眼科か形成外科か?逆さまつげ手術の保険適用と医師選び
鏡を見るたびの目のゴロゴロ感、もしかして逆さまつげでは?と不安を感じていませんか。逆さまつげは、目に不快感を与えるだけでなく、放置すると視力低下や、最悪の場合失明に至る可能性もある深刻な目の病気です。一言で逆さまつげと言っても、お子様に多い「先天性眼瞼内反症」や、加齢とともに起こる「眼瞼内反症」など、その原因やタイプは多岐にわたります。
例えば、お子様の先天性逆さまつげは成長で自然治癒することもありますが、角膜への傷や乱視、弱視のリスクも指摘されており、適切な判断が不可欠です。この記事では、あなたの逆さまつげがどのタイプにあたるのか、放置した場合の具体的な危険性、手術以外の治療法から、保険適用となる手術の種類、そして後悔しないための信頼できる医師選びのポイントまでを詳しく解説。もう不安に悩まされず、目の健康と快適な毎日を取り戻すための一歩を踏み出しましょう。
見逃さないで!逆さまつげのタイプと危険なサイン
鏡を見るたびに、また目がゴロゴロするたびに、「これって逆さまつげなのかな?」と不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。逆さまつげは、目に不快感をもたらすだけでなく、見え方に影響を及ぼしたり、目の健康を損ねたりすることもある病気です。ご自身の目の状態を正しく知り、適切な時期に専門医に相談することが、快適な毎日を取り戻すための第一歩となります。
形成外科医として多くの患者さんを診てきた経験から、逆さまつげは一見単純な目のトラブルに見えても、その背景には様々なタイプや原因が隠されています。そして、放置すると目に大きなダメージを与えかねません。このセクションでは、逆さまつげの主な種類とその特徴、放置した場合の具体的な危険性、そして年齢層別に異なる対応の考え方について詳しく解説していきます。
逆さまつげの3つの主な種類
「逆さまつげ」と一口に言っても、医学的にはその原因や状態によっていくつかの種類に分類されます。ご自身の目の状態を正しく理解することは、適切な治療へとつながります。大きく分けて、以下の3つのタイプがあります。
- 先天性眼瞼内反症(せんてんせい がんけん ないはんしょう):Congenital Entropion
- 主に小さなお子さんに多く見られるタイプです。特に東アジアの子供に多く見られる特徴があります。
- 下まぶたの皮膚やその下の筋肉が厚く盛り上がっているために、まつげが内側を向いて眼球に触れてしまう状態を指します。
- まぶた自体は内側に反転しておらず、正常な形を保っている点が特徴です。
- 成長とともに顔の骨格や筋肉が発育し、自然に改善することもありますが、まつげが目に触れることで目の表面(角膜)に傷がつきやすくなります。
- 乱視や弱視の一因となる可能性もあるため、注意深く経過を観察することが大切です。

- 睫毛内反症(しょうもう ないはんしょう):Epiblepharon
- まぶたの縁自体は正常な位置にあるにもかかわらず、まつげの生える向きだけが内側に向かってしまい、眼球に触れてしまう状態です。
- 以前の目の炎症や外傷、手術、加齢による毛根の変化など、様々な原因によってまつげの生え方が不規則になることで起こります。
- 特定のまつげだけが内側を向いている場合もあれば、複数本が不規則に生えている場合もあります。
年齢に関わらず発症しますが、高齢の方にもよく見られます。
- 眼瞼内反症(がんけん ないはんしょう):entropion
- まぶたの縁全体が、眼球に向かって内側に反転してしまう状態です。これにより、まぶたのまつげすべてが目にあたってしまうようになります。
- このタイプは、さらに原因によって「加齢性(退行性)」「瘢痕性(はんこんせい)」「痙攣性(けいれんせい)」「先天性」の4つに細かく分類されます。
- 特に加齢に伴って起こる「加齢性眼瞼内反症」は、高齢の方に最も多く見られるタイプであり、形成外科の専門外来でも多くの患者さんがこのタイプで来院されます。

ご自身の逆さまつげがどのタイプにあたるのか、正確な診断のためには、専門知識を持つ医師による診察を受けることが非常に大切です。適切な診断があってこそ、最も効果的な治療法を選択することができます。
放置すると失明も?目の痛みだけじゃない具体的な症状
「少し目がゴロゴロするだけだから…」と、逆さまつげの症状を軽く見て放置してしまうことは、大変危険です。まつげが常に目の表面(角膜)を刺激し続けると、単なる不快感にとどまらず、目の健康に深刻な影響を及ぼし、最悪の場合、視力低下や失明に至る可能性もあります。これは決して大げさな話ではありません。
まつげの刺激によって引き起こされる具体的な症状は、次のようなものがあります。
- 目の痛みや異物感、かゆみ
- まつげが目に触れることによる直接的な刺激が原因です。
- 充血や目やに、流涙(涙が止まらない)
- 刺激によって目の表面に炎症が起きやすくなり、充血や目やにが増えます。
- 異物感から涙の量が増えて、常に目が潤んでいるように見えることもあります。

- 角膜(黒目の表面)の損傷
- 角膜上皮剥離(かくまくじょうひはくり)
- まつげが擦れることで、角膜の最も外側の層が剥がれてしまう状態です。強い痛みを感じ、目に砂が入ったような激しい不快感を伴います。
- 微生物性角膜炎(びせいぶつせいかくまくえん)
- 角膜に傷がついた部分から細菌やウイルスが侵入し、感染症を引き起こすことがあります。
- 感染が進行すると、角膜が白く濁ったり、視力に影響を及ぼしたりする可能性があります。
- 角膜血管新生(かくまくけっかんしんせい)
- 長期にわたる刺激や炎症が続くと、通常は透明な角膜に、血液の供給がないはずの血管が異常に侵入してくることがあります。
- この血管が増えてしまうと、角膜の透明性が失われ、視力低下の直接的な原因となることがあります。
- 角膜混濁(かくまくこんだく)
- 角膜の損傷や炎症が慢性化すると、角膜が白く濁り、透明性が失われてしまいます。
- 一度混濁が起こると、元の透明な状態に戻すことは非常に難しく、視力に恒久的な障害を残す可能性があります。
- 角膜上皮剥離(かくまくじょうひはくり)
- 視力低下
- 上記の角膜の損傷や混濁が進行すると、ものの見え方がぼやけたり、視力が著しく低下したりします。
- 重症化すると、取り返しのつかない視力障害、さらには失明に至る可能性も否定できません。
これらの症状は、日常生活に大きな支障をきたすだけでなく、私たちの生活を豊かにする「視力」という大切な機能を奪ってしまう危険性を秘めています。目の異常を感じたら、「もう少し様子を見よう」と自己判断で放置せず、すぐに眼科や形成外科などの専門医を受診することが重要ですし、それがご自身の目を守る最善の行動と言えます。
小児の逆さまつげはいつ手術すべき?発育との関係性
小さなお子さんの逆さまつげは、主に先天性眼瞼内反症(エピブレファロン)であることが多いです。保護者の方々からよく聞かれるのは、「この子の逆さまつげは、いつ頃手術を受けさせるべきでしょうか?」というご質問です。お子さんの逆さまつげに対する考え方と手術のタイミングは、症状の程度とお子さんの目の成長によって慎重に判断する必要があります。
まず、大切なのは「お子さんが成長するにつれて、自然に治る可能性もある」という点です。中国の学齢期児童を対象とした大規模な研究では、先天性エピブレファロンの有病率が年齢とともに減少することが示されています。具体的には、6歳児で2.50%だったものが12歳児では1.19%まで減少しています。これは、顔の骨格や筋肉の発達とともに、まつげが自然と目から離れていく可能性があるためです。そのため、軽度の場合はすぐに手術せず、定期的な経過観察となることも少なくありません。
しかし、すべてのお子さんが自然に治るわけではありません。形成外科医の視点から、手術の必要性を判断するポイントは以下の通りです。
- 角膜への傷の有無と程度
- 最も重要な判断基準です。まつげが頻繁に角膜に触れて傷がついていたり、感染(角膜炎)を繰り返したりしている場合は、早期の手術を検討する必要があります。
- 重度な角膜損傷がある場合は、早期の手術と並行して視覚リハビリテーションも不可欠となります。
- 乱視や弱視の発症、進行の有無
- まつげが目に触れることによって、目の表面が均一でなくなり、乱視を引き起こすことがあります。
- この乱視が強い場合や、それによって弱視(めがねなどで矯正しても視力が出にくい状態)が進行するリスクがある場合には、年齢が低くても手術が推奨されることがあります。エピブレファロンを持つ児童は、そうでない児童と比較して乱視の有病率と程度が高いことも報告されています。
- お子さんの不快感
- お子さんが目をこする、まぶしがる、頻繁に涙を流すなどの症状を強く訴える場合も、生活の質を考慮し手術を検討する理由となります。
手術のタイミングは、一般的には、お子さんが局所麻酔に協力できる4~5歳以降に行うことが多いです。しかし、重度の角膜損傷や弱視のリスクがある場合は、それよりも早く手術が必要となることもあります。近年、内眼角(目頭)の線維化がエピブレファロンの主要な病理学的特徴の一つと考えられており、この線維化を緩和する手術が良好な結果を示しているという報告もあります。お子さんのデリケートな目を守るためにも、眼科医と形成外科医が連携し、それぞれの専門的な視点からお子さんの状態を評価し、最適な時期を判断することが非常に大切です。
加齢で起こる逆さまつげの主な原因
年齢を重ねるにつれて、「急に目がゴロゴロするようになった」「涙が止まらない」といった症状で逆さまつげに悩まされる方は少なくありません。このような「加齢性眼瞼内反症」は、高齢の方に特に多く見られるタイプです。高齢化社会が進む中で、この加齢性眼瞼内反症の患者さんは増えていく傾向にあります。これはまぶたを支える様々な組織が、加齢とともに緩んだり変化したりすることに原因があります。
形成外科の専門的な視点から見ると、加齢性眼瞼内反症は主に以下の複数の要因が複雑に絡み合って起こると考えられています。
- 下眼瞼牽引筋(かがんけんけんいんきん)の緩みや瞼板(けんばん)との結合のゆるみ
- 下まぶたを眼球に引きつけて、まぶたの形を内側から支えているのが「下眼瞼牽引筋(lowerlid retractors)」です。
- この筋肉や、まぶたの縁をしっかり保つ板状の組織である「瞼板」が、加齢とともに弱くなり、結合が緩んでしまうと、まぶたが不安定になり、内側に反転しやすくなります。
- ある研究では、この筋肉と瞼板の連結が離れる「挙筋離開」が、加齢性眼瞼内反症の患者さんの実に97%に認められたと報告されています。これが主要な原因の一つと言えるでしょう。

- 眼輪筋(がんりんきん)の過剰な働きやたるみ
- まぶたを閉じる役割を持つ筋肉が「眼輪筋」です。
- 加齢によってこの筋肉の一部が過剰に働きすぎたり、筋肉自体が緩んでたるんだりすると、まぶたを内側に押し込む力が強くなり、内反症を引き起こすことがあります。
- この眼輪筋の異常は、加齢性眼瞼内反症の患者さんの89%に見られると報告されています。

- まぶたの水平方向の緩み
- 加齢とともに、まぶた全体を支える組織も弾力性を失い、水平方向(横方向)に緩みが起こります。
- この緩みによってまぶたが不安定になり、少しの力で内側に反転しやすくなります。
- 水平方向のまぶたの弛緩も、患者さんの89%に見られると報告されています。まぶた自体の長さが伸びるわけではありませんが、深部での固定が不良になり、外側の目尻が下方に移動しやすくなることで、まぶたの縁が不安定になります。外直筋帽状瞼板筋という筋肉の菲薄化も、この不安定性に寄与すると考えられています。
- 眼窩陥凹(がんかかんおう)
- 年齢とともに、目の周りの脂肪が減少したり、骨が萎縮したりすることで、眼球が奥に引っ込んでしまう状態を「眼窩陥凹」といいます。
- これにより、まぶたと眼球の間の空間が広がり、まぶたが内反しやすくなることがあります。患者さんの33%に認められました。
- 瞼板の萎縮
- まぶたの縁をしっかり保つ役割を果たす瞼板自体が、加齢により薄く、弱くなることも原因の一つです。患者さんの16%に見られるとされています。
これらの複合的な要因が加齢性眼瞼内反症の原因となります。形成外科専門医は、機能改善だけでなく、見た目の自然さも考慮した治療をご提案できます。
Q&A:逆さまつげに関するよくある質問
Q1:市販の目薬で逆さまつげの症状は改善しますか? A1:市販の目薬は、目の乾燥や炎症を一時的に和らげる効果は期待できますが、逆さまつげそのものの原因を治療することはできません。まつげが目に触れて傷がついている場合は、市販薬では対応しきれないことも多いです。放置すると症状が悪化し、重篤な合併症を引き起こす可能性もあるため、自己判断せずに専門医の診察を受けることを強くお勧めします。
Q2:逆さまつげは遺伝しますか? A2:先天性眼瞼内反症(Congenital Entropion)は、遺伝的な要因が関与している可能性も指摘されています。特に東アジア人に多く見られる特徴の一つです。ただし、必ずしも親から子へ遺伝するわけではなく、発症には複数の要因が関わると考えられています。ご家族に逆さまつげの方がいる場合は、お子さんの目の状態を注意深く観察し、気になる症状があれば早めに専門医にご相談ください。
Q3:逆さまつげは自然に治ることはありますか? A3:小さなお子さんに多い先天性眼瞼内反症(Congenital Entropion)の場合、成長とともに顔の骨格や筋肉が発達し、自然に治癒することがあります。しかし、すべてのケースで自然治癒するわけではありません。まつげが角膜に触れて傷がついていたり、乱視や弱視のリスクがある場合は、積極的な治療が必要となることもあります。加齢による逆さまつげは、自然に治ることはほとんどなく、進行することが多いです。ご自身の判断で「様子見」をせず、専門医にご相談ください。
このように、逆さまつげは単なる不快感ではなく、その種類や原因によって、治療の必要性やタイミングが大きく異なります。特に、目の表面へのダメージが長期にわたると、視力に重大な影響を及ぼす可能性も否定できません。
当クリニックは、形成外科専門医、美容外科専門医として、逆さまつげの機能的な改善はもちろんのこと、術後の見た目の美しさ、自然な仕上がりにも細心の注意を払っています。患者さん一人ひとりの目の状態や生活スタイル、そして将来を見据えた最適な治療プランをご提案いたします。
「もしかして逆さまつげかも?」と少しでも不安を感じたら、まずは一度、専門医にご相談ください。私たちはあなたの目の健康と、快適な毎日をサポートするために、最適な医療を提供することをお約束します。ご予約は、お電話またはウェブサイトからお気軽にお問い合わせください。
逆さまつげの症状でお困りの皆さま、日々の不快感や目の痛みは本当にお辛いことと思います。私たちは、そのつらさを軽減し、より快適な生活を送っていただくためのお手伝いをしたいと心から願っています。逆さまつげの手術は、症状の改善はもちろん、お顔全体の印象を明るくするきっかけにもなります。ご自身の逆さまつげの種類を知り、適切な治療法を選ぶことが大切です。
形成外科専門医として、逆さまつげは単にまつげが目に入るというだけではなく、まぶたの構造自体に原因がある場合も多く見られます。そのため、症状を正確に診断し、その原因に応じた治療法を選択することが非常に重要です。
逆さまつげ手術の種類と保険適用条件5つ
逆さまつげは、その原因や状態によっていくつかの種類に分類されます。これまでの診察経験から、多くの患者さんがご自身のタイプを正確に把握されていないと感じています。適切な治療を受けるためには、まずご自身の逆さまつげがどのタイプに属し、どのような状態であるかを知ることが大切です。
主に保険適用となる可能性のある逆さまつげの種類は、以下の5つに分けられます。
- 睫毛内反症(しょうもうないはんしょう)
- まぶたの形は正常なのに、まつげの生える向きだけが内側に向かっていて、角膜に触れてしまう状態です。
- 特に、お子さまに多く見られる「先天性睫毛内反症」は、下まぶたの縁の皮膚や皮下脂肪が厚く、まつげを押し上げていることで起こります。
- これは東アジアの子どもに多く見られる特徴の一つで、放置すると乱視や弱視につながることもあります。
- そのため、重度の場合には早期の手術が非常に大切だと考えられています(Woo KI et al., 2024)。
- 眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)
- まぶたの縁全体が、眼球側へ反り返ってしまう状態です。
- これにより、すべてのまつげが角膜に触れてしまい、症状が強く出ることが特徴です。
- このタイプは、さらに原因によって次の4つに細かく分類されます。
- 加齢性眼瞼内反症(かれいせいがんけんないはんしょう)
- 加齢とともにまぶたを支える組織、具体的には腱膜や筋肉がゆるむことで起こります。
- まぶたを動かす筋肉が薄くなったり、まぶたを水平に支える力が弱くなったりすることが原因と考えられています(Ayyad Zartasht Khan et al.)。
- まぶたの弛緩や、まぶたを閉じる眼輪筋の過剰な働き、まぶたを上げる挙筋という筋肉の菲薄化などが複雑に関与していることが指摘されています(Chen TY et al., 2025)。
- これは高齢者に最もよく見られるタイプで、放置すると目の不快感だけでなく、角膜に傷がつき、視力が低下する恐れがあります(Pereira MGB et al.)。
- 瘢痕性眼瞼内反症(はんこんせいがんけんないはんしょう)
- やけどや怪我、目の炎症、過去の手術の合併症などによって、まぶたの内側が傷つき、引きつれてしまうことで起こります。
- この状態は、目の炎症や涙の膜が不安定になること、そして視力障害につながる可能性があります(Quaranta Leoni FM et al., 2025)。
- 痙攣性眼瞼内反症(けいれんせいがんけんないはんしょう)
- 目の周りの筋肉(眼輪筋)が異常に強く収縮し続けることで、まぶたが内側に反り返ってしまう状態です。
- これは一時的に起こることもありますが、慢性化することもあります。
- 先天性眼瞼内反症(せんてんせいがんけんないはんしょう)
- 生まれつきまぶたの構造に異常があることで、まぶたが内反している状態です。
- お子さまの成長に伴い自然に改善することもありますが、症状が重い場合は早期の対応が必要となります。
- 加齢性眼瞼内反症(かれいせいがんけんないはんしょう)
これらの症状が日常生活に支障をきたすほどであれば、ほとんどの場合、保険適用で手術が受けられます。形成外科医は、機能改善という医療的な目的はもちろんのこと、手術後のまぶたの見た目の自然さや美しさにも配慮した治療計画をご提案いたします。
手術以外の治療法3つ(点眼・抜毛・コンタクトレンズ)
逆さまつげの症状が軽度であったり、小さなお子さまの場合など、すぐに手術をしない方が良いと判断されるケースでは、手術以外の治療法が選択されることがあります。これらの方法は、あくまで症状を一時的に和らげたり、目の表面(角膜)を保護したりするためのものです。しかし、根本的な解決には至らないことがほとんどであるとご理解ください。
- 点眼薬の使用
- まつげが角膜に触れることで起こる炎症や異物感を和らげるために、抗菌作用や抗炎症作用のある点眼薬が処方されることがあります。
- 目の表面を潤し、まつげの刺激から目を守る目的の点眼薬もあります。
- これは、あくまで「対症療法」と呼ばれ、症状を抑えるためのものです。
- まつげが当たる根本的な原因を取り除くものではないため、点眼で症状が完全に消えるわけではありません。

- 抜毛(ばつもう)
- 角膜に触れている特定のまつげを、専門のピンセットで抜き取る方法です。
- この方法は、ごく少数のまつげだけが目に当たっている場合に、一時的な対処として行われます。
- しかし、抜いたまつげは、また同じ場所から再び生えてきます。
- 生え変わる際に以前よりも太く硬くなってしまい、さらに角膜を傷つける可能性も否定できません。
- ご自身で無理にまつげを抜くと、毛根を傷つけ、感染や炎症を引き起こしたり、さらにはまぶたの形を悪くしたりするリスクがあるため、必ず眼科医で行うようにしてください。
- 治療用コンタクトレンズの装用
- 角膜をまつげの刺激から保護する目的で、特殊なソフトコンタクトレンズを装用することがあります。
- これにより、まつげが直接角膜に触れるのを防ぎ、傷つくのを予防します。
- 特に、お子さまの逆さまつげで、成長とともに自然治癒が期待できる場合や、手術を検討するまでの間の保護策として用いられることがあります。
- ただし、コンタクトレンズは、適切なケアを怠ると感染症のリスクを高めることにもつながります。
- 定期的な診察と清潔な取り扱いが不可欠です。
これらの手術以外の治療法は、一時的な症状緩和には有効ですが、根本的な解決にはなりません。症状が続く場合や悪化する場合には、目の健康を守るためにも、手術的治療を検討することが非常に重要です。
【保険適用】代表的な手術方法と効果
逆さまつげの保険適用手術は、その種類や原因、そして患者さんのまぶたの状態によって様々な方法が選択されます。形成外科医として、私たちは機能改善はもちろん、手術後の見た目の自然さや、患者さんのお顔全体の印象にも配慮した治療をご提案しています。
1. 睫毛内反症(しょうもうないはんしょう)に対する手術
このタイプの手術は、主にまぶたの縁の皮膚や筋肉のたるみを取り除き、まつげの向きを外側に向かせることが目的です。
- 切開法(Hotz(ホッツ)法など)
- まつげの生え際から数ミリのところで皮膚を切開します。
- 余分な皮膚や脂肪、まぶたを閉じる眼輪筋の一部を取り除き、皮膚をまぶたの奥にある硬い組織(瞼板)に縫い付けて固定します。
- この方法により、まつげが角膜に当たらなくなり、目のゴロゴロ感や痛みなどの症状が改善されます。
- 特に、東アジアのお子さまに多い眼瞼内反症の場合、下まぶたに不自然なしわが過度に形成されないよう、皮膚と筋肉の切除量を最小限に抑えることが推奨されています(Woo KI et al., 2024)。
- 効果: 症状の根本的な改善と同時に、多くの場合、自然な二重のラインが形成されることがあります。これは美容面でのメリットにもつながります。

2. 眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)に対する手術
まぶたの構造自体の異常を修正する手術です。特に高齢の方に多い加齢性眼瞼内反症や、目の炎症などによる瘢痕性内反症、感染症による内反症など、原因に応じて複数の手術法が検討されます。
- 加齢性眼瞼内反症の手術
- 加齢によってまぶたを支える組織が緩んだり、まぶたを水平に保つ力が低下したりすることが原因の場合に適用されます。
- まぶたのたるみを改善したり、まぶたの固定を強化したりする手術が用いられます。
- 外側瞼板法(がいそくけんばんほう):まぶたの外側の端にある硬い組織(瞼板)を短縮し、しっかりと固定することで、まぶたの水平方向の弛み(たるみ)を改善します。これは、最も一般的な退行性眼瞼内反症の治療法の一つとされています(Ayyad Zartasht Khan et al.)。
- 下眼瞼牽引筋前転術(かがんけんけんいんきんぜんてんじゅつ):下まぶたを眼球に引きつけて形を保つ筋肉(下眼瞼牽引筋)が緩んでいる場合に、この筋肉を前に引き出して固定することで、まぶたの内反を改善します(Pereira MGB et al.)。
- 眼輪筋移行術(がんりんきんいこうじゅつ):まぶたを閉じる筋肉(眼輪筋)の一部を移動させて固定することで、まぶたを内側に反らせようとする力を抑えます(Pereira MGB et al.)。
- 効果: まつげの刺激がなくなることで、目の不快感が解消され、角膜の傷も改善します。
- 瘢痕性眼瞼内反症の手術
- まぶたの内側が傷つき、引きつれている場合に、引きつれた組織を解除し、正常な位置に戻す手術が行われます。
- ラメラ再配置術(らめらさいはいちじゅつ)やグラフト手術:瘢痕によって収縮した後板(まぶたの裏側の組織)を、新しい組織(移植片)で補うことで、まぶたの形を正常に戻します。
- これにより、まぶたの位置を回復させ、目の表面の乾燥や炎症が和らぎ、目の健康を維持することが期待できます(Quaranta Leoni FM et al., 2025)。
- 効果: まぶたの引きつりが改善し、目の表面の乾燥や炎症が和らぎます。
- トラコーマ性眼瞼内反症の手術
- 感染症であるトラコーマによってまぶたが内反する場合、世界保健機関(WHO)が推奨する手術法として、**後板層瞼板回転術(PLTR)や全層瞼板回転術(BLTR)**があります。
- PLTRの方がBLTRよりも再発率が低いと報告されており、国際的なガイドラインでもこの点が重要視されています(Kempen JH et al., 2025)。
- 効果: 感染症による内反を効果的に治療し、角膜への損傷を防ぎます。
これらの手術は、患者さんの目の状態や原因に合わせて、形成外科専門医が最も適切な方法を慎重に選びます。機能的な改善と同時に、可能な限り自然で美しい仕上がりを目指すのが私たちの専門性です。
【二重整形も可能】美容目的の手術方法と費用
逆さまつげの手術を受けられる患者さんの中には、「できれば二重にもなりたい」というご希望をお持ちの方が少なくありません。形成外科専門医、美容外科専門医(JSAPS)として、私たちは機能改善という医療目的と同時に、患者さんの美容的なご希望にもお応えできるよう、様々な選択肢をご提案しています。
逆さまつげ手術で二重になるメカニズム(保険診療の場合)
逆さまつげの手術(特に切開法)は、まぶたのたるみや余分な皮膚を取り除き、まつげを外側に向かせることが主な目的です。この時、まぶたの皮膚を瞼板という組織に固定する操作を行うことで、結果的に二重のラインが形成されることがあります。これは、まぶたの構造的な問題を改善する過程で自然に生じるものであり、治療目的の手術範囲内で二重になるため、保険適用となります。
- メリット:
- 逆さまつげの症状が根本的に改善されます。
- 治療目的の手術範囲内で二重が形成されるため、費用の負担が少ない点が魅力です。
- まぶたのたるみが取れることで、目元がすっきりとした印象になることもあります。
- 注意点:
- 二重のラインの幅や形は、あくまで治療結果として決まるため、患者さんの希望通りのデザインにはできない場合があります。
- 元々のまぶたの構造によっては、二重になりにくいケースもあります。
- あくまで治療が主目的であることをご理解ください。
美容目的の手術方法と費用(自費診療の場合)
「二重のデザインを細かく選びたい」「よりはっきりとした二重にしたい」といった美容的なご希望が強い場合は、美容目的の自費診療と組み合わせることも可能です。形成外科医、美容外科専門医として、患者さんのご希望とまぶたの状態を総合的に判断し、最適な方法をご提案します。
- 主な美容目的の手術方法:
- 埋没法(まいぼつほう):細い医療用の糸でまぶたの皮膚と瞼板を数カ所留めることで、二重のラインを作ります。切開を伴わないため、ダウンタイムが比較的短く、もしデザインが気に入らない場合でもやり直しがしやすいのが特徴です。
- 切開法(せっかいほう):まぶたを丁寧に切開し、余分な皮膚や脂肪を取り除きながら、半永久的な二重のラインを作ります。逆さまつげの切開手術と同時に行うことで、より理想に近い二重をデザインし、機能と美容の両面を改善できることがあります。

- 費用相場:
- 自費診療の二重整形は、手術方法やクリニックによって費用が大きく異なりますが、一般的には、埋没法で数万円~20万円程度、切開法で20万円~40万円程度が目安となります。
- 逆さまつげの治療と同時に行う場合、保険診療と自費診療を組み合わせた費用となるため、事前のカウンセリングで詳細な見積もりを確認することが非常に重要です。
形成外科医、美容外科専門医は、機能と美容の両面から、患者さんが満足できる結果を得られるよう、丁寧なカウンセリングと確かな技術でサポートいたします。
知っておきたい手術のリスク・合併症と再発対策
どのような手術にも、残念ながらリスクや合併症はつきものです。逆さまつげの手術も例外ではありません。患者さんが安心して治療を受けていただくために、起こりうるリスクや合併症、そして再発への対策について正直にお伝えいたします。
手術に伴う一般的なリスク・合併症
- 腫れや内出血:
- 手術後は一時的にまぶたが腫れたり、目の周りに青あざのような内出血が出たりすることがあります。
- 通常は数日~数週間で自然に引いていくことがほとんどです。
- 痛み:
- 麻酔が切れた後に痛みを感じることがありますが、多くは処方される鎮痛剤でコントロールできる範囲です。
- 感染:
- 非常に稀ではありますが、手術部位が細菌に感染することがあります。
- 適切な抗菌薬の使用や、清潔な環境での手術により、リスクは最小限に抑えられます。
- 左右差:
- 人間の顔は元々左右非対称であるため、手術後にわずかな左右差が生じることがあります。
- 当院では可能な限り自然で、左右差が目立たないよう細心の注意を払って手術を行います。
- 傷跡:
- 切開を伴う手術の場合、傷跡が残ります。
- 形成外科医は目立ちにくい位置を選び、できる限りきれいな傷跡になるよう丁寧に縫合しますが、完全に消えることはありません。
特定の術式に関連するリスク・合併症
まぶたの手術は非常に繊細であり、術式の選択によっては特有のリスクが生じることもあります。
- 眼瞼外反(がんけんがいはん):
- まぶたが外側に反り返ってしまう状態です。
- これは、特に下まぶたの切開手術、例えば骨折治療などで用いられる「睫毛下切開(しょうもうかせっかい)」後に起こりやすい合併症として報告されています(Chen YY et al., 2025)。
- 形成外科では、このようなリスクを避けるため、まぶたの構造を熟知した上で、適切な術式や切開方法を慎重に選択しています。
- 強膜露出(きょうまくろしゅつ):
- 通常はまぶたに隠れている白目の部分が、必要以上に多く見えてしまう状態です。
- これも眼瞼外反と関連して起こることがあります(Chen YY et al., 2025)。
- 眼瞼内反(がんけんないはん):
- まぶたが内側に反り返ってしまうことです。
- 骨折治療などで用いられる「経結膜切開(けいけつまくせっかい)」(まぶたの裏側から切開する方法)後に、眼瞼内反のリスクが高まることが指摘されていますが(Chen YY et al., 2025)、これは特殊な手術の場合です。
- 逆さまつげの手術では、このリスクを最小限に抑えるよう配慮します。
- 不自然な二重のライン:
- 美容目的で二重形成も兼ねる場合、患者さんの希望と異なるデザインになる、あるいは不自然に見えるといった可能性があります。
- カウンセリングで十分にシミュレーションし、ご希望に沿ったデザインを目指します。
再発対策
逆さまつげは、残念ながら手術後も再発する可能性がゼロではありません。特に、加齢性眼瞼内反症の場合、加齢とともにまぶたを支える組織がさらに緩むことで、再び内反してしまうことがあります(Chen TY et al., 2025)。また、目の炎症や外傷による瘢痕性内反症も、原因となる病態の進行や炎症が続くことで再発することがあります(Quaranta Leoni FM et al., 2025)。
再発のリスクを低減するためには、以下の点が非常に重要です。
- 適切な術式の選択:
- 患者さんの逆さまつげの種類、原因、重症度を正確に診断し、最も適切な手術方法を選ぶことが再発防止の第一歩です。
- 例えば、感染症であるトラコーマ性眼瞼内反症では、「後板層瞼板回転術(PLTR)」の方が「全層瞼板回転術(BLTR)」よりも再発率が低いと報告されています(Kempen JH et al., 2025)。
Posterior Lamellar Tarsal Rotation: PLTR
- 経験豊富な医師による手術:
- まぶたの手術は非常に繊細であり、ミリ単位の調整が必要です。
- 形成外科専門医や美容外科専門医は、まぶたの解剖学的知識と豊富な経験に基づき、再発しにくい丁寧な手術を心がけています。
- 術後の適切なケア:
- 医師の指示に従い、処方された点眼薬の使用や、目をこすらないなどの術後ケアをしっかり行うことが大切です。
- 定期的な経過観察:
- 術後も定期的に診察を受け、再発の兆候がないかを確認することが重要です。
- 早期に発見できれば、軽微な処置で対応できる場合もあります。
私たちは、これらのリスクや再発の可能性についても丁寧に説明し、患者さんが納得して治療を受けていただけるよう努めています。
術後の経過とダウンタイムの目安
逆さまつげの手術を受けられた後、「どんな経過をたどるの?」「どれくらいで日常生活に戻れるの?」といった疑問や不安をお持ちになるのは当然のことです。ここでは、術後の一般的な経過と、ダウンタイムの目安について詳しくご説明します。患者さんが安心して術後を過ごせるよう、具体的なイメージを持っていただければ幸いです。
術後すぐの一般的な経過
手術直後は、麻酔の影響でまぶたが少しぼんやりしたり、感覚が鈍くなったりすることがあります。また、目の周りにガーゼや眼帯をすることがあります。
- 痛み:
- 麻酔が切れると、ズキズキとした痛みを感じることがありますが、多くの場合、処方される痛み止めを服用することで我慢できる程度のものです。
- 腫れ:
- まぶたは必ず腫れます。
- 手術の範囲や個人の体質によって異なりますが、特に術後2~3日が腫れのピークとなることが多いです。
- 時間の経過とともに徐々に引いていきます。
- 内出血:
- まぶたや目の周りに、青あざのような内出血が出ることがあります。
- これも通常は1~2週間で黄色っぽく変化しながら、徐々に吸収されていきます。
- 異物感:
- まつげが当たっていた時とは異なる、縫い目の突っ張り感や異物感を一時的に感じることがあります。
- これは傷が治癒していく過程で生じるもので、徐々に慣れていきます。
- 視界の変化:
- 腫れにより、一時的に視界が狭く感じられたり、かすんだりすることがありますが、腫れが引くとともに改善していきます。
ダウンタイムの目安
ダウンタイムとは、手術を受けてから日常生活に支障がなくなり、おおよその回復が見られるまでの期間を指します。逆さまつげの手術では、術式や個人の回復力によって異なりますが、以下の期間が一般的な目安となります。
- 抜糸(ばっし):
- 通常、手術から1週間程度で抜糸を行います。
- 抜糸をするまでは、入浴や洗顔、メイクにいくつかの制限があります。
- 仕事・学業:
- デスクワークなど、目を使わない軽作業であれば、手術翌日から可能ですが、腫れや内出血が気になる場合は、数日~1週間程度お休みを取ることをお勧めします。
- 特に接客業など人前に出るお仕事の場合は、腫れが落ち着くまで1~2週間程度は見た目に配慮が必要です。
- 入浴・洗顔・洗髪:
- 手術当日はシャワー浴程度に留め、湯船に浸かるのは控えてください。
- 傷口を濡らさないよう、顔を避けて洗髪することは可能です。
- 抜糸までは、傷口を直接濡らしての洗顔は避けて、濡れタオルなどで優しく拭き取る程度にしてください。
- 抜糸後は、石鹸を泡立てて優しく洗顔し、シャワーや入浴も可能になりますが、しばらくは傷口を強くこすらないよう注意が必要です。
- メイク:
- 目の周りのメイクは、抜糸が終わり、傷口が完全に塞がってから可能になります。
- 通常、抜糸後2~3日経ってから、様子を見ながら開始してください。
- 運動:
- 激しい運動や飲酒は、血行を良くして腫れや内出血を悪化させる可能性があるため、術後1週間程度は避けてください。
- 軽いウォーキング程度であれば、体調と相談しながら可能です。
- コンタクトレンズ:
- コンタクトレンズの装用は、まぶたへの負担や感染のリスクを考慮し、術後1ヶ月程度は控えていただくことが多いです。
- この期間はメガネを使用してください。
術後の注意点
- 指示された点眼薬・内服薬の使用:
- 感染予防や炎症を抑えるために、処方された点眼薬や内服薬は、医師の指示通りに正しく使用してください。
- 冷却:
- 術後の腫れを抑えるために、手術直後から数日間、濡らしたタオルなどで優しく冷やすと効果的です。
- 目をこすらない:
- 傷口をこすると、治りが遅くなったり、感染の原因になったりすることがあります。
- 無意識に目をこすらないよう、特に就寝中は注意してください。
- 定期的な診察:
- 術後の経過を確認するため、指定された日に必ず受診してください。
- 何かご心配なことがあれば、次回の診察を待たずにいつでも遠慮なくクリニックにご連絡ください。
患者さん一人ひとりの回復には個人差があります。私たちは、患者さんが安心して術後を過ごせるよう、丁寧なサポートを心がけています。
後悔しない!信頼できる医師・クリニック選びのポイント5つ
逆さまつげの症状は、目にとって大きな不快感や負担となるものです。ひどくなると日常生活に支障をきたし、大切な目の健康を損なうことも少なくありません。形成外科専門医として、私たちは多くの患者さんの苦痛を目の当たりにしてきました。適切な治療を受けることで、目の健康を取り戻し、より快適な日々を送ることが可能になります。
しかし、手術を検討する際、「どのクリニックを選べば良いのか」「どのような医師に任せれば安心なのか」といった疑問や不安を抱える患者さんは非常に多くいらっしゃいます。ご自身の目の健康と、手術後の見た目の満足度を左右する大切な選択だからこそ、後悔のないよう、信頼できる医師とクリニックを見つけるためのポイントをしっかりと押さえていきましょう。
眼科と形成外科の専門性の違い
逆さまつげの手術は、眼科と形成外科のどちらでも行われることがあります。それぞれの専門性には違いがあり、患者さんが求める結果や目の状態によって、どちらの科がより適しているかを判断することが大切です。
眼科の専門性
- 眼科は、目の機能や病気の診断、治療を専門とする科です。
- 逆さまつげによって角膜が傷ついたり、感染症が起こったりするのを防ぐことに重点を置きます。
- 目の痛みや異物感、充血などの症状を和らげ、眼球そのものの健康を守ることを最優先に治療を行います。
- 視力検査や眼圧測定など、目の機能に関する検査に長けています。

形成外科の専門性
- 形成外科は、身体の表面に生じた変形や欠損を、機能的・整容的に改善することを専門とする科です。
- まぶたの形や見た目の改善、そして自然な機能の回復に力を入れます。
- 逆さまつげの手術では、まぶたの構造を解剖学的に理解し、機能改善だけでなく整容性にも配慮した手術を得意とします。
- 例えば、まぶたの裏側から切開する「経結膜切開」と、まつげの生え際あたりを切開する「睫毛下切開」では、それぞれ異なる眼瞼合併症のリスクがあります。
- 睫毛下切開は、まぶたが外側に反り返る「眼瞼外反(がんけんがいはん)」や、白目が通常より多く見える「強膜露出」、そして目立つ傷跡のリスクが有意に高いことが報告されています(Chen YY et al., 2025)。
- 一方、経結膜切開では、まぶたが内側に反り返る「眼瞼内反(がんけんないはん)」のリスクが高まることがあります(Chen YY et al., 2025)。
- 形成外科医は、これらの術式ごとのリスクを熟知し、機能改善と同時に見た目のバランスも考慮して、患者さん一人ひとりに最適な方法をご提案します。
- 特に加齢によって起こる「退行性眼瞼内反症」のような、まぶた全体の構造的な緩みが原因で起こる逆さまつげの治療には、まぶたの形態を整える形成外科の専門性が生かされます(Ayyad Zartasht Khan et al.)。

患者さんご自身の症状や、どのような結果を期待するかによって、どちらの専門医を選ぶべきか、よく考えてみましょう。形成外科では、機能的な改善と同時に、お顔全体のバランスや自然な仕上がりにも配慮した治療を目指します。
失敗しないための医師選びのコツ
逆さまつげの手術は、まぶたという非常にデリケートな部位を扱うため、医師の技術や経験が結果を大きく左右します。失敗しないために、以下の点を参考に医師を選びましょう。
専門医の資格と経験
- 眼科専門医、または形成外科専門医や日本美容外科学会(JSAPS)認定の美容外科専門医といった専門資格を持っているかを確認しましょう。
- 特に形成外科専門医や美容外科専門医は、まぶたの解剖学的構造を熟知しており、見た目の美しさにも配慮した手術を行う訓練を受けています。
- 逆さまつげ手術の症例数が豊富であるか、特にご自身の逆さまつげのタイプ(例えば、お子さんに多い先天性、高齢者に多い加齢性、傷跡による瘢痕性など)の治療経験が豊富であるかどうかも重要なポイントです。
- 複雑な症例、例えば炎症や過去の損傷によってまぶたの内側が引きつれる「瘢痕性眼瞼内反症」の場合、まぶたの裏側の組織(後板)の収縮が原因であることが多く、適切な治療のためには、経験豊富な医師による正確な診断と「ラメラ再配置術」や「グラフト手術(移植手術)」といった専門的なアプローチが必要になります(Quaranta Leoni FM et al., 2025)。
- このような難しい状態にも対応できる知識と技術を持つ医師を選ぶことが、治療の成功には不可欠です。
丁寧なカウンセリング
- 患者さんの疑問や不安に対して、専門用語を避け、わかりやすく説明してくれる医師を選びましょう。
- 治療のメリット・デメリット、起こりうるリスク、合併症についてもしっかりと説明し、患者さんの納得を得た上で治療計画を立ててくれる医師は信頼できます。
- 「加齢性眼瞼内反症」は最も一般的なタイプであり、多くの場合「外側瞼板法(まぶたの外側を固定する手術)」などの治療が用いられます(Ayyad Zartasht Khan et al.)。
- ご自身の逆さまつげがどのタイプにあたるのか、なぜその術式が最適なのか、詳細な説明があるかを確認しましょう。
術後のアフターフォロー体制
- 手術後の経過観察や、万が一の合併症に対するサポート体制が整っているかを確認しましょう。
- 不安な時にいつでも相談できる環境があることも大切です。
手術費用を抑える医療費控除や高額療養費制度
逆さまつげの手術費用は、保険適用となる場合と自費診療となる場合があります。目の健康を損なう機能的な問題が原因であると医師が判断すれば、多くの場合、保険が適用されます。しかし、それでも自己負担額が気になる患者さんもいらっしゃるでしょう。そのような場合に利用できるのが、医療費控除や高額療養費制度です。
医療費控除
- 年間を通して支払った医療費が一定額(一般的には10万円)を超えた場合、確定申告をすることで所得税から控除される制度です。
- ご自身だけでなく、生計を一つにするご家族の医療費も合算して申告できます。
- 逆さまつげの手術費用だけでなく、他の病気の治療費や通院費なども含まれるため、医療費の合計額が10万円を超えそうであれば、領収書を保管しておきましょう。
高額療養費制度
- ひと月の医療費の自己負担額が、年齢や所得に応じた上限額を超えた場合、その超えた分が払い戻される制度です。
- 例えば、ひと月の自己負担額が非常に高額になったとしても、この制度を利用すれば、上限額以上の支払いは不要になります。
- 事前に健康保険組合などに申請することで、窓口での支払いを上限額までに抑えることも可能です。
これらの制度を利用することで、経済的な負担を大きく軽減できる可能性があります。具体的な手続きや申請方法については、加入している健康保険組合や、最寄りの税務署、またはクリニックの受付で相談してみてください。
術後に注意すべき日常生活の過ごし方
逆さまつげの手術後、まぶたがスムーズに回復し、良い状態を保つためには、術後の過ごし方が非常に大切です。手術を無事に終えても、しばらくは注意が必要な時期があります。
ダウンタイムの理解と安静
- 手術後は、まぶたが腫れたり、内出血が出たりする期間があります。
- これをダウンタイムと呼び、個人差はありますが、一般的には数日〜1週間程度で大きな腫れは引いていきます。
- この期間は無理をせず、できるだけ安静に過ごすことが回復を早める上で重要です。
冷却と清潔な状態の維持
- 術後数日間は、保冷剤などで目元を優しく冷やすと、腫れを和らげるのに役立ちます。
- また、手術部位を清潔に保つことも大切ですが、医師の指示に従い、感染症を防ぐためのケアを怠らないようにしましょう。
入浴・洗顔・メイク・コンタクトレンズの制限
- 医師の指示に従い、一定期間は入浴や洗顔、メイクを控える必要があります。
- 特に、まぶたに水が入らないよう注意し、処方された点眼薬などを適切に使用しましょう。
- コンタクトレンズの使用も、感染のリスクを避けるため、制限されることが多いです。
運動や飲酒の制限
- 血行が良くなることで腫れが悪化する可能性があるため、しばらくの間は激しい運動や飲酒を控えるよう指示されることがあります。
「エントロピオン(眼瞼内反症)を放置すると、目の不快感、角膜剥離、微生物性角膜炎、角膜血管新生、視力低下といった重篤な合併症を引き起こす可能性があります」と報告されているように、逆さまつげは目の健康に大きなリスクをもたらします(Mario Genilhu Bomfim Pereira et al.)。手術はこれらのリスクを回避するために行われますが、術後のケアが不十分だと、感染症などの新たな問題が生じる可能性もあります。そのため、術後の過ごし方は非常に重要です。少しでも異常を感じたり、心配なことがあれば、すぐにクリニックへ連絡し、指示を仰ぎましょう。
手術を受ける前のカウンセリングで確認すべきこと
逆さまつげの手術を受ける前に、医師とのカウンセリングで疑問や不安を解消し、納得した上で治療に臨むことが大切です。形成外科専門医、美容外科専門医(JSAPS)として、私たちは患者さんが安心して治療に専念できるよう、十分な説明と話し合いの時間を設けています。以下のポイントを参考に、積極的に質問してみましょう。
手術方法の詳細と選択肢
- ご自身の逆さまつげの種類や状態に最適な手術方法は何か、具体的な手術の手順、それぞれの方法のメリット・デメリット、リスクについて詳しく説明を求めましょう。
- 例えば、加齢性の眼瞼内反症では、「外側瞼板法」や「下眼瞼牽引筋前進術」などが有効な手術法として挙げられます(Mario Genilhu Bomfim Pereira et al.)。
- また、骨折治療などで用いられるまぶたの切開方法の選択一つとっても、「睫毛下切開」は眼瞼外反や強膜露出、目立つ瘢痕のリスクが高いのに対し、「経結膜切開」は眼瞼内反のリスクが高いことが示されています(Chen YY et al., 2025)。
- 形成外科医は、これらのリスクを考慮しながら、目の機能と見た目の両方にとって最善の術式を選択します。
- 「瘢痕性眼瞼内反症」のように、炎症や医原性損傷でまぶたの内側が収縮している場合は、傷ついた組織を新しい組織で補う「ラメラ再配置術」や「グラフト手術(移植手術)」が最適な治療法となることもあります(Quaranta Leoni FM et al., 2025)。
費用の明確化
- 保険適用の可否、自己負担額、追加でかかる可能性のある費用(薬代、術後検診費など)を事前に明確に確認しましょう。
- 費用の総額や支払い方法についても、事前に確認しておくことが大切です。
術後の経過とダウンタイム
- 手術後、どのくらいの期間で腫れが引くのか、痛みはどの程度か、日常生活に戻れるまでの目安など、具体的な術後の経過について質問しましょう。
- これにより、仕事や学業、家庭の予定を立てやすくなります。
合併症や再発のリスクと対策
- 感染症や左右差、ドライアイなどの合併症のリスク、そして手術後の再発の可能性や、万が一再発した場合の再手術の方針についても確認しましょう。
- 特に、瘢痕性眼瞼内反症の場合、原因となる病態の進行や炎症が続くことで再発のリスクがあるため、その対策についても話し合うことが重要です(Quaranta Leoni FM et al., 2025)。
- リスクを理解した上で治療を受けることが、患者さん自身の安心につながります。
二重の仕上がりと美容的な希望
- 「二重になりたい」という美容目的がある場合は、その希望を具体的に医師に伝えましょう。
- 術後の二重のラインや見た目について、具体的なイメージを共有し、不自然にならないか、左右差が出ないか、希望するデザインが可能かなどを確認してください。
- 形成外科専門医、美容外科専門医(JSAPS)は、機能的な改善と同時に、患者さんが満足できる美容的な結果も追求します。
これらの質問を通して、医師との信頼関係を築き、納得した上で治療に進むことが、満足のいく結果を得るための第一歩となります。
逆さまつげの症状は、目にとって大きな負担となるだけでなく、見た目にも影響を与えることがあります。適切な治療を受けることで、これらの悩みから解放され、より快適な生活を送ることが可能になります。当クリニックは、形成外科専門医、美容外科専門医(JSAPS)としての豊富な知識と経験に基づき、目の健康と美しさの両面に配慮した逆さまつげ手術を行っております。患者さん一人ひとりの目の状態やご希望に合わせた丁寧なカウンセリングと、最適な治療計画をご提案いたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。
Q&A
Q1: 逆さまつげ手術はどのくらいの期間入院が必要ですか? A1: 逆さまつげの手術は、ほとんどの場合、日帰りで行うことができます。入院の必要はありませんが、術後に安静に過ごす期間や、定期的な通院での経過観察は必要となります。
Q2: 手術後すぐに仕事に戻れますか? A2: 手術の種類や患者さんの回復状況、仕事の内容にもよりますが、まぶたの腫れや内出血が引くまでのダウンタイムには個人差があります。通常、術後数日から1週間程度は、目元に負担がかからないように注意が必要です。デスクワークなど、目を使わない軽作業であれば可能かもしれませんが、手術前に医師とよく相談し、仕事復帰のタイミングを決めましょう。
Q3: 手術で二重になった場合、見た目は自然ですか? A3: 形成外科専門医、美容外科専門医(JSAPS)は、まぶたの自然な構造を理解し、見た目の美しさにも配慮した手術を行います。カウンセリングで患者さんの希望を詳しく伺い、不自然にならないような二重のライン形成を目指します。術後の仕上がりのイメージについて、事前に医師とよく話し合い、不安な点を解消しておくことが大切です。
Q4: 子どもの逆さまつげ手術はいつ頃が良いですか? A4: 子どもの逆さまつげは、成長とともに自然に治るケースもあります。しかし、まつげが角膜に傷をつけてしまったり、視力の発達に影響が出る可能性があったりする場合には、早期の手術が検討されることもあります。手術の適切な時期は、お子さんの目の症状の程度や成長の状況によって異なりますので、専門医による診断と相談が必要です。
Q5: 手術後の傷跡はどのくらい目立ちますか? A5: 形成外科医は、傷跡が目立ちにくい位置を選び、できる限りきれいな傷跡になるよう丁寧に縫合します。手術直後は赤みや硬さが残ることがありますが、時間の経過とともに徐々に薄くなり、数ヶ月から1年程度でほとんど目立たなくなります。ただし、完全に消えることはありません。当クリニックでは、術後の傷跡ケアについても丁寧にアドバイスいたします。
まとめ
逆さまつげは、目に不快感をもたらすだけでなく、放置すると角膜を傷つけ視力にも影響を及ぼす病気です。お子さまから高齢者までタイプや原因は様々なので、ご自身の状態に合った適切な治療を選ぶことが大切です。
手術を検討する際は、機能改善を重視する眼科か、見た目にも配慮する形成外科か、専門性を理解し、信頼できる医師とクリニックを選びましょう。保険適用、手術内容、費用、リスク、術後ケアまで、十分なカウンセリングで確認してくださいね。
「眼科か形成外科か?」「逆さまつげかも?」と不安を感じたら、一人で悩まず専門医に相談し、快適な毎日を取り戻すための一歩を踏み出しましょう。
参考文献
- Custer PL. “Observations on the Etiology of Involutional Entropion.” Ophthalmic plastic and reconstructive surgery 41, no. 4 (2025): 365-371.
- Quaranta Leoni FM, Marabottini N, Iuliano A, Strianese D and Savino G. “Eyelid Malpositions and Ocular Surface Disease: Clinical Correlations and Management Strategies.” Journal of clinical medicine 14, no. 23 (2025): .
- Chen YY, Lai YJ, Chen TY and Yen YF. “Eyelid Complications in Subciliary Versus Transconjunctival Approaches to Orbital and Zygomaticofacial Fractures: A Meta-Analysis.” Journal of clinical medicine 14, no. 18 (2025): .
- Outcomes of posterior lamellar tarsal rotation vs bilamellar tarsal rotation for trachomatous trichiasis