や免疫状態がリスク因子と合併症に影響すると指摘されています。そのため、ワクチン接種だけでなく、日頃からの免疫力アップが再発防止には欠かせません。
免疫力アップのための生活習慣のポイント
- バランスの取れた食事
- タンパク質、ビタミン、ミネラルを豊富に含む食品を積極的に摂りましょう。
- 特に、ビタミンCやビタミンD、亜鉛などは免疫機能に関わるとされています。
- 腸内環境を整える発酵食品(ヨーグルト、納豆など)もおすすめです。
- 質の良い睡眠
- 毎日7~8時間を目安に十分な睡眠時間を確保しましょう。
- 寝る前のスマートフォンやパソコンの使用を控えるなど、質の良い睡眠を心がけてください。
- 寝室の環境を整えることも大切です。
- 適度な運動
- ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなど、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけましょう。
- 血行促進やストレス解消にもつながります。
- ストレス管理
- ストレスは免疫力を低下させる大きな要因です。
- 趣味の時間を持つ、リラックスできる方法を見つけるなど、ご自身に合ったストレス解消法を見つけましょう。
- 入浴やアロマセラピー、瞑想なども効果的です。
- 時には、仕事や人間関係の負担を軽減することも重要です。
- 体を冷やさない
- 体温が下がると免疫力も低下しやすいと言われています。
- 温かい服装を心がけ、冷たいものの摂りすぎにも注意しましょう。
これらの生活習慣を意識することで、体本来の免疫力を高め、帯状疱疹の再発リスクを低減することができます。形成外科医としても、患者さんの全身の健康状態が、皮膚の健康、ひいては美容にも大きく影響すると考えています。
帯状疱疹ワクチンを接種できる医療機関と探し方
帯状疱疹ワクチンの接種を希望される場合、どこで接種できるのか、どうやって医療機関を探せば良いのか迷う方もいらっしゃるでしょう。
接種できる医療機関
- 内科、皮膚科
- 多くの一般内科や皮膚科クリニックで帯状疱疹ワクチンの接種を行っています。
- 当院も保険診療で皮膚科診療を行っており、帯状疱疹ワクチン接種に対応しています。
- 形成外科
- 当院のような形成外科でも、帯状疱疹による皮膚症状や帯状疱疹後神経痛の治療後のケア、そして予防としてのワクチン接種のご相談も承っています。
- その他の専門科
- 予防接種を行っている病院の予防接種外来などで接種できる場合もあります。
医療機関の探し方
- かかりつけ医への相談
- まずは普段から受診しているかかりつけ医に相談してみるのが良いでしょう。
- ご自身の健康状態をよく理解している医師から、適切なアドバイスを受けることができます。
- インターネット検索
- 「帯状疱疹ワクチン 〇〇市(お住まいの地域)」などのキーワードで検索すると、お近くの接種可能な医療機関が見つかります。
- 自治体の情報
- お住まいの市区町村のホームページに、助成制度の情報とともに、接種協力医療機関のリストが掲載されていることがあります。
- クリニックのホームページを確認
- 接種を行っている医療機関のホームページには、ワクチンの種類、費用、予約方法などの詳細が記載されています。
当院では、形成外科専門医として、帯状疱疹の痛みや後遺症に対する深い理解をもって、ワクチン接種のご相談に応じています。形成外科的な視点から、帯状疱疹による皮膚の変化や傷跡についてもご相談いただけます。当院は保険診療で皮膚科診療も行っており、土日も午前9時から午後6時まで診療していますので、平日お忙しい方もどうぞお気軽にご来院ください。
帯状疱疹に関するQ&A
Q1:帯状疱疹ワクチンは、水痘(水ぼうそう)にかかったことがあっても接種できますか? A1: はい、接種できます。 帯状疱疹は、過去に水痘(水ぼうそう)にかかった方が、体内に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化して発症する病気です。 水痘にかかった経験がある方は、すでにウイルスが体内に潜んでいるため、ワクチンを接種して免疫力を高めることで、帯状疱疹の発症を予防したり、重症化を防いだりすることができます。
Q2:帯状疱疹ワクチンは、何歳から接種できますか? A2: 生ワクチンと不活化ワクチンで対象年齢が異なります。
- 生ワクチン
- 50歳以上の方が対象です。
- 不活化ワクチン
- 50歳以上の方が対象ですが、2023年6月からは18歳以上の帯状疱疹発症リスクが高い方も接種対象に拡大されました。
- 例えば、免疫不全の方や免疫抑制剤を使用中の方などです。
- ご自身の状況で接種が可能か、医師にご相談ください。
Q3:妊娠を希望していますが、帯状疱疹ワクチンを接種できますか? A3: 生ワクチンは妊婦の方や妊娠を希望している方には接種できません。 接種後は一定期間の避妊が必要です。 不活化ワクチンは、生ワクチンを接種できない方でも接種できる場合があります。 ただし、妊娠中の方や妊娠を希望されている方は、必ず医師にご相談ください。 当院では、患者さんの状況を丁寧に確認し、安全な接種時期や方法についてアドバイスさせていただきます。
Q4:帯状疱疹の予防接種は、一度受ければ一生効果が続きますか? A4: ワクチンの種類によって効果の持続期間に違いがあります。 生ワクチンは比較的短期間(約5年程度)で効果が薄れる可能性があります。 一方、不活化ワクチンは10年以上の効果持続が期待されています。 しかし、完全に一生涯効果が続くものではありません。 定期的な健康チェックや、気になる症状があれば早めに医療機関を受診することが大切です。
Q5:帯状疱疹ワクチンを接種すれば、帯状疱疹後神経痛(PHN)には絶対になりませんか? A5: ワクチン接種は、帯状疱疹後神経痛(PHN)の発症リスクを大幅に減少させます。 しかし、「絶対にならない」と断言することはできません。 特に不活化ワクチンはPHNの予防効果が非常に高いと報告されていますが、ごく稀に発症してしまうケースもあります。 しかし、ワクチンを接種していれば、PHNになったとしても症状が軽度で済む可能性が高まります。 「渡辺 大輔「特集 ウイルス感染症ワクチンの最前線 帯状疱疹ワクチン」」でもPHNの予防効果が高いことが示されています。
Q6:帯状疱疹にかかった後でも、ワクチンを接種した方が良いですか? A6: はい、帯状疱疹にかかったことがある方でもワクチン接種は推奨されています。 帯状疱疹は再発する可能性があるため、ワクチンを接種することで再発のリスクを減らすことができます。 ただし、帯状疱疹の症状が完全に治まってから、一定期間(通常は数ヶ月)を置いて接種することが推奨されます。 接種時期については医師にご相談ください。
まとめ
今回は、多くの方が経験する可能性のある身近な病気、帯状疱疹について詳しく解説しました。この病気は、体内に潜むウイルスが免疫力の低下によって再活性化することで発症し、ピリピリとした強い痛みや帯状の水ぶくれが特徴です。特に顔や目に症状が出た場合は、顔面神経麻痺や視力障害など、重い合併症のリスクがあるため、早期の受診が非常に大切です。
つらい痛みを長引かせず、後遺症を防ぐためには、症状に気づいたらすぐに医療機関を受診しましょう。予防策として、高い効果が期待できるワクチン接種や、免疫力を高める生活習慣も有効です。当院では、形成外科専門医として帯状疱疹の治療や予防に関するご相談を承っております。気になる症状や予防についてご不安な点がございましたら、土日も診療しておりますので、どうぞお気軽にご来院くださいね。
最後までお読みいただきありがとうございます。
症状や治療について「これって相談していいのかな?」と迷われている方も、どうぞお気軽にご来院ください。
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参考文献
- Dayan RR, Peleg R, et al. Herpes zoster – typical and atypical presentations.
- Koshy E, Mengting L, Kumar H, Jianbo W, Koshy E, et al. Epidemiology, treatment and prevention of herpes zoster: A comprehensive review.
- Sampathkumar P, Drage LA, Martin DP, Homler H. Herpes zoster (shingles) and postherpetic neuralgia – PubMed.
- 帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛に対するペインクリニック指針.
- 渡辺大輔. 特集 ウイルス感染症ワクチンの最前線 帯状疱疹ワクチン.
- 帯状疱疹診療ガイドライン 2025.