名古屋市「新瑞橋」美容外科・美容皮膚科・形成外科・一般皮膚科

ブログ
Blog

背中ニキビが治らないのはマラセチア毛包炎かも

背中や胸にできるしつこいブツブツ、一般的なニキビケアを試してもなかなか改善せず、「どうして治らないんだろう」と悩んでいませんか?

実はそのブツブツ、ニキビではなく「マラセチア毛包炎」かもしれません。この病気は見た目がニキビと非常に似ていますが、原因菌はカビの一種であるマラセチア菌であり、一般的なニキビ薬では効果が期待できません。不適切な治療を続けると、症状が悪化したり長引いたりする可能性があります。

マラセチア毛包炎は世界的にも1%から17%と決して珍しい病気ではありません。この記事では、マラセチア毛包炎の真の原因と、皮膚科医の視点から見た正しい診断・治療法、さらに再発を防ぐための予防策まで詳しく解説します。あなたの長年の悩みが解決するヒントがきっと見つかるでしょう。

背中ニキビと違う?マラセチア毛包炎の3つの特徴

背中のブツブツが長引き、なかなか治らずに悩んでいませんか。市販薬や一般的なニキビの治療を試しても、期待する改善が見られない場合、それは「ニキビ」ではないかもしれません。皮膚科医として多くの患者さんを診る中で、このようなケースの多くが「マラセチア毛包炎」であると診断されます。

マラセチア毛包炎は、一般的なニキビと見た目が非常に似ているため、見過ごされやすい皮膚の病気です。しかし、原因も治療法も全く異なるため、不適切な治療を続けると症状が悪化したり、治癒が長引いたりする可能性があります。ここでは、マラセチア毛包炎の重要な特徴を、専門医の視点から詳しく解説していきます。ご自身の症状と照らし合わせながら、ぜひ読み進めてみてください。

マラセチア毛包炎とは?一般的なニキビとの違い

マラセチア毛包炎は、毛穴の奥で「マラセチア酵母」という真菌(カビの一種)が異常に増殖することで発生する皮膚の病気です。この病気は、尋常性ざ瘡、いわゆる「ニキビ」と見た目が非常によく似ています。そのため、多くの患者さんが通常のニキビ治療を受けてしまいがちです。

しかし、原因となる菌が異なるため、ニキビに効果的な抗菌薬(抗生物質)はマラセチア毛包炎にはほとんど効果が期待できません。結果として、治療が長引き、何年も症状が改善しないケースも少なくありません。世界的にもマラセチア毛包炎の有病率は1%から17%と幅広く報告されており、決して稀な疾患ではありません。日本の特定の地域での調査でも、比較的高い頻度で認められることが報告されています。

一般的なニキビとマラセチア毛包炎の違いを、下の表で確認してみましょう。

項目マラセチア毛包炎尋常性ざ瘡(一般的なニキビ)
原因菌マラセチア酵母(真菌)アクネ菌(細菌)
症状の特徴– 同じような大きさや見た目のぶつぶつ(単一形態性)
– かゆみを伴うことが多い
– 膿をもつものも少ない
– 様々な大きさの赤み、ぶつぶつ、膿の塊、黒い点など(多様形態性)
– かゆみは少ないが、炎症が強いと痛みがある
– 面皰(コメド)を伴うことが多い
主な発症部位胸、背中、上腕(二の腕)、首、顔顔、胸、背中
有効な薬抗真菌薬(外用薬、内服薬)抗菌薬、ディフェリンゲルなどの外用薬、ビタミン剤など(内服薬)

難治性のざ瘡様の発疹が続く場合、マラセチア毛包炎の可能性を強く疑うことが極めて重要です。抗菌薬治療で効果が見られない、あるいは症状が再発を繰り返す場合は、真菌性の病原体を考慮する必要があります。このため、皮膚科での専門的な検査を受けることが症状改善への第一歩となります。

背中・胸・腕に多いマラセチア毛包炎の症状

マラセチア毛包炎は、主に体の中心に近い、皮脂腺の多い部位に現れます。具体的には、上背部や前胸部、そして上腕(二の腕)などによく見られる疾患です。これらの部位に、直径2〜6ミリメートルほどの比較的小さな、赤みを帯びたぶつぶつ(紅色の丘疹)や、先端に膿を持ったぶつぶつ(膿疱)が多発するのが特徴です。

症状には以下のような具体的な特徴があります。

  • 単一形態性
    • ぶつぶつ一つ一つが、ほぼ同じような大きさや形をしていることが多いです。
    • 一般的なニキビのように、炎症の度合いが異なる多様な大きさの皮疹が混在することは比較的少ない傾向があります。
    • これは、マラセチア毛包炎が特定の原因菌の増殖によって引き起こされるためです。
  • かゆみ
    • 多くの患者さんで、かゆみを強く訴えられます。
    • 特に汗をかいた後や入浴後に症状が強くなることが特徴です。
    • かゆみによって患部を掻いてしまい、さらに悪化させる「掻破(そうは)」という悪循環に陥ることもあります。
  • 多発性
    • 一部に点在するのではなく、広範囲にわたって数多くのぶつぶつが同時に現れることが少なくありません。
    • 病変部を詳細に観察すると、毛穴の開口部に一致して発疹があることがわかります。
  • 発症時期と悪化要因
    • 特に春から夏にかけて、発汗量が増える時期に症状が悪化する傾向があります。
    • 高温多湿な環境が、マラセチア菌の増殖に適しているためです。

これらの症状は、特に汗をかきやすい環境や、蒸れやすい衣服を着用することで悪化することが知られています。見た目の問題だけでなく、かゆみや違和感で日常生活に支障をきたす場合もあります。ご自身の症状に心当たりがある場合は、早めに皮膚科医にご相談ください。

原因は皮膚の常在菌マラセチアの異常増殖

マラセチア毛包炎の原因は、私たちの皮膚に普段から存在している「マラセチア菌」という酵母の一種です。マラセチア菌は、誰もが持っている「皮膚常在菌」の一つであり、通常は皮膚の上で悪さをすることはありません。しかし、何らかのきっかけでこの菌が異常に増えすぎてしまうと、毛穴の中で炎症を起こし、マラセチア毛包炎を発症します。

マラセチア菌にはMalassezia furfur(マラセチア・フルフル)などいくつかの種類があり、これらが皮脂を栄養源として増殖します。皮膚科医が病変部を詳しく観察する「ダーモスコピー」や、採取した皮膚片を顕微鏡で調べる「苛性カリ(KOH)直接鏡検」などでは、この酵母様菌形態のマラセチア菌が確認されることがあります。稀に、病理組織学的な検査で、毛包とその周囲に炎症細胞の浸潤が見られるだけでなく、肉芽腫(にくがしゅ)という特殊な炎症の塊を形成しているケースも報告されています。

マラセチア菌の異常増殖を促す主な要因としては、以下のような具体的な状況が挙げられます。

  • 高温多湿な環境
    • マラセチア菌は皮脂を栄養源として、高温多湿な環境で繁殖しやすいため、夏場や、スポーツなどで発汗した状態が長く続くと増えやすくなります。
    • 特に、通気性の悪い衣服を着用することもリスクを高める要因となります。
    • 海水浴などで肌が湿った状態が長く続くことも、マラセチア菌の増殖を助ける可能性があります。
  • 皮脂の過剰分泌
    • 思春期やホルモンバランスの乱れなどで皮脂の分泌量が増えると、マラセチア菌の栄養源が豊富になり、増殖を助けてしまいます。
    • 脂性肌の方は特に注意が必要です。
  • 免疫力の低下
    • 病気やストレス、疲労などで体の免疫力が低下すると、常在菌であるマラセチア菌の活動を抑える力が弱まります。
    • 結果として、マラセチア菌が増殖しやすくなります。
  • 薬剤の影響
    • ステロイド外用剤の長期的な使用や、抗菌薬(抗生物質)の内服が、皮膚の常在菌のバランスを崩すことがあります。
    • 特にニキビ治療のために使用していた抗菌薬が、かえってマラセチア菌の増殖を促進し、マラセチア毛包炎を悪化させるケースも報告されています。
    • このような場合は、原因菌に合わない治療薬が症状を長引かせている可能性があります。
  • 基礎疾患
    • 白血病や全身性エリテマトーデス(SLE)などの全身性の病気で免疫が抑制されている場合も、発症リスクが高まると考えられています。
    • 糖尿病患者さんなどでも皮膚の免疫機能が低下しやすく、マラセチア毛包炎を発症しやすい傾向があります。

ご自身の生活習慣や体質で思い当たる点があれば、それを改善することが症状の悪化を防ぐことにもつながります。しかし、自己判断でニキビ治療薬を使い続けるのではなく、症状に合わせた適切な治療を受けることが何よりも重要です。専門的な診断が必要となるため、気になる症状があれば、ぜひ皮膚科を受診してください。

治らない背中ニキビかも?マラセチア毛包炎の診断と治療法3選

背中や胸、腕のブツブツがなかなか治らず、長年お悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。一般的なニキビ薬を試しても一向に良くならない、一度良くなってもすぐに再発してしまう。このような経験は、多くの方が抱える共通の悩みです。皮膚科医として患者さんと接する中で、これらの「治らないニキビ」だと思われている症状の多くが、「マラセチア毛包炎」であることが判明します。

マラセチア毛包炎は、見た目が通常のニキビと非常によく似ています。そのため、自己判断や誤った診断により、不適切な治療が続けられてしまうことが少なくありません。原因菌が異なるため、ニキビ治療薬として一般的な抗菌薬(抗生物質)では、マラセチア毛包炎には効果が期待できないのです。マラセチア毛包炎は、決して珍しい病気ではありません。世界的に見ても、1%から17%の人が罹患しているという報告があり、日本の特定の地域でも比較的高い頻度で確認されています。

私たちは、患者さんの皮膚の状態をしっかりと見極め、正確な診断へと導きます。そして、その診断に基づいた最も効果的な治療法をご提案することが、症状改善への第一歩だと考えています。

自分の症状は?マラセチア毛包炎のセルフチェックリスト

マラセチア毛包炎は、皮膚に常に存在する「マラセチア菌」という酵母が異常に増殖することで引き起こされます。症状は一般的なニキビ(尋常性ざ瘡)と酷似しているため、ご自身で判断することは非常に難しいものです。しかし、いくつかの特徴を知っておくことで、マラセチア毛包炎の可能性を疑うことができます。特に、思春期から中年期の患者さんに多く見られ、汗をかきやすい春から夏にかけて悪化しやすい傾向があります。

ご自身の症状がマラセチア毛包炎かもしれないと感じたら、以下のチェックリストで確認してみましょう。当てはまる項目が多いほど、マラセチア毛包炎の可能性が高まります。

  • ぶつぶつ(丘疹)の特徴

    • 直径2~6ミリメートルほどの小さな赤いぶつぶつが多発していますか?
    • 背中、胸、首、上腕(肩から肘にかけての腕)に多く見られますか?
    • ぶつぶつ一つ一つが、ほぼ同じような大きさや形をしていますか?
    • いわゆる「白ニキビ」や「黒ニキビ」のようなものは少ないですか?
  • かゆみの有無

    • ぶつぶつにかゆみを伴うことがありますか?
    • 特に汗をかいた後や入浴後に、かゆみが強くなることがありますか?
  • 治療への反応

    • これまで、一般的なニキビ治療薬や抗菌薬を塗っても効果を感じられませんでしたか?
    • 一時的に良くなっても、すぐに再発を繰り返していますか?
  • その他

    • ステロイド剤を塗布したり、免疫を抑えるお薬を使っていたりしますか?
    • 汗をかきやすい環境で過ごすことが多いですか?
    • 海水浴などで肌に刺激を受ける機会がありましたか?

これらの項目に多く当てはまる場合、マラセチア毛包炎が疑われます。特に、一般的なニキビ治療薬を数週間続けても改善が見られない場合は、真菌が原因の毛包炎を考慮することが非常に重要です。自己判断で治療を続けるのではなく、皮膚科での専門的な診断を受けることを強くおすすめします。

市販薬で治る?選び方と効果が期待できる成分

「まずは市販薬を試してみたい」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、マラセチア毛包炎の原因は真菌(カビの一種)であるマラセチア菌です。一般的なニキビ薬に含まれる抗生物質(抗菌薬)は、細菌には効果がありますが、真菌には作用しません。そのため、抗生物質を使い続けてもマラセチア毛包炎の症状は改善されず、かえって皮膚の常在菌のバランスが崩れてマラセチア菌の増殖を助けてしまう可能性すらあります。実際に、抗生物質の使用がマラセチア毛包炎の発症や悪化に関与することが複数の研究で指摘されています。

市販薬でマラセチア毛包炎の症状を和らげるためには、マラセチア菌に直接作用する「抗真菌成分」が配合された製品を選ぶ必要があります。主に「イミダゾール系抗真菌剤」が有効とされており、以下の成分名を目安に探してみてください。

  • 効果が期待できる成分の例
    • ミコナゾール硝酸塩
    • ケトコナゾール
    • ルリコナゾール
    • ブテナフィン塩酸塩

これらの成分は、マラセチア菌の細胞膜の合成を阻害することで、菌の増殖を抑える働きがあります。ただし、市販薬は有効成分の濃度が医療用医薬品に比べて低い場合が多く、広範囲にわたる症状や炎症が強い場合には十分な効果が得られないことも少なくありません。もし市販薬を数週間試しても改善が見られない、あるいは症状が悪化するようであれば、自己判断での使用を中止し、速やかに皮膚科を受診してください。適切な診断と治療が遅れることで、症状が長引き、治癒が難しくなるリスクを避けるためにも、専門医の診察を受けることが最も大切です。

皮膚科での正確な診断方法と専門治療(内服薬・外用薬)

皮膚科では、患者さんの症状を詳しく診察し、マラセチア毛包炎であるかを正確に診断することが可能です。特に、一般的なニキビ(尋常性ざ瘡)や細菌性毛包炎と臨床的に非常に似ているため、誤診を防ぎ、適切な治療を始めるためには専門的な検査が不可欠です。

皮膚科での主な診断方法

マラセチア毛包炎の診断を確定し、適切な抗真菌薬治療を開始するためには、顕微鏡検査や生検などの適切な診断方法が不可欠です。

  • 視診・問診

    • まずは、ぶつぶつのできている場所、色、形、かゆみの有無、いつから症状が出ているか、市販薬や過去の治療歴などを詳しくお伺いします。
  • KOH直接鏡検(水酸化カリウム直接鏡検)

    • ぶつぶつの中から採取した皮膚の小さなかけらを水酸化カリウム溶液で処理し、顕微鏡で観察する検査です。マラセチア菌は特徴的な酵母様の形をしているため、この検査で比較的容易に菌の存在を確認することができます。これはマラセチア毛包炎の診断に非常に有用で、簡便かつ有効な手法です。実際、多くの症例で毛包内容物の直接鏡検によりPityrosporum属菌が検出されています。
  • ダーモスコピー

    • 皮膚の表面を拡大して観察する特殊な機器を使用します。これにより、肉眼では見えにくい皮膚の細かい変化や、毛包内の異常などを確認できます。
  • 生検(皮膚の一部を採取する検査)

    • 診断が難しい場合や、他の皮膚疾患の可能性も考えられる場合には、皮膚の一部を小さく採取し、病理組織学的に詳しく調べることもあります。毛包内にマラセチア菌が存在することや、毛包周囲の炎症を確認できます。稀に、マラセチア菌が巨大な細胞に貪食され、肉芽腫という特殊な炎症の塊を形成しているケースも報告されています。

皮膚科での専門治療

正確な診断に基づき、症状の程度や広範囲にわたるかどうかによって、外用薬と内服薬を使い分けて治療を行います。

  • 外用薬(塗り薬)

    • 抗真菌剤: イミダゾール系の外用抗真菌剤が治療の第一選択となります。マラセチア菌の増殖を抑える効果があります。一般的な抗生物質(抗菌薬)とは異なる成分です。多くの症例でイミダゾール系抗真菌剤の外用により良好な治療効果が示されています。
  • 内服薬(飲み薬)

    • 症状が広範囲にわたる場合や、外用薬だけでは効果が不十分な場合、あるいは早く治したい場合には、経口抗真菌薬(飲み薬)が非常に効果的です。例えば、フルコナゾール、イトラコナゾール、テルビナフィンなどの成分が使われます。これらの飲み薬は、体の中からマラセチア菌に作用するため、より迅速な改善が期待できます。尋常性ざ瘡を合併している場合には、抗真菌薬とざ瘡治療薬を併用することもあります。経口抗真菌薬は、迅速な症状改善をもたらす最も効果的な治療法の一つです。

マラセチア毛包炎は再発しやすい傾向があるため、症状が改善した後も、医師の指示に従い、しばらく治療を続けることが大切です。ご自身の判断で治療を中断せず、皮膚の専門家である医師と相談しながら、しっかりと治療を進めていくことが完治への近道となります。

Q&A

  • Q1: 治療期間はどのくらいですか?

    • A1: 症状の重さや広がりによりますが、一般的に外用薬で数週間から数ヶ月、内服薬を併用する場合は比較的早く改善が見られます。再発しやすい病気のため、医師の指示に従い、症状が落ち着いた後も一定期間は治療を継続することが大切です。
  • Q2: 治療費用は高額になりますか?

    • A2: マラセチア毛包炎の診断と治療は保険診療の範囲内で行われます。検査内容や処方される薬によって費用は異なりますが、ご加入の健康保険の負担割合に応じた自己負担額となります。ご心配な場合は、受診時に医師や受付スタッフにご相談ください。
  • Q3: 症状が改善した後も再発予防のためにできることはありますか?

    • A3: マラセチア菌は高温多湿の環境や皮脂が多い場所で増殖しやすいため、通気性の良い衣服を選び、汗をかいたらこまめに拭き取るなどの工夫が有効です。また、肌を清潔に保つことや、免疫力が低下しないよう規則正しい生活を送ることも大切です。

治らない背中のブツブツにお悩みでしたら、お一人で抱え込まずに、ぜひ一度当院までご相談ください。皮膚科医として、患者さん一人ひとりの肌の状態に合わせた最適な診断と治療法をご提案し、お悩みの解決をサポートいたします。

マラセチア毛包炎はうつる?再発を防ぐ生活習慣のポイント

背中や胸にできるブツブツがなかなか治らず、これは家族や親しい人にうつってしまうのではないか、とご心配されている方も多いのではないでしょうか。また、一度治っても再発を繰り返すことに不安を感じるかもしれません。マラセチア毛包炎は、ご自身の皮膚に存在する常在菌が原因で起こるため、人から人に感染する心配はほとんどありません。しかし、再発しやすいという特徴があります。

私たち皮膚科医は、患者さんのそのようなお悩みに真摯に向き合っています。ここでは、マラセチア毛包炎がうつらない理由と、症状の発症や悪化、そして再発を防ぐための具体的な生活習慣やスキンケアのポイントについて、詳しくお話しいたします。ご自身の皮膚を守り、快適な毎日を送るためにも、ぜひご一読ください。

人にうつる心配はほとんどない理由

マラセチア毛包炎は、皮膚の常在菌であるマラセチアという酵母菌が毛穴の中で過剰に増殖することで発症する病気です。このマラセチア菌は、健康な方の皮膚にもともと住んでいる菌であり、誰もが持っているものです。正常な皮膚の菌叢において、この酵母が過剰に増殖すると症状が現れます。そのため、人から人へ直接うつることは基本的にありませんので、ご安心ください。

同じお風呂に入ったり、タオルを共有したりする程度の接触で、ご家族やご友人に感染する心配はほとんどないと考えてよいでしょう。例えば、私たちの臨床経験からも、家族内でマラセチア毛包炎が次々にうつったというケースはほとんどありません。ただし、免疫力が著しく低下している方や、皮膚に大きな傷がある方など、ごく特別な状況下では注意が必要な場合もあります。

マラセチア毛包炎は、一般的なニキビ(尋常性ざ瘡)と見た目が非常に似ているため、誤診されやすい疾患でもあります。通常のニキビ治療薬に含まれる抗菌薬(抗生物質)では、マラセチア毛包炎には効果が期待できず、何年も症状が改善しないことも少なくありません。ご自身の症状がマラセチア毛包炎かもしれないと疑うことが、早期に適切な治療へと繋がる第一歩となります。

発症や悪化につながる生活習慣と環境要因

マラセチア毛包炎の発症や悪化には、マラセチア菌が増殖しやすい特定の生活習慣や環境要因が大きく関わっています。マラセチア菌は皮脂を栄養源とし、高温多湿な環境を好むという特徴があるため、以下のような状況は特に注意が必要です。

  • 高温多湿な環境と発汗

    • マラセチア菌は、皮脂を栄養源として高温多湿な環境で繁殖しやすいため、夏場や、スポーツなどで発汗した状態が長く続くと増えやすくなります。
    • 特に、通気性の悪い衣服を着用することもリスクを高める要因です。
    • 海水浴などで肌が湿った状態が長く続くことも、マラセチア菌の増殖を助ける可能性があります。
  • 皮脂の過剰分泌

    • 思春期やホルモンバランスの乱れなどで皮脂の分泌量が増えると、マラセチア菌の栄養源が豊富になり、増殖を助けてしまいます。
    • 脂性肌の方は特に注意が必要です。
  • 薬剤の使用

    • ステロイド剤: ステロイドの外用薬を長期的に使用したり、全身性ステロイド(特にデキサメタゾンなど)を内服したりすると、皮脂の分泌を刺激し、マラセチア菌の増殖を促進する可能性があります。当院の患者さんでも、他の疾患でステロイドを使用中にマラセチア毛包炎を発症した例が見られます。
    • 抗生物質: 長期にわたる抗生物質の服用は、皮膚の常在菌のバランスを変化させ、マラセチア菌が優位になることで毛包炎を誘発・悪化させることがあります。これは、マラセチア菌と競合する細菌が抗生物質によって減少するためと考えられています。
  • 免疫力の低下

    • 病気(例えば白血病や全身性エリテマトーデスなど)や、疲労、ストレスなどによる一時的な免疫力の低下は、皮膚常在菌であるマラセチア菌の異常増殖を招き、毛包炎を発症・悪化させる重要な要因となり得ます。
    • 全身性疾患を伴う免疫抑制状態の患者さんにマラセチア毛包炎が多く見られることが報告されています。
  • 肥満や閉塞性の状態

    • 肥満の方や、衣服などで皮膚が常に擦れて閉塞しやすい部位は、通気性が悪くなり、マラセチア菌が増殖しやすい環境となります。
    • 集中治療を受けている患者さんなどで、体が不動の状態が続くことも、皮膚の蒸れや閉塞からマラセチア毛包炎のリスク因子となることがあります。

マラセチア毛包炎は、若年層から中年層に多く発生し、特に春から夏にかけて、かゆみを伴う赤いぶつぶつが背中や胸、首、上腕などに現れやすいという特徴があります。ご自身の生活習慣や体質で思い当たる点があれば、それを改善することが症状の悪化を防ぐことにもつながります。しかし、自己判断でニキビ治療薬を使い続けるのではなく、皮膚科での適切な診断と治療を受けることが何よりも重要です。

再発を繰り返さないための予防ケアとスキンケア

マラセチア毛包炎は、抗真菌薬による治療で症状は改善しますが、「再発が一般的」な疾患です。症状が良くなっても、根本的な生活習慣やスキンケアを見直さなければ、再びぶつぶつができてしまう可能性があります。再発を繰り返さないためには、マラセチア菌が増殖しにくい皮膚環境を保つことが大切です。日々の予防ケアとスキンケアは、治療と同じくらい重要だと考えています。

  • 清潔を保つ

    • 汗をかいたら、できるだけ早くシャワーで洗い流し、清潔なタオルで優しく水分を拭き取りましょう。
    • ゴシゴシ洗いすぎると皮膚のバリア機能を損ねてしまうため、摩擦は避けてください。
    • 抗真菌成分(ミコナゾール硝酸塩やケトコナゾールなど)が配合された薬用シャンプーやボディソープを、週に数回使用することも予防ケアとして有効な場合があります。
    • これらの成分は、マラセチア菌の増殖を抑えるだけでなく、抗炎症作用や皮脂抑制効果も期待できる場合があります。
  • 通気性の良い服装を心がける

    • 汗をかきやすい季節には、吸湿性・速乾性に優れた素材の衣類を選び、ぴったりとした服は避けましょう。
    • 肌に触れる下着やパジャマなども、綿や機能性素材などの通気性の良い素材がおすすめです。
    • 蒸れにくい服装を心がけることで、マラセチア菌が繁殖しにくい環境を作ることができます。
  • 皮脂コントロールと保湿

    • 洗浄後は、皮脂を過剰に奪いすぎず、適切な保湿を行うことが大切です。
    • 肌の乾燥はバリア機能の低下につながり、かえって皮脂分泌を促すこともあります。
    • ノンコメドジェニックテスト済みなどの低刺激性の保湿剤を選び、肌のうるおいバランスを保ちましょう。
  • 寝具の清潔

    • 寝具は汗や皮脂が付着しやすいため、シーツや枕カバーはこまめに洗濯し、清潔に保つことが大切です。
    • 特に汗をかく時期は、週に1回以上の洗濯をおすすめします。
  • 生活習慣の見直し

    • ストレスや睡眠不足は免疫力の低下につながります。
    • バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけ、健やかな生活習慣を送ることが、肌の健康維持にも繋がります。
    • マラセチア毛包炎の誘因となる要因を日常生活から是正していくことが、再発を防ぐための重要なポイントです。

Q&A

  • Q1: 症状が改善した後も、予防ケアは続ける必要がありますか?

    • A1: はい、マラセチア毛包炎は再発しやすい特徴がありますので、症状が改善した後もご紹介した予防ケアを継続することが非常に大切です。日々のスキンケアや生活習慣を見直すことで、症状のない状態を長く維持することが十分に可能です。
  • Q2: 市販の抗真菌薬配合シャンプーやボディソープだけで治療できますか?

    • A2: 軽度の症状や、治療後の再発予防として、抗真菌成分(例:ミコナゾール硝酸塩、ケトコナゾールなど)が配合された市販の製品が役立つ場合があります。しかし、これらはあくまで補助的なケアであり、症状が改善しない場合や悪化する場合は、自己判断で使い続けずに必ず皮膚科を受診してください。
  • Q3: マラセチア毛包炎は完全に治らない病気なのでしょうか?

    • A3: マラセチア菌は皮膚の常在菌であるため、完全に菌をなくすことは難しいです。しかし、適切な抗真菌薬での専門的な治療と、日々の予防ケアを継続することで、症状を抑え、快適な状態を維持することは十分に可能です。ご自身の判断で治療を中断せず、皮膚の専門家である医師と相談しながら、しっかりと治療を進めていくことが完治への近道となります。

背中や胸のブツブツがなかなか治らず、かゆみや見た目の問題でお悩みでしたら、お一人で抱え込まずに、ぜひ一度当院までご相談ください。皮膚科医として、患者さん一人ひとりの肌の状態を正確に診断し、最適な治療法と日々のケアについて具体的なアドバイスをさせていただきます。適切な診断と治療を受けることが、症状改善と再発予防の最も確実な方法です。

まとめ

背中や胸のブツブツが「背中ニキビが治らない」とお悩みではありませんか?実はそれは、一般的なニキビとは異なる「マラセチア毛包炎」かもしれません。この病気は、皮膚にいるマラセチア菌というカビの一種が原因で、かゆみを伴う同じような赤いぶつぶつが多発するのが特徴です。

高温多湿な環境や皮脂の過剰分泌で悪化しやすく、一般的なニキビ治療薬では効果が期待できません。人にうつる心配はほとんどありませんが、再発しやすい特徴があります。市販薬を試しても改善しない場合は、自己判断をせずに、皮膚科で適切な診断と抗真菌薬による専門的な治療を受けることが大切ですし、再発予防のための生活習慣も重要になります。

最後までお読みいただきありがとうございます。

症状や治療について「これって相談していいのかな?」と迷われている方も、どうぞお気軽にご来院ください。

また、
📱 院長Instagram
📱 クリニック公式Instagram
では、日々の診療の様子や医療情報を発信しております。

さらに、匿名で院長に直接質問できるオープンチャットも運営しております。
「病院に行く前に少し聞いてみたい」という方にもおすすめです。

ご予約は
公式LINE または お電話 (0120-137-375)にて承っております。

(タップorクリックするとそれぞれリンク先へ移動します。)

皆さまの不安が少しでも軽くなるよう、スタッフ一同サポートいたします。

🗺️ご来院頂いている主なエリア🗺️

愛知県:名古屋市(南区、瑞穂区、昭和区、天白区、緑区、熱田区、港区、中川区、西区、北区、守山区、東区、千種区、名東区、中区、中村区)

刈谷市、安城市、日進市、豊田市、長久手市、大府市、東海市、瀬戸市、岡崎市、尾張旭市、北名古屋市、高浜市、碧南市

岐阜県、三重県

Re:Bitrh Clinic Nagoya(リバースクリニックナゴヤ)
📫457-0012 愛知県名古屋市南区菊住1-4-10 Naritabldg 3F
皮膚科、形成外科、美容外科、美容皮膚科
☎️0120-137-375
✉️info@rebirth-clinic.jp

参考文献

  1. Martínez-Ortega JI, Mut Quej JE, Franco González S, et al. Malassezia Folliculitis: Pathogenesis and Diagnostic Challenges.
  2. Rubenstein RM, Malerich SA. Malassezia (pityrosporum) folliculitis – PubMed.
  3. Chalupczak NV, Lipner SR. Malassezia Folliculitis: An Underdiagnosed Mimicker of Acneiform Eruptions.
  4. Henning MA, Jemec GB, Saunte DM. Malassezia folliculitis.
  5. Barrera-Godínez A, Figueroa-Ramos G. Malassezia Folliculitis in the Setting of COVID-19 – PubMed.
  6. 清 佳浩. 会長講演より マラセチアと皮膚疾患の関係.
  7. 加藤 卓朗, 香川 三郎. Malassezia Folliculitis (マラセチア毛包炎).
  8. 松田 哲男, 松本 忠彦. マラセチア毛包炎 (Malassezia Folliculitis).

追加情報

タイトル: Malassezia Folliculitis: Pathogenesis and Diagnostic Challenges 著者: Jesús Iván Martínez-Ortega, Jacqueline E Mut Quej, Samantha Franco González, Jesús Iván Martínez-Ortega et al.

概要:

  • Malassezia folliculitis (MF) は、細菌性毛包炎と臨床的に類似するため、しばしば誤診や治療の遅れが生じる真菌感染症である。
  • 本報告では、上背部と胸部に持続的な痒みを伴う丘疹が発症し、当初細菌性毛包炎と誤診された16歳男性の症例を提示する。
  • 抗菌薬治療が無効であった後、真菌学的分析によりMalasseziaが原因病原体であることが確認された。
  • 抗真菌薬治療により患者の状態は著しく改善し、毛包炎、特に再発性または治療抵抗性の症状を持つ患者において、真菌性病因を考慮することの重要性が強調された。

要点:

  • Malassezia folliculitis (MF) は、細菌性毛包炎と類似した臨床像を呈するため、誤診や不適切な治療が一般的である。
  • 抗菌薬治療に反応しない、あるいは再発性の毛包炎患者においては、真菌学的検査によるMalassezia感染の鑑別が極めて重要である。
  • 正確な診断に基づいた適切な抗真菌薬治療は、Malassezia folliculitis患者の症状を著しく改善させる。
  • この症例は、毛包炎の鑑別診断において真菌性病因を考慮し、正確な診断と適切な治療が不可欠であることを示している。

タイトル: Malassezia (pityrosporum) folliculitis – PubMed 著者: Richard M Rubenstein , Sarah A Malerich, Richard M Rubenstein, Sarah A Malerich, Richard M Rubenstein et al.

概要:

  • Malassezia (Pityrosporum) folliculitisは、尋常性ざ瘡(acne vulgaris)と誤診されやすい真菌性のざ瘡様症状である。
  • 一般的なざ瘡治療薬では完治せず、何年も持続することがある。
  • この状態は、正常な皮膚常在菌である酵母の過剰増殖によって引き起こされる。
  • 免疫抑制や抗生物質の使用など、皮膚の菌叢を変化させる要因によって発疹が誘発されることがある。
  • 最も一般的な症状は、胸部、背部、腕の後部、顔に現れる単形性の丘疹と膿疱である。
  • 経口抗真菌薬が最も効果的な治療法であり、迅速な改善をもたらす。
  • 尋常性ざ瘡との併発時には、抗真菌薬とざ瘡治療薬の併用が必要となる場合がある。
  • 本記事は、この一般的ではあるが見逃されやすい疾患についてレビューし、読者に最新情報を提供する。

要点:

  • Malassezia folliculitisは、尋常性ざ瘡と誤診されがちな真菌性のざ瘡様症状である。
  • 原因は、正常な皮膚常在菌であるMalassezia酵母の過剰増殖である。
  • 免疫抑制や抗生物質の使用が発症に関連する主な要因である。
  • 主な症状は、胸部、背部、腕の後部、顔に見られる単形性の丘疹と膿疱である。
  • 経口抗真菌薬が最も効果的な治療法であり、速やかな症状改善が期待できる。
  • 尋常性ざ瘡との合併例では、抗真菌薬とざ瘡治療薬の併用が推奨される。

タイトル: Malassezia Folliculitis: An Underdiagnosed Mimicker of Acneiform Eruptions 著者: Natalia V Chalupczak, Shari R Lipner et al.

概要:

  • マラセチア毛包炎(以前はPityrosporum毛包炎として知られる)は、毛包内のマラセチア酵母の過剰増殖によって引き起こされる、一般的でありながら頻繁に誤診される皮膚疾患である。
  • その単一形態でかゆみを伴う丘疹や膿疱は尋常性ざ瘡に酷似しており、しばしば不適切な抗生物質の使用につながる。
  • 本レビューは、マラセチア毛包炎の疫学、臨床像、診断上の課題、および管理に関する現在のエビデンスを要約している。
  • 難治性のざ瘡様発疹を示す患者においては、高い臨床的疑いを持つことが極めて重要である。
  • 診断は、ダーモスコピー、水酸化カリウム(KOH)検査、ウッド灯、および抗真菌療法への反応によって支持される。
  • 外用および経口抗真菌剤は非常に効果的であるが、再発が一般的であり、適応外治療へのアクセスが制限される場合がある。
  • マラセチア毛包炎の明確な臨床的特徴と治療反応に対する認識を高めることが、診断の正確性を向上させ、患者の転帰を改善することにつながる。

要点:

  • マラセチア毛包炎は尋常性ざ瘡に酷似し、しばしば誤診されて不適切な抗生物質治療が施される。
  • 難治性のざ瘡様発疹がある場合、マラセチア毛包炎の可能性を強く疑う臨床的判断が不可欠である。
  • 診断にはダーモスコピー、KOH検査、ウッド灯、および抗真菌療法への反応が有用である。
  • 抗真菌剤は有効な治療法であるが、再発が多く、一部の治療法へのアクセスは限られる可能性がある。
  • 本疾患に対する認識の向上が、診断の正確性と患者の治療結果の改善に寄与する。

タイトル: Malassezia folliculitis 著者: Mattias As Henning, Gregor B Jemec, Ditte Ml Saunte

概要:

  • 本総説は、Malassezia属菌によって引き起こされる毛包の炎症であるマラセチア毛包炎(MF)について議論する。
  • MFの世界的な有病率は1%から17%の範囲である。
  • 臨床的には、背中、胸、首に紅斑性の2-4 mm大の丘疹や膿疱として現れるため、尋常性ざ瘡との鑑別が困難な場合がある。
  • MFの診断を確定し、適切な抗真菌薬治療を開始するためには、顕微鏡検査や生検などの適切な診断方法が不可欠である。

要点:

  • マラセチア毛包炎(MF)は、様々なMalassezia属菌によって引き起こされる毛包の炎症である。
  • MFの世界的有病率は1%から17%と幅広い。
  • 臨床症状が尋常性ざ瘡と類似しており、鑑別診断が難しい点が課題である。
  • 正確なMFの診断と適切な抗真菌薬治療の開始には、顕微鏡検査や生検といった適切な診断方法が極めて重要である。

タイトル: Malassezia Folliculitis in the Setting of COVID-19 – PubMed 著者: Alejandro Barrera-Godínez, Grecia Figueroa-Ramos, Alejandro Barrera-Godínez et al.

概要:

  • 本レビューの目的は、Malassezia毛包炎に関する最新の文献をレビューし、COVID-19との関連性を探ることである。
  • COVID-19患者におけるMalassezia毛包炎の報告は稀であるものの、罹患患者には男性、肥満、集中治療、全身性抗生物質および全身性ステロイドの投与といった共通の特徴が見られる。
  • デキサメタゾンは皮脂産生を刺激し、マラセチア菌の増殖を促進する可能性があると指摘されている。
  • COVID-19に併発するMalassezia毛包炎の臨床像は古典的な記述と類似するが、顔面を避け、閉塞部位に好発する傾向がある。
  • 発熱、発汗、閉塞、不動、抗生物質、デキサメタゾンがCOVID-19患者のMalassezia毛包炎発症に寄与する。
  • 治療は抗真菌療法と誘因の是正が主軸であり、今後の研究では全身性ステロイドと他のざ瘡様反応との関連性を探るべきである。

要点: ・研究目的は、Malassezia毛包炎とCOVID-19の関連性を文献レビューによって調査することである。 ・COVID-19患者でMalassezia毛包炎が報告されることは稀だが、男性、肥満、集中治療、全身性抗生物質および全身性ステロイドの投与が共通のリスク因子として特定された。 ・全身性ステロイド、特にデキサメタゾンが皮脂産生を刺激し、マラセチア菌の増殖を促進する可能性が重要な知見である。 ・COVID-19関連のMalassezia毛包炎は、顔面ではなく閉塞部位に多いという特徴的な臨床像を示す。 ・マラセチア毛包炎の管理には抗真菌療法に加え、発熱、発汗、閉塞、不動、特定の薬剤(デキサメタゾン、抗生物質)といった誘因の是正が不可欠である。 ・今後の研究課題として、全身性ステロイドとざ瘡様反応全般との関連性の解明が挙げられている。


タイトル: 会長講演より マラセチアと皮膚疾患の関係 著者: 清 佳浩 (帝京大学溝口病院 皮膚科 教授)

概要:

  • 本講演は、清佳浩教授が1985年にマラセチアを発見して以来の、マラセチアと脂漏性皮膚炎、癜風、マラセチア毛包炎といった皮膚疾患との関係性に関する研究の歩みと主要な知見をまとめている。
  • 脂漏性皮膚炎の病巣にマラセチアが多数いることを発見したことが、抗真菌薬による治療の着想となり、その有効性を臨床試験で証明した。
  • マラセチア属真菌の多様性の解明が世界の研究を促進し、特に癜風の主要起因菌がM. globosaであることが分子生物学的に特定された。
  • マラセチア毛包炎の病態、診断、治療についても解説し、脂漏性皮膚炎治療におけるケトコナゾールの有用性を強調している。
  • 真菌症および真菌関連疾患の診断における直接鏡検の重要性を一貫して訴えている。

要点:

  • 研究の出発点: 1985年、清佳浩教授はニキビダニの鏡検中に脂漏性皮膚炎の病巣に多数のマラセチア胞子を発見し、抗真菌薬による治療の可能性に着目した。
  • 脂漏性皮膚炎治療への貢献: 抗真菌剤の外用が脂漏性皮膚炎に有効であることを示した臨床試験(1994年)や、0.75%硝酸ミコナゾール配合シャンプーのフケ症への有用性を検証した二重盲検比較試験(1997年)を実施し、抗真菌薬の有効性を確立した。
  • マラセチア属の分類と病原性: 1997年の国際医真菌学会でのマラセチア属真菌の多種分類の報告を機に研究が加速。癜風の主要起因菌がM. globosaであることが、病巣からの直接DNA抽出により特定された。
  • マラセチア毛包炎の病態と診断: 高温多湿、多汗、ステロイド使用などで毛包内のマラセチアが増殖して発症。尋常性痤瘡と異なり面皰がほとんどなく、瘙痒を伴うことが特徴。大型の球状胞子集団の検出(直接鏡検)で診断され、M. globosaが起因菌の可能性が高い。
  • 脂漏性皮膚炎の治療戦略: ケトコナゾールは抗炎症、抗真菌、抗脂漏抑制効果を併せ持ち、海外では脂漏性皮膚炎のファーストライン治療薬とされ、ステロイドの長期使用による副作用の問題を回避できる。
  • 直接鏡検の重要性: 真菌症や真菌関連疾患の診断の基本は直接鏡検であり、多くの皮膚科医にこの手法の活用を推奨している。

タイトル: Malassezia Folliculitis (マラセチア毛包炎) 著者: 加藤 卓朗, 香川 三郎 (東京医科歯科大学皮膚科学教室) 概要:

  • Malassezia Folliculitis (MF) の12症例 (男性5例、女性7例、平均年齢25.8歳) を報告。
  • 発症は春から夏に多く、10例で痒みを伴う紅色の毛包性丘疹や膿疱性丘疹が背部、胸部、頚部などに限局して出現した。
  • 基礎疾患が3例にあり、ステロイド剤外用、海水浴、発汗などが発症または悪化因子として関与している可能性が示唆された。
  • 毛包内容物の直接鏡検および培養により、全例でPityrosporum orbiculareの集団またはPityrosporum属菌が検出された。一部の症例ではPityrosporum ovaleも混在した。
  • イミダゾール系抗真菌剤の外用により、5例が治癒し、7例が軽快するなど良好な治療効果を示した。
  • これらの結果から、皮膚の局所的な変化がPityrosporum orbiculareの増殖を促し、Malassezia Folliculitisを発症させると考察された。

要点:

  • Malassezia Folliculitisは若年・中年層に発生し、特に春から夏にかけて、上躯幹や頚部に痒みを伴う紅色毛包性丘疹・膿疱性丘疹として現れる。
  • 基礎疾患の有無、ステロイド剤外用、海水浴、発汗などが発症・悪化因子となりうる。
  • Pityrosporum orbiculareが主要な原因菌であり、毛包内容物の直接鏡検や培養で高頻度に検出される。
  • イミダゾール系抗真菌剤の外用治療が有効であり、他の外用剤(抗生物質など)よりも効果が高い。
  • 本症は、常在菌であるPityrosporum orbiculareが、宿主の抵抗性変化や皮膚の局所的変化(薬剤外用、露光、発汗など)を契機に増殖することで発症すると考えられる。

タイトル: マラセチア毛包炎 (Malassezia Folliculitis) 著者: 松田 哲男1, 松本 忠彦2 (1九州大学医学部皮膚科教室, 2東芝中央病院皮膚科)

概要:

  • マラセチア毛包炎は、1968年に初めて記載されたMalassezia furfurが毛包内で増殖することにより生じる疾患である。
  • 比較的高頻度なcommon skin diseaseの一つと考えられており、九州大学の調査では比較的高い頻度で認められた。
  • 臨床的には上背部、前胸部、上腕に多発する2-6mmの紅色の丘疹として観察される。
  • 病理組織学的には、開大した毛包内での酵母様菌形態のMalassezia furfurの存在と、毛包およびその周囲の炎症細胞浸潤が特徴である。稀に肉芽腫を形成することもある。
  • 診断には苛性カリによる直接鏡検が有用であり、菌要素の検出が比較的容易である。
  • 治療はイミダゾール系抗真菌剤などの外用療法が基本だが、難治性の場合や広範囲に及ぶ場合には内服療法が必要となる。
  • 白血病やSLEなどの全身性疾患を伴う免疫抑制状態の患者に多く見られ、副腎皮質ホルモン剤の内服やステロイド外用剤の使用が発症や悪化に関与することが示唆されている。

要点:

  • マラセチア毛包炎はMalassezia furfurの毛包内増殖によって引き起こされる、明確な疾患概念を持つ感染症である。
  • 比較的高頻度に発生し、九州大学での統計ではスポロトリコーシスの数倍の頻度で観察され、稀な疾患ではないと認識されている。
  • 主な皮疹部位は上背部、前胸部、上腕であり、直径2-6mmの紅色の丘疹や膿疱が特徴的な臨床所見である。
  • 病理組織学的に毛包内に酵母様形態のM. furfurが存在し、毛包周囲に好中球やリンパ球を中心とした炎症細胞浸潤が認められる。M. furfurが巨細胞に貪食される肉芽腫性炎症の報告もあり、その病原性を裏付ける。
  • 診断には、苛性カリを用いた直接鏡検が簡便かつ有効な手法である。
  • 治療はイミダゾール系外用抗真菌剤が第一選択となるが、効果が不十分な場合はフルコナゾール、イトラコナゾール、テルビナフィンなどの経口抗真菌剤が有効である。
  • 全身性疾患や免疫抑制状態が発症・進行に関与する重要な因子であり、皮膚常在菌であるM. furfurの異常増殖を招くと考えられる。
  • 本疾患は感染症としての根拠が確立されており、今後のさらなる病態解明が期待されている。

タイトル: マラセチア毛包炎

URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjmm1990/34/4/34_4_425/_article/-char/ja/

内容: Medical Mycology Journal

このブログをSNSでシェアする!
Dr.ゴノに直接質問
LINEオープンチャット