【医師が解説】ピアスが痛い・膿んで腫れた…放置したらどうなる?予防方法は?

ピアスを開けた後の痛みや腫れ。「よくあること」だと自己判断で放置していませんか。しかし、その些細なサインが、耳の変形やケロイドといった、取り返しのつかないトラブルの始まりかもしれません。医学論文では、ピアスの感染が命に関わる敗血症に至る危険性も報告されています。
「トラブルは軟骨ピアスでしょ?」と思いがちですが、ある調査では合併症が最も多いのは、意外にも「耳たぶ」であるという統計結果も出ています。その原因は、あなたの体質やピアスの素材にあるのかもしれません。
この記事では、形成外科専門医の監修のもと、科学的根拠に基づき、重症化させないための正しい対処法から安全なピアスの選び方までを徹底解説します。大切な体を守るため、ご自身の状況と照らし合わせながらご覧ください。
論文が示すピアストラブルの現実。その症状、放置は危険です
(監修:形成外科専門医・美容外科専門医 Re:Birth Clinic Nagoya 河之口大輔)
ピアスを開けた後の痛みや腫れ、膿などの症状は「よくあること」と思っていませんか。しかし、ピアスによるトラブルは決して珍しくなく、多くの医学論文でその危険性が報告されています。
軽い炎症だと自己判断で放置してしまうと、感染が深刻化したり、ケロイドという目立つ傷跡が残ったりする可能性があります。実際に、ピアスに関連する合併症は、局所的な感染症から、命に関わる敗血症、アレルギー反応、耳の変形まで多岐にわたることが指摘されています。
一度悪化したピアスホールのトラブルは自然に治りにくくなるケースも少なくありません。異変を感じたら「そのうち治るだろう」と楽観視せず、早めに専門家へ相談することが極めて重要です。

耳の軟骨ピアスは要注意!耳介軟骨膜炎による耳の変形リスク
耳たぶと比べて、耳の上部にある軟骨部分へのピアスは特に注意が必要です。この部位は皮膚の下にすぐ軟骨があり、血流が乏しいという特徴があります。
血液は、細菌と戦う免疫細胞や抗生物質を運ぶ役割を担っています。そのため、血流が乏しい軟骨は一度細菌に感染すると、抵抗力が弱く、薬も届きにくいため重症化しやすいのです。
特に深刻な合併症が「耳介軟骨膜炎(じかいなんこつまくえん)」です。これは軟骨を覆い、栄養を与えている軟骨膜が炎症を起こす病気です。炎症が進むと軟骨そのものが破壊され、耳が大きく変形してしまうリスクがあります。
海外の論文では、軟骨ピアスによる感染が耳の崩壊につながった事例も報告されています。その再建には、自分の肋骨から軟骨を移植するような大掛かりな手術が必要になることもあるのです。
【耳介軟骨膜炎を疑う危険なサイン】
- ピアスの周りだけでなく、耳全体がパンパンに腫れて熱を持っている
- ズキズキと脈打つような強い痛みが続く
- 耳の形が明らかに崩れてきた、またはシワが寄ったように見える
軟骨部分のトラブルは、見た目の問題だけでなく治療も困難になりがちです。少しでも「おかしい」と感じたら、自己判断で様子を見ずに、すぐに当院のような専門の医療機関を受診してください。
局所感染から全身へ。蜂窩織炎や敗血症に至る可能性
「ピアスの小さな傷だから」と軽く考えるのは非常に危険です。ピアスホールの感染は、最初は局所的ですが、放置すると細菌が体の深部や全身へと広がり、重篤な状態に至る可能性があります。
感染が皮膚の深い層(皮下組織)まで広がると「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」という状態になります。耳全体から首にかけて広範囲が赤く硬く腫れあがり、高熱や強い痛みを伴います。
さらに、細菌が血液の中に入り込んで全身を巡ってしまうと「敗血症(はいけつしょう)」という、命に関わる状態に陥ることも稀ではありません。実際に、耳のピアスが原因で敗血症に至ったという報告も医学論文でなされています。
【全身への感染を疑うべき症状】
- 38度以上の高熱や、悪寒・震えがある
- 耳の痛みや腫れに加え、強い倦怠感や関節痛がある
- 耳の周りだけでなく、首のリンパ節(耳の下や顎の下あたり)まで腫れて痛む
これらの症状が見られる場合は、ただの化膿ではありません。細菌が全身に広がり始めているサインであり、一刻も早く医療機関を受診する必要があります。
耳たぶの裂傷や埋没など、感染以外に起こりうる多様な合併症
ピアスのトラブルは、細菌感染だけではありません。物理的な原因によって起こる合併症も数多く報告されています。代表的なものに「ピアスの埋没」と「耳垂裂(じすいれつ)」があります。
ピアスの埋没 キャッチをきつく締めすぎたり、就寝中に耳を圧迫したりすることで、ピアスのヘッドやキャッチが皮膚の中に埋もれてしまう状態です。一度埋没すると自力で取り出すのは困難で、多くの場合、局所麻酔をして皮膚を少し切開する処置が必要になります。
耳垂裂(ピアス裂傷) 重いピアスを長期間つけ続けたり、衣類や髪にピアスを引っかけてしまったりすることで、ピアスホールから耳の縁までが裂けてしまう状態です。裂けてしまった耳たぶは自然には元に戻らず、修復するには手術が必要となります。
これらの他にも、ピアスの金属によるアレルギー性接触皮膚炎や、しこり(粉瘤・アテローム)など、様々な合併症が起こりえます。感染以外のトラブルであっても、無理に自分で対処しようとせず、まずは専門医にご相談ください。
特に小児・青年期にピアストラブルが多い理由と予防策
海外の研究では、特に10代の小児・青年期はピアスの合併症が起こりやすい年代であることが指摘されています。これには、いくつかの明確な理由が考えられます。
【小児・青年期にトラブルが多い理由】
不衛生な環境でのピアッシング 友人同士で安全ピンを使ったり、滅菌されていない器具で開けたりするなど、衛生管理が不十分なケースが後を絶ちません。
ピアッサーによる組織へのダメージ バネ式のピアッサーは、組織を「押し潰す」ように穴を開けます。そのため、医療用の針(ニードル)で開けるよりも組織へのダメージが大きく、炎症リスクを高めることが分かっています。
不適切なアフターケア 消毒のしすぎで皮膚のバリア機能を壊してしまったり、逆に全くケアをしなかったりと、正しい知識がないまま自己流のケアをして悪化させてしまうことがあります。
活動的な生活習慣 体育の授業や部活動、着替えの際などにピアスを引っかける機会が多く、物理的なトラブルのリスクが高まります。
これらのリスクを避けるためには、予防が何よりも重要です。
Q. 子供がピアスを開けたいと言っています。何に気をつければ良いですか? A. まず、ピアスを開けることには、今回解説したような様々なリスクが伴うことを親子でしっかりと話し合うことが大切です。その上で開ける場合は、必ず衛生管理が徹底された医療機関を選んでください。
医療機関であれば、滅菌された器具で安全に施術を行うのはもちろん、金属アレルギーの有無の確認や、正しいアフターケアの指導も受けられます。万が一トラブルが起きた際も、すぐに対応できるため安心です。当院でも安全なピアッシングを行っておりますので、お気軽にご相談ください。
(監修:形成外科専門医・美容外科専門医)
ピアスの膿・腫れは体質が原因?ケロイド・金属アレルギーとの関係
ピアスホールのトラブルがなかなか治らない、あるいは何度も繰り返すことはありませんか。その場合、日々のケアだけでなく、ご自身の「体質」が関係しているかもしれません。
ピアスによる合併症は、細菌感染だけではありません。医学論文でも、特定の金属に反応する「金属アレルギー」や、傷跡が赤く盛り上がる「ケロイド」などが繰り返し報告されています。
これらの体質が原因の場合、自己判断でのケアだけでは改善は困難です。むしろ症状を悪化させる危険性も少なくありません。安全にピアスを楽しむためには、まずご自身の体質を正しく理解し、適切な対策をとることが大切です。

繰り返すトラブルは金属アレルギーかも?疑うべきサインと対処法
特定のピアスをつけた時だけ、かゆみや赤み、じゅくじゅくした液体が出ませんか。もし心当たりがあれば、それは「金属アレルギー」による接触皮膚炎のサインかもしれません。
金属アレルギーは、汗などでピアスから溶け出したごく微量の金属イオンが原因です。この金属イオンが体内のタンパク質と結合し、それを異物だと体が認識することでアレルギー反応が起こります。
【金属アレルギーを疑うサイン】
- 特定のピアスで悪化 特定の素材のピアスをつけた時だけ、症状が現れたり悪化したりする。
- 強いかゆみと赤み ピアスホールやその周りが赤く腫れ、我慢できないほどのかゆみがある。
- じゅくじゅくした浸出液 ホールから透明、または黄色の液体が出てきて、ティッシュなどにつき続ける。
- 汗による悪化 運動などで汗をかいた後に、かゆみや赤みがひどくなる。
アレルギーの原因になりやすい金属は、ニッケル、コバルト、クロムが代表的です。これらは安価なアクセサリーのメッキ下地などに使われていることが多いため注意が必要です。
対処法の基本は、まず原因と思われるピアスの使用をすぐに中止することです。そして、皮膚科や形成外科を受診し、どの金属が原因かを特定する「パッチテスト」を受けることをお勧めします。
パッチテストは、原因と思われる金属の試薬を背中などに貼り、皮膚の反応を見る検査です。原因が特定できれば、その金属を避けることで今後のトラブルを予防できます。治療ではステロイドの塗り薬や、かゆみを抑える抗アレルギー薬の飲み薬を使います。ホールが塞がらないよう、医療用のシリコンチューブを一時的に入れる処置も可能です。気になる症状があれば、お気軽に当院までご相談ください。
Q. 今まで平気だったのに、急に金属アレルギーになることはありますか? A. はい、あります。花粉症と同じように、金属アレルギーもある日突然発症します。汗などで溶け出した金属イオンが体内に少しずつ蓄積され、体の許容量を超えた時にアレルギー反応として症状が現れるためです。
あなたはケロイド体質?医師が教える見分け方と注意点
ピアスホールが治る過程で、傷口が赤く硬く盛り上がり、元のホールの範囲を超えて大きくなってしまった場合、「ケロイド」の可能性があります。
ケロイドは、傷を修復しようとする体の働きが過剰になり、コラーゲンが異常に増え続けることで発生する良性の腫瘍です。特に、ケロイドになりやすい「ケロイド体質」の方がピアスを開けると、発症リスクが高まります。
【もしかして?ケロイド体質セルフチェック】
- 過去の傷跡 けが、手術、ニキビなどの跡が、ミミズ腫れのように赤く盛り上がっている。
- BCG(ハンコ注射)の跡 腕にあるBCGの跡が、今も赤くはっきりと膨らんでいる。
- ご家族の体質 ご両親や兄弟姉妹に、ケロイド体質の方がいる。
- できやすい部位 胸、肩、上腕、あごなどにできた傷跡が盛り上がりやすい。
これらの項目に当てはまる方は、ケロイド体質の可能性があります。ケロイド体質の方が安易にピアスを開けることは、耳にケロイドを作ってしまうリスクがあるため、慎重な判断が必要です。
一度できてしまったケロイドは自然に治ることはほとんどありません。治療にはステロイドの注射やテープ、飲み薬、手術などが必要になります。しかし、治療をしても再発しやすいため、専門医による長期的な管理が不可欠です。ピアスを開ける前に、ご自身の傷の治り方を確認し、少しでも不安な方は当院のような形成外科へご相談ください。
統計で見る合併症の発生部位。耳たぶが最も多いという事実
「ピアスのトラブルは軟骨のほうが危険」というイメージがあるかもしれません。しかし、実際の臨床データは少し異なる様相を示しています。
海外のある研究では、耳のピアスによる合併症で治療を受けた75名の患者さんを調査しました。その結果、合併症が起きた部位で最も多かったのは、意外にも「耳たぶ」であったと報告されています。耳輪(耳のフチの軟骨部)の合併症と比較しても、耳たぶのトラブルは統計的に有意に多いという結果でした(P < 0.001)。
この研究で、耳たぶに特に多かった合併症は「外傷性裂傷」と「ケロイド形成」です。
【なぜ耳たぶのトラブルが多いのか?】
- ピアッシング人口の多さ 耳たぶは最もピアスを開ける人が多い部位のため、母数が大きく、トラブルの件数も多くなります。
- 物理的な負担 ファッション性の高い、重さのあるピアスや、衣類に引っかかりやすいデザインのピアスを着ける機会が多く、耳たぶが裂けるリスクが高まります。
ボディピアスの普及に伴い、関連する合併症も増加傾向にあると指摘されています。この事実からも、たとえ定番の耳たぶであっても決して油断はできません。適切なケアと、次に解説する安全な素材選びがいかに重要であるかがわかります。
トラブルを未然に防ぐための安全なピアスの素材選び
ピアストラブルを未然に防ぐ上で、ピアスの「素材」選びは極めて重要です。特に金属アレルギーのリスクを避けるためには、アレルギー反応を起こしにくい素材を選ぶ必要があります。
ファーストピアスはもちろん、ホールが安定した後のセカンドピアスも、素材に配慮することで安全性が大きく向上します。
| 素材の種類 | 安全性の目安 | 特徴と注意点 |
|---|---|---|
| 【安全性が高いとされる素材】 | ||
| チタン | ◎ | 医療用インプラントにも使われる金属です。アレルギーを非常に起こしにくく、軽くて丈夫です。 |
| サージカルステンレス(316L) | ○ | 医療用メスにも使われる素材です。アレルギーは起こしにくいですが、ごく微量のニッケルを含むため、重度のアレルギーの方は注意が必要です。 |
| 樹脂・セラミック | ◎ | 金属を一切含まないため、金属アレルギーの方でも安心して使用できます。ただし、表面に傷がつきやすく、汚れが溜まりやすい側面もあります。 |
| 【注意が必要な素材】 | ||
| ニッケル・コバルト・クロム | × | 金属アレルギーの3大原因金属です。安価なアクセサリーに含まれていることが多いので注意しましょう。 |
| メッキ製品 | × | 汗や傷で表面のメッキが剥がれ、下地のニッケルなどが溶け出すリスクが高い素材です。 |
「ニッケルフリー」と表示されていても、他の金属でアレルギーを起こす可能性はゼロではありません。ご自身の体質がわからない方や、安全性を第一に考える方は、まずはチタン製のものを選ぶと良いでしょう。当院では、アレルギーのリスクが極めて低い医療用のチタンピアスをご用意しておりますので、素材選びに迷う方はお気軽にご相談ください。
(監修:形成外科専門医・美容外科専門医 Re:Birth Clinic Nagoya 河之口大輔)
重症化させないための予防医学と最新治療の選択肢
ピアスのおしゃれを楽しみたいという気持ちとは裏腹に、トラブルが起きると不安になりますよね。「このまま治らなかったらどうしよう」「跡が残るかもしれない」と心配は尽きません。
しかし、ピアスのトラブルは正しい知識を持つことで重症化を防ぐことが可能です。大切なのは、トラブルが起きる前の「予防」と、起きてしまった後の「適切な治療」です。
ここでは予防医学の観点から、トラブルを未然に防ぐ方法を解説します。万が一重症化した場合の専門的な治療法についても、形成外科専門医が詳しくお伝えします。

感染症を防ぐ最も重要な要素。安全なクリニック選びと滅菌処置
ピアスの穴あけは、体に傷をつける行為であり、医療行為に準ずるものです。そのため、最も注意すべきなのが細菌感染のリスクです。不衛生な環境や器具で穴あけを行うと、細菌が侵入し感染症を引き起こします。
ピアスによる最も一般的な感染症は、皮膚の深い部分が赤く腫れる「蜂窩織炎」です。しかし、これを放置すると、細菌が血液に入り全身に回ることもあります。海外の論文では、心臓の弁に細菌が付着する「心内膜炎」など、命に関わる状態に至る危険性も報告されています。
このような事態を防ぐため、施術場所の衛生管理が極めて重要です。安全な場所を選ぶ際は、以下の点を確認しましょう。
【安全な施術場所選びのチェックリスト】
- 医療用の滅菌器(オートクレーブ)を使用しているか 使用する器具を完全に滅菌できる高温高圧蒸気滅菌器の有無は必須です。
- 針や手袋が使い捨て(ディスポーザブル)か 針はもちろん、施術者が使う手袋なども、一人ひとり新しいものを使っているか確認しましょう。
- 衛生管理について丁寧に説明してくれるか 施術前のカウンセリングで、衛生管理に関する質問に誠実に答えてくれるかは信頼の指標になります。
- 施術者の経験と知識が豊富か 耳の解剖学的な知識を持ち、万が一のトラブル対応についても熟知している施術者を選びましょう。
近年のボディピアスの普及に伴い、関連する合併症の増加が指摘されています。施術を受ける方自身が、潜在的なリスクについて十分な情報提供を受けることが、安全なピアッシングの第一歩です。
ピアッサーは非推奨?医療機関でのピアス穴あけを勧める理由
手軽さから市販のピアッサーを自分で使ったり、友人に開けてもらったりする方もいます。しかし、医学的な観点からはピアッサーの使用は推奨できません。
ピアッサーは、バネの力で針を押し込み、組織を「挫滅(ざめつ)」させます。これは組織を押し潰しながら穴を開けるため、細胞に大きなダメージを与えます。傷ついた組織は血流が悪くなり、炎症や感染のリスクを高めてしまうのです。
一方、医療機関では滅菌された鋭利な医療用ニードルを使用します。組織をきれいに切り開くことで、ダメージを最小限に抑え、安定しやすいホールを作ることが可能です。
Q. なぜ医療機関での穴あけが良いのですか? A. 医療機関には、市販のピアッサーにはない多くの利点があるからです。
| 比較項目 | 医療機関 | 市販のピアッサー |
|---|---|---|
| 衛生管理 | 医療用の滅菌器具を使用し、徹底されている | 個人での管理となり、不十分な場合が多い |
| 組織へのダメージ | 鋭利なニードルで組織をきれいに切り開くため、ダメージが少ない | 鈍い針で組織を押し潰すため、ダメージが大きい |
| トラブル対応 | 感染やアレルギーが起きても、すぐに適切な治療を受けられる | 自己判断での対処となり、悪化させる可能性がある |
| 事前相談 | 金属アレルギーやケロイド体質の有無を相談できる | 相談できず、後からトラブルになることがある |
安全におしゃれを楽しむためにも、ピアスホールを開ける際はぜひ専門の医療機関にご相談ください。当院では、衛生管理を徹底し、患者様一人ひとりの体質に合わせた安全な施術を心がけております。
治療後のピアスホールを綺麗に保つための専門的ケア
一度トラブルが起きたピアスホールは、治癒した後も非常にデリケートな状態です。綺麗なホールを維持し、再発を防ぐためには、日々の正しいケアが欠かせません。
基本は「清潔」と「保湿」ですが、消毒のしすぎは禁物です。過度な消毒は、皮膚を守る良い菌(常在菌)まで殺してしまい、かえって感染しやすい環境を作ってしまいます。
【基本的なデイリーケア】
- 洗浄 1日1回、入浴時に低刺激性の石鹸をよく泡立て、優しく洗います。
- すすぎ 石鹸成分が残らないよう、ぬるま湯のシャワーで十分に洗い流します。
- 乾燥 清潔なタオルで、水分を優しく押さえるように拭き取ります。
もし感染してしまった場合は、医療機関での専門的な治療が必要です。治療では抗生物質の投与に加え、ピアスホールが塞がるのを防ぐ処置を行います。
具体的には「シリコンチューブ」をホールに留置することがあります。これは、傷ついたホールを安静に保ちながら、膿を外に出す通り道を確保する重要な処置です(ドレナージ効果)。自己判断でピアスを外すと、出口が塞がり膿が内部に溜まって悪化する可能性があります。
重度の変形に対する再建手術という選択肢(肋軟骨移植など)
特に耳の上部(軟骨部)のピアスは、感染が重症化しやすい部位です。軟骨は血流が乏しいため、一度感染すると薬が届きにくく、治りにくい特徴があります。
感染が軟骨を覆う膜に及ぶと「軟骨膜炎」となり、最悪の場合、軟骨が溶けて耳が崩れるように変形してしまうこともあります。海外の医学論文では、上耳のピアス感染が耳の崩壊につながり、その再建がいかに困難であるかが報告されています。
また、重いピアスによる耳たぶの裂傷(耳垂裂)や、大きくなったケロイドも自然には元に戻りません。
Q. 耳が変形してしまったら、もう治らないのですか? A. いいえ、形成外科の専門的な手術によって形を修復することが可能です。
変形した耳に対しては、状態に応じて以下のような再建手術を行います。
- ピアス裂傷の手術 裂けてしまった耳たぶを、傷跡が目立たないように丁寧に縫い合わせます。
- ケロイド摘出手術 ケロイドを切除し、耳の形を整えます。術後の再発予防治療も併用します。
- 軟骨移植 感染で失われた軟骨の代わりに、ご自身の肋骨から軟骨(肋軟骨)を採取します。その軟骨を耳の形に彫刻し、皮膚の下に移植して耳のフレームを再建する高度な手術です。
これらの治療は可能ですが、体への負担や傷跡が残る可能性もあります。何よりも、ここまで重症化させないための予防と早期治療が最も大切です。当院では、形成外科・美容外科の専門医がピアスの穴あけから、万が一のトラブル治療、専門的な再建手術まで一貫して対応しています。少しでも不安なことがあれば、自己判断せずにお早めにご相談ください。
まとめ
今回は、ピアスが痛む原因から、膿や腫れが起きた際の対処法、そして重症化させないための予防策まで詳しく解説しました。
ピアスのトラブルは「よくあること」と軽く考えられがちですが、その裏には感染症や金属アレルギー、ケロイド体質など様々な原因が隠れている可能性があります。最も大切なのは、異変を感じた時に「そのうち治るだろう」と自己判断で放置せず、できるだけ早く専門の医療機関を受診することです。
重症化する前に適切な治療を受ければ、きれいに治すことができます。安全におしゃれを長く楽しむためにも、少しでも不安なことがあれば、一人で悩まず、お気軽に専門医へご相談くださいね。
参考文献
- Cicchetti S, Skillman J, Gault DT. Piercing the upper ear: a simple infection, a difficult reconstruction.
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- Fijałkowska M, Kasielska A, Antoszewski B, et al. Variety of complications after auricle piercing.
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- Conte S, Kamali K, Muncey-Buckley M, Abbas K, Sabljic T, Mukovozov IM, et al. Complications of Body Piercings: A Systematic Review.
- Preslar D, Borger J. Body Piercing Infections – PubMed.