名古屋市「新瑞橋」美容外科・美容皮膚科・形成外科・一般皮膚科

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膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎とは?治療法は?

頭皮に繰り返しできる、痛みを伴うニキビのようなおできや硬いしこり。「ただの肌荒れだろう」と自己判断で放置していませんか?そのしつこい症状は、もしかしたら「膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎(PCAS)」という、診断が非常に難しい病気のサインかもしれません。この病気は進行性であり、診断の遅れは永続的な脱毛や、元に戻すことの困難な瘢痕(きずあと)につながるリスクをはらんでいます。しかし、治療が難しいからといって、決して諦める必要はありません。治療法は日々進歩しており、難治例に対する新たな選択肢も登場しています。 この記事では、PCASの正確な診断の重要性から、併用療法や生物学的製剤といった最新の治療戦略までを形成外科専門医が徹底解説します。あなたの髪と頭皮の未来を守るための知識が、ここにあります。

診断の重要性-なぜ病理組織学的検査が必要なのか

膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎(PCAS)の治療は、正確な診断から始まります。 しかし、この疾患の診断は、特に初期段階では非常に難しいことで知られています。

頭皮にできたニキビのようなもの、と軽く考えてしまう方も少なくありません。 ですが、見た目だけで判断できないのが、この病気の厄介な点です。

なぜなら、初期症状が他の一般的な皮膚疾患と非常によく似ているためです。 例えば、ただの毛包炎(毛穴の細菌感染)や、しつこいニキビ(尋常性ざ瘡)と見分けるのは困難です。

そのため、確定診断には、皮膚の一部を採取して顕微鏡で詳しく調べる「病理組織学的検査」が不可欠となります。 この検査によって、皮膚の深い部分で何が起きているのかを正確に把握できるのです。

専門医が臨床所見と病理組織学的検査の結果を注意深く分析することで、初めて確実な診断が下せます。 適切な治療方針を立てるためには、この確定診断のプロセスが極めて重要になります。

診断の重要性-なぜ病理組織学的検査が必要なのか
診断の重要性-なぜ病理組織学的検査が必要なのか

膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎の確定診断プロセス

当院では、膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎の診断を以下のプロセスで慎重に進めます。 一つひとつの情報を組み合わせ、総合的に判断することが的確な診断につながります。

  1. 問診

    • いつから症状があるか、どのような経過をたどっているか、痛みやかゆみの有無、過去の治療歴などを詳しくお伺いします。
  2. 視診・触診

    • 医師が直接、頭皮の状態を確認します。
    • 脱毛斑の広がり、膿の出口(瘻孔)、結節(しこり)や膿瘍(膿のたまり)の有無、瘢痕の状態を丁寧に診察します。
  3. ダーモスコピー検査

    • ダーモスコープという特殊な拡大鏡を使い、毛穴や毛髪、頭皮の状態を詳細に観察します。
    • この病気に特徴的な所見がないかを確認します。
  4. 皮膚生検(病理組織学的検査)

    • 診断を確定させるための最も重要な検査です。
    • 局所麻酔をした後、病変部から数ミリ程度の皮膚組織を採取します。
    • 採取した組織を顕微鏡で観察し、炎症の深さや細胞の種類、毛包の破壊の程度などを調べ、確定診断を下します。
  5. 血液検査

    • 体内の炎症反応の強さなどを調べるために行うことがあります。

これらの検査結果を総合的に分析し、他の似たような疾患の可能性を排除しながら、最終的な診断を確定させます。

臨床所見だけでは診断が困難な初期症状の特徴

膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎の初期症状は、ありふれた皮膚トラブルと見分けがつきにくいのが特徴です。 以下のような症状から始まることが多く、自己判断で様子を見てしまうケースが後を絶ちません。

  • 頭皮にできる、痛みを伴うニキビのようなおでき
  • 硬く触れるしこり(結節)
  • 押すとブヨブヨとした膿のたまり(膿瘍)
  • 部分的な脱毛

これらの症状は、他の多くの皮膚疾患や脱毛症でも見られます。 例えば、以下のような病気が鑑別(見分けるべき病気)の対象となります。

疾患名似ている症状
細菌性毛包炎痛みを伴う赤いおでき、膿
頭部白癬(しらくも)カビによる感染症で、脱毛斑ができる
円形脱毛症突然、円形に毛が抜ける
粉瘤(アテローム)皮膚の下にしこりができ、感染すると腫れて痛む

このように、見た目だけでは区別が難しいため、専門医による詳細な診察と検査が不可欠なのです。

他の毛包炎や脱毛症との鑑別に役立つ病理所見

皮膚生検による病理組織学的検査は、他の疾患との鑑別に決定的な情報をもたらします。 顕微鏡で見ることで、この病気特有の変化を捉えることができるからです。

膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎に特徴的な所見は以下の通りです。

  • 毛包の閉塞

    • 病気の出発点と考えられており、毛穴が角質で詰まっている様子が観察されます。
  • 真皮深層から皮下組織にかけての炎症

    • 炎症が皮膚の表面だけでなく、非常に深い部分まで及んでいます。
    • 通常の毛包炎では、炎症はもっと浅い層にとどまります。
  • 好中球性の膿瘍形成

    • 細菌と戦う白血球の一種である「好中球」が大量に集まり、膿のたまりを形成しています。
  • リンパ形質細胞性肉芽腫による毛包の破壊

    • 慢性的な炎症により特殊な細胞が集まり(肉芽腫)、毛髪を作る組織である毛包そのものを破壊している様子が確認できます。

これらの所見は、他の脱毛症や皮膚炎には見られない特有のものです。 この病理所見が確認されることで、膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎であるという確固たる診断が可能になります。

診断の遅れがもたらすリスクと早期受診の勧め

診断が遅れることは、治療の機会を逃し、深刻な結果を招く可能性があります。 この病気は進行性であり、放置すると症状は着実に悪化していきます。

診断の遅れがもたらす主なリスクは以下の通りです。

  1. 不可逆的な脱毛

    • 毛包が一度破壊されてしまうと、その場所から髪の毛が二度と生えてくることはありません。
    • 治療の開始が遅れるほど、永久的な脱毛の範囲が広がってしまいます。
  2. 重度の瘢痕形成

    • 強い炎症が長く続くと、頭皮は硬く、凹凸のある瘢痕組織に置き換わります。
    • この瘢痕は美容的な問題だけでなく、頭皮のひきつれや違和感の原因にもなります。
  3. 治療の難治化

    • 病変が広範囲に及ぶと、内服薬や外用薬だけではコントロールが難しくなります。
    • 治療が長期化し、より複雑なアプローチが必要になる可能性が高まります。

形成外科専門医の立場から見ても、一度できてしまった広範囲の瘢痕や脱毛を元に戻すことは非常に困難です。 だからこそ、症状が軽いうちに診断を確定させ、炎症の進行を食い止めることが何よりも重要なのです。

頭皮の気になるおできやしこり、脱毛を「いつものこと」と放置せず、ぜひ一度ご相談ください。 早期の的確な診断と治療介入が、あなたの髪と頭皮の未来を守る鍵となります。


よくあるご質問(Q&A)

Q1. 診断には必ず皮膚生検が必要ですか?

A1. 症状が非常に典型的であれば、臨床所見だけで診断がつくこともあります。しかし、特に初期段階や、他の病気との区別が難しい場合には、確定診断のために皮膚生検が強く推奨されます。正確な診断に基づいた治療を行うために、非常に重要な検査です。

Q2. 皮膚生検は痛いですか?傷跡は残りますか?

A2. 検査は局所麻酔の注射をしてから行いますので、検査中の痛みはほとんどありません。麻酔の注射の際にチクッとした痛みを感じる程度です。採取する皮膚は3〜5mm程度と小さく、通常は1針縫合します。傷跡は体質にもよりますが、ほとんど目立たなくなります。診断を確定し、永続的な脱毛や瘢痕を防ぐメリットは、小さな傷跡のリスクを大きく上回ると考えられます。

Q3. どの診療科を受診すれば良いですか?

A3. この疾患は皮膚科または形成外科が専門となります。特に、診断から手術を含む様々な治療選択肢まで一貫して対応できる、この病気の治療経験が豊富なクリニックを選ぶことが望ましいでしょう。当院では、診断から内科的治療、外科的治療まで、患者様一人ひとりの状態に合わせた最適な医療を提供しておりますので、安心してご相談ください。

難治例に対する最新治療戦略-併用療法の実際

膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎の治療は、時に根気が必要となります。 抗菌薬やイソトレチノインといった治療を続けても、なかなか改善せず悩む方も少なくありません。

しかし、治療が難しいからといって、決して諦める必要はありません。 近年の研究により、一つの治療法で効果が得られない場合に、作用の異なる薬を組み合わせる「併用療法」や、新しいタイプの薬剤を用いる治療戦略が試みられ、良い結果が報告されています。

ここでは、そうした難治例に対する治療の選択肢について、形成外科専門医の立場から詳しく解説します。

難治例に対する最新治療戦略-併用療法の実際
難治例に対する最新治療戦略-併用療法の実際

イソトレチノイン単剤療法が効かない場合の次の選択肢

イソトレチノインは、皮脂の分泌を強力に抑え、皮膚の角化(ターンオーバー)を正常化させる作用を持つ内服薬です。 この薬は、膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎に対して高い効果が期待できる治療法の一つとされています。

海外の研究では、長期にわたるイソトレチノインの内服が症状の改善に有効であったと報告されています。 ある研究では、症状が落ち着いた後も再発を防ぐためには、少なくとも8ヶ月間の治療が必要である可能性も示唆されました。

しかし、残念ながらすべての患者様に同じように効果が出るわけではありません。 イソトレチノインを十分な期間、十分な量で内服しても効果が限定的であったり、副作用のために治療を続けられなかったりするケースも存在します。

そのような場合には、次のような治療のステップを検討します。

  • 作用の異なる薬剤との併用療法

    • イソトレチノインの効果を補ったり、異なる角度から炎症を抑えたりする別の薬剤を組み合わせる方法です。
  • 生物学的製剤への切り替え・併用

    • 病気の原因となる体内の特定の物質の働きをピンポイントで抑える新しいタイプの注射薬を用いる方法です。
  • 外科的治療との組み合わせ

    • 薬物療法で炎症をコントロールしながら、膿が溜まった部分を切開したり、瘻孔(膿の通り道)を取り除いたりする手術を組み合わせます。

一つの方法でうまくいかなくても、別のアプローチを組み合わせることで、症状をコントロールできる可能性があります。

イソトレチノインとダプソンの併用療法の有効性

イソトレチノイン単剤での治療が難しい場合の有力な選択肢として、「ダプソン」という薬剤を併用する方法があります。 ダプソンは、もともとハンセン病の治療薬として使われてきた歴史のある薬ですが、強い抗菌作用と抗炎症作用を併せ持っています。

この二つの薬を組み合わせる治療法については、注目すべき症例報告があります。 複数の抗菌薬や外科的治療、さらには高用量のイソトレチノイン単剤療法でも改善しなかった19歳の難治性の患者様に対し、イソトレチノインとダプソンを一緒に投与したところ、わずか4週間で症状が劇的に改善し、寛解(症状が落ち着いた状態)に至ったというのです。

その後、薬の量を減らしながら治療を続けることで、長期間にわたり再発を防ぐことができました。 このように、作用の仕組みが異なる薬を組み合わせることで、それぞれを単独で使うよりも高い相乗効果を引き出すことが期待できます。

特に、イソトレチノインだけでは炎症を十分に抑えきれない患者様にとって、ダプソンとの併用療法は試してみる価値のある治療戦略といえるでしょう。

生物学的製剤(アダリムマブ等)による治療アプローチ

生物学的製剤は、化学的に合成された従来の薬とは異なり、生物が作り出すタンパク質などを応用して作られた薬です。 体内の炎症を引き起こす特定の原因物質に直接働きかけるため、高い治療効果が期待できます。

膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎は、お尻や脇の下に似た症状が出る「化膿性汗腺炎」という病気と、病気の成り立ちに共通点があると考えられています。 そして、この化膿性汗腺炎の治療薬として、日本でも「アダリムマブ(製品名:ヒュミラ)」という生物学的製剤が保険適用となっています。

アダリムマブは、「TNF-α」という体内で炎症を引き起こす中心的な物質の働きをブロックする薬です。 この薬を膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎の患者様に用いることで、しつこい炎症や膿の発生を抑える効果が報告されています。

【生物学的製剤による治療のポイント】

  • 対象となる方
    • 既存の治療法で効果が不十分な中等症から重症の患者様が主な対象です。
  • 投与方法
    • ご自身で注射していただく自己注射(ペン型やシリンジ型)が基本となります。
  • 特徴
    • 炎症を引き起こす原因物質に直接作用するため、高い効果が期待できます。

この治療法は、特に炎症が強く、痛みや腫れがひどい患者様にとって、生活の質を大きく改善させる可能性を秘めています。

TNF-α阻害剤とバリシチニブを組み合わせた最新の症例報告

治療が非常に難しい最重症のケースに対しては、さらに新しい薬剤の組み合わせも試みられています。 その一つが、前述のアダリムマブなどのTNF-α阻害剤と、「バリシチニブ(製品名:オルミエントなど)」というJAK阻害薬を組み合わせる治療法です。

JAK阻害薬は、炎症を引き起こす指令が細胞の中に伝わるのを防ぐ内服薬です。 これにより、さまざまな炎症に関わる物質(サイトカイン)の働きを一度に抑えることができます。

海外では、アダリムマブとイソトレチノインの治療でも効果が不十分だった15歳の重症の患者様が報告されています。 この患者様に対し、イソトレチノインをバリシチニブに切り替えてアダリムマブと併用したところ、9ヶ月後には頭皮の病変がほとんど治癒しました。 さらに、脱毛していた部分にも再び髪の毛が生えてきたという、非常に良好な結果が得られたのです。

このTNF-α阻害剤とJAK阻害薬の組み合わせは、複数のルートから強力に炎症をブロックするものです。 これまで治療が困難であった患者様にとって、新たな希望となる可能性があります。


よくあるご質問(Q&A)

Q1. 併用療法は副作用が強くなりませんか?

A1. 複数の薬を組み合わせることで、それぞれの薬が持つ副作用のリスクを考慮する必要があります。例えば、イソトレチノインには乾燥や肝機能への影響、ダプソンには貧血などの注意点があります。専門医は、それぞれの薬の特性を熟知した上で、患者様の体の状態を定期的な診察や血液検査で慎重に確認しながら、安全に治療を進めていきます。副作用が心配な場合は、遠慮なく医師にご相談ください。

Q2. 生物学的製剤などの新しい治療は、どこの病院でも受けられますか?

A2. 生物学的製剤などの専門的な治療は、使用経験が豊富な医療機関で行われることが一般的です。すべての皮膚科や形成外科で受けられるわけではありません。治療を希望される場合は、まず専門の医師に相談し、治療が可能な医療機関を紹介してもらうか、事前に病院のウェブサイトなどで確認することをおすすめします。


膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎は、根治が難しく、長い付き合いになることも多い病気です。 しかし、治療法は日々進歩しています。一つの治療で諦めるのではなく、さまざまな選択肢があることを知っていただきたいと思います。

当院では、形成外科専門医、美容外科専門医としての豊富な知識と経験に基づき、論文などの科学的根拠を重視した治療を行っています。 患者様一人ひとりの症状や生活に合わせて、外科的治療から薬物療法まで、最適な治療計画を一緒に考えてまいります。 頭皮の症状でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

未来の治療法-光線力学療法(PDT)の可能性

これまでの治療でなかなか改善が見られず、つらい思いをされている方も多いでしょう。 膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎(PCAS)は、治療が難しく再発を繰り返しやすい病気です。

しかし、治療を諦める必要はありません。 ここでは、難治性のPCASに対する新しい治療の選択肢として期待される「光線力学療法(PDT)」について、形成外科専門医の立場からその可能性を詳しく解説します。

未来の治療法-光線力学療法(PDT)の可能性
未来の治療法-光線力学療法(PDT)の可能性

光線力学療法(PDT)とはどのような治療法か

光線力学療法(Photodynamic Therapy: PDT)は、光に反応する特殊な薬(光増感剤)と、特定の波長の光を組み合わせて、病気の原因だけを選択的に破壊する治療法です。

この治療は、PCASと同じ「毛包閉塞症候群」というグループに含まれる、重症のニキビ(集簇性ざ瘡)などでも有効性が報告されており、全く新しい概念の治療というわけではありません。

PDTの仕組みは、以下の3つのステップで成り立っています。

  1. 光増感剤の投与

    • 光に反応する性質を持つ薬剤を、病変部に直接塗るか、注射で投与します。
    • この薬剤は、炎症を起こしている細胞や原因菌に集まりやすい特徴があります。
  2. 特殊な光の照射

    • 薬剤が十分に病変部に集まったタイミングを見計らい、特定の波長の光を照射します。
  3. 原因細胞の選択的破壊

    • 光のエネルギーが薬剤に吸収されると、化学反応が起こります。
    • その結果、細胞を攻撃する作用を持つ「活性酸素」が大量に発生します。
    • この活性酸素が、薬剤が集まっている炎症細胞や細菌だけを狙い撃ちで破壊します。

この治療法の最大の特長は、光を当てた部分だけで反応が起こる点です。 周囲の正常な頭皮や毛根へのダメージを最小限に抑えられるため、治療による傷跡(瘢痕)をできるだけ残したくないと考える形成外科医にとっても、非常に魅力的なアプローチと言えます。

PDTと外科的アプローチを組み合わせた治療効果

PCASは、残念ながら再発を繰り返しやすい慢性的な炎症性の病気です。 そのため、一つの治療法だけでは十分な結果が得られないことも少なくありません。

そこで期待されているのが、PDTと外科的アプローチを組み合わせた治療戦略です。 海外の研究では、この併用療法によって満足のいく結果が得られたことが報告されています。

この併用療法は、それぞれの治療の「良いとこ取り」をするイメージです。 役割分担をすることで、より高い効果を目指します。

治療ステップ目的と役割
1. 外科的アプローチ
(切開排膿、瘻孔掻爬など)
まず、膿が溜まった大きな膿瘍を切開して膿を排出します。
さらに、皮膚の下で交通している膿のトンネル(瘻孔)を丁寧に掻き出し、物理的に炎症の温床をきれいにします。
2. 光線力学療法(PDT)外科処置だけでは取り除けない、目に見えないレベルで残存している炎症細胞や細菌をターゲットにします。
PDTによってこれらの原因を根絶し、再発のリスクを根本から減らすことを目指します。

ある研究では、この併用療法を9人のPCAS患者様に行ったところ、良好な治療結果が得られました。 まず手術で大きな病変を取り除き、その上でPDTによって残った火種を消し去る。 この二段構えの治療が、しつこいPCASをコントロールする鍵となる可能性があります。

PDTのメリット・デメリットと今後の展望

新しい治療を検討する際には、その利点と注意点を正しく理解することが重要です。 PDTには、以下のようなメリットとデメリットが考えられます。

【メリット】

  • 高い選択性
    • 光を照射した範囲だけで作用するため、正常な皮膚組織へのダメージを抑えられます。
  • 繰り返し治療が可能
    • 体への負担が比較的少ないため、必要に応じて治療を繰り返し行えます。
  • 薬剤耐性菌への効果
    • 抗菌薬が効きにくい細菌(薬剤耐性菌)に対しても効果が期待できます。
  • 傷跡の軽減
    • 広範囲にわたる外科的切除を避けられる可能性があり、手術による大きな傷跡を最小限にできる場合があります。

【デメリット】

  • 光線過敏症のリスク
    • 治療後、薬剤が体内に残っている間は、日光に対して皮膚が敏感になります。
    • 一定期間、直射日光を厳重に避けるなどの対策が必須です。
  • 治療中の痛み
    • 光を照射する際に、チクチクとした痛みや熱感を生じることがあります。
  • 効果の限界
    • 光が届きにくい皮膚の非常に深い部分にある病変には、効果が限定的となる可能性があります。
  • 保険適用外
    • 現時点では、PCASに対するPDTは保険適用外の自由診療となることがほとんどです。

今後の展望ですが、残念ながらPCASの治療には、まだ世界的に確立された治療指針(ガイドライン)がありません。 PDTのような新しい治療法の有効性が、今後さらに多くの質の高い研究で証明されれば、将来的に標準的な治療法の一つとして位置づけられる可能性があります。

海外の研究動向と国内での臨床応用の見込み

海外では、PCASや関連疾患である化膿性汗腺炎に対して、PDTの有効性を検証する研究が複数行われており、有望な選択肢として注目が集まっています。

しかし、日本国内において、PCASに対するPDTはまだ広く行われている治療ではありません。 一部の大学病院などで研究的に行われているのが現状で、治療を受けられる施設は非常に限られています。

これには、PCAS自体が比較的稀な疾患であることや、治療法として確立するために、より信頼性の高い大規模な臨床試験のデータ蓄積が必要である、といった背景があります。

私たち形成外科・美容外科の専門医は、このような国内外の最新の研究動向を常に注視しています。 そして、科学的な根拠に基づき、患者様一人ひとりの症状やご希望に合わせて、瘢痕のきれいさといった整容的な側面にも配慮した最適な治療法を提案できるよう努めています。


よくあるご質問(Q&A)

Q1. PDT治療はどのくらい痛いですか?

A1. 光を照射している間に、チクチクとした痛みや熱さを感じることがあります。痛みの感じ方には個人差がありますが、麻酔クリームを塗布したり、冷却装置を併用したりすることで、痛みを和らげながら治療を進めることが可能です。

Q2. 治療後は、すぐに普段通りの生活ができますか?

A2. 治療後は、光線過敏症を防ぐため、数日間から1週間程度は直射日光を厳重に避けていただく必要があります。つばの広い帽子をかぶる、日中の不要な外出を控えるなどの対策が求められます。それ以外の日常生活に大きな制限はありません。

Q3. PDTは誰でも受けられますか?

A3. 光に対してアレルギーのある方(光線過敏症の既往)や、特定の持病をお持ちの方、妊娠中・授乳中の方などは、この治療を受けられない場合があります。治療が可能かどうかは、専門医が診察の上で慎重に判断しますので、まずはご相談ください。


既存の治療法で改善が見られずお悩みの方は、決して諦めないでください。 当院では、形成外科専門医、美容外科専門医としての豊富な知識と経験に基づき、患者様のお話を丁寧に伺い、最新の知見に基づいて今後の治療方針を一緒に考えさせていただきます。 頭皮の症状でお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。

まとめ

今回は、膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎について、診断の重要性から最新の治療法まで解説しました。

この病気で最も大切なのは、自己判断せずに早期に専門医の診断を受けることです。見た目がニキビに似ていても、放置すれば永久的な脱毛や瘢痕につながる可能性があります。

治療は根気がいる場合もありますが、抗菌薬やイソトレチノインだけでなく、生物学的製剤を用いた併用療法や光線力学療法など、選択肢は着実に増えています。決して諦める必要はありません。

頭皮に気になるおできやしこり、治りにくい炎症を見つけたら、一人で悩まず、まずは皮膚科や形成外科など、経験豊富な専門医に相談することから始めましょう。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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