名古屋市「新瑞橋」美容外科・美容皮膚科・形成外科・一般皮膚科

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皮膚科医が語るコレクチム・モイゼルト・プロトピックの選び方

アトピー性皮膚炎の治療で処方されるコレクチム、モイゼルト、プロトピック。ステロイドとは違うこれらの薬について、「どれが自分に一番合っているの?」「一体どうして効くの?」と疑問に思ったことはありませんか。同じ非ステロイド薬でも、実は作用の仕組みから効果の現れ方、得意な部位まで、それぞれに大きな違いがあります。

この記事では、皮膚科医がそれぞれの薬のメカニズムを深掘りし、最新の科学的根拠(エビデンス)に基づいて最適な選び方を解説します。例えば、近年行われた約4万3千人分もの膨大なデータを分析した研究では、ある特定の薬の優れた効果が改めて示されました。

ご自身の症状やライフスタイルに本当に合った薬はどれなのか。この記事を読めば、治療への納得感が深まり、漠然とした不安が安心に変わるはずです。あなたにとっての「最適解」を一緒に見つけていきましょう。

作用機序の深層へ なぜこれらの薬が効くのか

アトピー性皮膚炎の治療で塗り薬をお使いになる際、「この薬は、なぜ効くのだろう?」と疑問に思ったことはありませんか。

コレクチム軟膏、モイゼルト軟膏、プロトピック軟膏は、いずれもステロイドとは異なる仕組みで炎症を抑える「非ステロイド外用薬」です。しかし、その作用の仕方はそれぞれに独自の特徴があります。

薬が体の中でどのように働き、つらい症状を和らげるのか。そのメカニズムを深く理解することは、治療への安心感と納得感につながります。ここでは、それぞれの薬が持つ作用について、皮膚科専門医の視点から分かりやすく解説します。

作用機序の深層へ なぜこれらの薬が効くのか
作用機序の深層へ なぜこれらの薬が効くのか

JAK阻害薬(コレクチム・モイゼルト)が炎症を抑える仕組み

近年登場したコレクチム軟膏とモイゼルト軟膏は、細胞内の「情報伝達システム」に働きかける新しいタイプのお薬です。

コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)の仕組み

アトピー性皮膚炎の皮膚では、炎症やかゆみを引き起こす「サイトカイン」という情報伝達物質が過剰に働いています。コレクチム軟膏は、このサイトカインからの指令を細胞内に伝える「JAK(ジャヌスキナーゼ)」という酵素の働きを妨害します。

  • JAKの役割とは  細胞の外からの「炎症を起こせ」「かゆみを出せ」という指令を、細胞の中に伝える中継役を担っています。

  • コレクチム軟膏の作用  この中継役であるJAKの働きを止めることで、炎症やかゆみの指令が細胞の中に伝わるのを防ぎます。

特にコレクチム軟膏の有効成分デルゴシチニブは、JAKファミリー(JAK1、JAK2、JAK3、Tyk2)を網羅的に阻害します。これにより、アトピー性皮膚炎に関わる様々なサイトカイン(IL-4、IL-13、IL-31など)の働きを幅広く抑え、皮膚の炎症やかゆみを改善に導きます。

モイゼルト軟膏(ジファミラスト)の仕組み

モイゼルト軟膏は「PDE4阻害薬」という種類に分類されます。コレクチム軟膏とは異なるアプローチで炎症を抑えます。

  • PDE4の役割とは  炎症を抑える働きを持つ「cAMP」という物質を分解してしまう酵素です。いわば、炎症のブレーキを弱める働きをします。

  • モイゼルト軟膏の作用  このPDE4の働きを邪魔することで、細胞内のcAMP濃度を高めます。ブレーキ役であるcAMPが分解されずに増えることで、炎症を引き起こすサイトカインの産生が抑制され、皮膚の炎症が和らぎます。

薬剤名(成分名)分類作用ターゲット作用の仕組み
コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)JAK阻害薬JAK(ジャヌスキナーゼ)炎症・かゆみの指令を出すサイトカインの「中継役」をブロック
モイゼルト軟膏(ジファミラスト)PDE4阻害薬PDE4炎症を抑える物質(cAMP)が分解されるのを防ぎ、「ブレーキ役」を強化

免疫抑制剤タクロリムス(プロトピック)の起源と特異性

プロトピック軟膏(有効成分:タクロリムス)は、長年にわたりアトピー性皮膚炎治療で使われてきた実績のある薬です。その起源は、意外なところにあります。

タクロリムスの起源

タクロリムスは、筑波山の土壌から発見された細菌が作り出す物質で、もともとは臓器移植の際に起こる拒絶反応を抑えるための免疫抑制剤として開発されました。

生命維持に不可欠な医療現場でその有効性と安全性が確立された成分であり、免疫の働きを強力に抑える作用があることから、免疫が過剰に反応して起こるアトピー性皮膚炎の治療にも応用されたのです。

プロトピック軟膏の仕組み

プロトピック軟膏は、免疫細胞の一種である「Tリンパ球」の働きを抑えることで効果を発揮します。

  • Tリンパ球の役割  免疫の司令塔として機能しますが、過剰に活性化すると炎症を引き起こすサイトカインを大量に放出します。

  • プロトピック軟膏の作用  Tリンパ球が活性化するために必要な「カルシニューリン」という酵素の働きをブロックします。

これにより、Tリンパ球の過剰な働きが抑えられ、アトピー性皮膚炎の根本にある免疫の異常な反応を鎮めることができます。また、プロトピック軟膏の成分は分子が大きいため、正常な皮膚からは吸収されにくく、バリア機能が壊れた炎症部位から選択的に吸収されるという特異性も持っています。

最新の臨床試験データから読み解く3剤の有効性

アトピー性皮膚炎の治療は近年目覚ましく進歩しており、生物学的製剤や経口JAK阻害薬など、効果の高い全身療法も登場しています。外用薬においても、これらの薬剤の効果を比較する研究が行われています。

ある報告では、顔の症状がある患者さんを対象に、プロトピック軟膏、コレクチム軟膏、モイゼルト軟膏、そして中程度の強さのステロイド外用薬の効果を比較しました。

  • 効果の傾向  個人差は大きいものの、プロトピック軟膏は効果がはっきりと現れるケースで優れた結果を示す傾向がありました。

  • 効果の発現速度  コレクチム軟膏とモイゼルト軟膏は、ステロイドやプロトピック軟膏に比べて、効果を実感できるまでに少し時間がかかることがあります。

  • 薬剤間の比較  コレクチム軟膏とモイゼルト軟膏の効果は、ほぼ同程度と評価されました。

これらの結果は、どの薬が一番優れているかを示すものではありません。患者さん一人ひとりの症状や部位、そして薬との相性によって最適な選択は異なることを示唆しています。

世界初承認の背景 日本の医療における意義

コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)は、日本で創製され、2020年に世界に先駆けてアトピー性皮膚炎の治療薬として承認された、世界初の「外用JAK阻害薬」です。この事実は、日本の医療において非常に大きな意義を持っています。

新たな治療選択肢の登場

これまでアトピー性皮膚炎の塗り薬は、ステロイド外用薬とプロトピック軟膏が中心でした。コレクチム軟膏やモイゼルト軟膏の登場により、治療の選択肢が大きく広がりました。

  • ステロイドの長期使用に不安がある方
  • プロトピックの刺激感が苦手な方
  • これまでの治療で十分な効果が得られなかった方

上記のような、様々な患者さんのニーズに応えられる可能性が生まれました。

日本発のイノベーションと今後の展望

日本で開発された薬が世界で初めて承認されたことは、日本の創薬研究の高さを世界に示す出来事です。

さらに、この外用JAK阻害薬は、アトピー性皮膚炎だけでなく、円形脱毛症や慢性手湿疹など、他の皮膚疾患への応用も期待されており、今後の展開が注目されています。


Q&A

Q. コレクチム軟膏は、なぜかゆみに直接働きかけるのですか? A. かゆみを引き起こす情報伝達物質の指令を、細胞の中で中継する「JAK」という役割の働きを直接ブロックするためです。指令が伝わらなくなることで、しつこいかゆみが和らぎます。

Q. プロトピック軟膏はなぜ炎症のひどい場所にだけ効くのですか? A. プロトピック軟膏の有効成分は粒子が比較的大きいため、皮膚のバリア機能が正常な健康な皮膚からはほとんど吸収されません。一方で、炎症を起こしてバリアが壊れている部分からはよく吸収されるため、効率的に効果を発揮します。

Q. どの薬が自分に合うか、どうすれば分かりますか? A. 薬の効果や副作用の出方には個人差があり、症状の出ている場所や生活スタイルによっても最適な薬は異なります。ご自身の判断で薬を選んだり変更したりせず、まずは専門の医師にご相談ください。当院では、形成外科専門医・美容外科専門医が、患者様一人ひとりのお肌の状態を丁寧に診察し、最適な治療プランをご提案いたします。ぜひお気軽にご相談ください。

最新エビデンスで選ぶ治療薬の最適解

この記事は形成外科専門医・美容外科専門医(JSAPS)の監修のもと作成しています。

アトピー性皮膚炎の治療薬には、様々な選択肢があります。 「どの薬が自分に一番合っているのだろう?」と、迷いや不安を感じる方も多いのではないでしょうか。

医師は、患者さん一人ひとりの症状や生活に合わせて薬を選びます。 その際、世界中で行われている最新の研究結果(エビデンス)を常に参考にしています。

科学的な根拠に基づき、これらの治療薬がどのように評価され、選択されているのか。 その背景を知ることは、ご自身の治療への理解を深め、安心して治療に臨む助けとなります。

最新エビデンスで選ぶ治療薬の最適解
最新エビデンスで選ぶ治療薬の最適解

ネットワークメタ解析が示すタクロリムスの実力

治療薬の効果を客観的に比較するために、「ネットワークメタ解析」という研究手法が役立ちます。 これは、数多くの臨床試験の結果を統計学的に統合し、様々な薬の効果を間接的に比較する信頼性の高い方法です。

2023年に発表された大規模な解析では、219件の研究、約4万3千人分もの膨大なデータが分析されました。 この結果、タクロリムス軟膏(プロトピック)が、アトピー性皮膚炎の様々な症状に対し、高い改善効果を持つことが改めて示されたのです。

【ネットワークメタ解析で示されたタクロリムスの効果】

  • 皮膚炎の重症度の改善  赤みや腫れといった皮膚の症状を和らげます。
  • かゆみの軽減  つらいかゆみを抑える効果が確認されています。
  • 睡眠の質の向上  夜間のかゆみが減ることで、ぐっすり眠れるようになります。
  • 生活の質(QOL)の改善  症状が和らぐことで、日中の活動や精神的な安定につながります。

この研究では、タクロリムスは中等度の強さのステロイド外用薬と同等の効果が期待できると結論づけられています。 また、症状が良くなった状態を維持する効果も高く、重篤な副作用のリスクを大きく増加させなかった点も重要なポイントです。


Q&A:ネットワークメタ解析って、普通の研究と何が違うのですか?

A. 多くの研究結果を統計的に統合する点が大きな違いです。 個別の研究だけでは見えにくい、治療薬全体の中での位置づけが分かります。 例えば、A薬とB薬を直接比較した研究がなくても、「A薬と偽薬」「B薬と偽薬」の比較研究が多数あれば、それらを統合してA薬とB薬の効果を間接的に比べることができます。 より信頼性の高い結論を導き出せるため、診療ガイドライン作成などにも活用される手法です。

デルゴシチニブ(コレクチム)の慢性手湿疹への応用と展望

コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)は、アトピー性皮膚炎で広く使われています。 そして今、その効果は他の皮膚疾患へも応用され始めています。 特に注目されているのが、水仕事などで悪化しやすい「慢性手湿疹」への効果です。

2024年、欧州医薬品庁(EMA)は中等症から重症の慢性手湿疹に対し、コレクチム軟膏を承認しました。 これは、DELTA 1、DELTA 2試験と呼ばれる大規模な臨床試験で、その有効性と安全性が確認されたためです。

【臨床試験で確認されたコレクチムの効果】

  • 有効性  16週間の使用で、偽薬(有効成分の入っていない軟膏)に比べ、手の湿疹症状(赤み、ただれ、痛み、かゆみ)を有意に改善しました。
  • 安全性  副作用の発生率は偽薬を使ったグループと同程度でした。  報告された副作用のほとんどが軽度であり、長期的な使用でも安全性が高いことが示されています。

この結果は、従来の治療で十分な効果が得られなかった慢性手湿疹の患者さんにとって、コレクチム軟膏が新たな希望となる可能性を示しています。


Q&A:アトピーでもらったコレクチム軟膏を、手湿疹に使ってもいいですか?

A. 日本国内では、現在コレクチム軟膏の保険適用はアトピー性皮膚炎のみです。 ご自身の判断で他の部位や症状に使用することは絶対に避けてください。 必ず医師に相談し、症状に合った適切な治療を受けることが大切です。 当院では、お一人ひとりの症状を丁寧に診察し、最適な治療法をご提案します。

全身療法(注射薬など)と外用薬の併用・使い分け

アトピー性皮膚炎の治療は、塗り薬(外用薬)が基本です。 しかし、症状が重く、塗り薬だけではコントロールが難しい場合もあります。 そのような時には、体の内側から炎症を抑える「全身療法」を検討します。

治療法役割主な薬剤例
外用療法(塗り薬)皮膚の局所的な炎症を直接抑える(外からのアプローチ)ステロイド、プロトピック、コレクチム、モイゼルトなど
全身療法体全体の免疫の働きを調整する(内からのアプローチ)デュピクセント(注射薬)、リンヴォック(飲み薬)など

大切なのは、全身療法を始めても、外用療法は継続するということです。 「外からの治療」と「内からの治療」を組み合わせることで、相乗効果が生まれ、より効果的に症状をコントロールできるようになります。

まずは外用療法でしっかりと治療を行い、効果が不十分な場合に全身療法を追加するのが一般的です。 それぞれの治療の長所を活かし、患者さんに合わせた治療計画を立てていきます。


Q&A:注射の治療を始めたら、塗り薬は減らせますか?

A. はい、多くの場合、全身療法によって皮膚の状態が大きく改善します。 そのため、塗り薬を使う量や回数を減らせる可能性があります。 ただし、良い状態を維持し、再発を防ぐためには、医師の指示に従って塗り薬を継続することが非常に重要です。 自己判断で中止せず、必ず医師と相談しながら調整していきましょう。

論文から見る長期使用における安全性プロファイル

新しい薬を長く使い続けることに、ご心配を感じる方もいらっしゃるでしょう。 プロトピック、コレクチム、モイゼルトは、ステロイド外用薬でみられるような「皮膚が薄くなる」「血管が浮き出る」といった副作用のリスクが低いという特徴があります。

近年の論文や臨床試験でも、その安全性が裏付けられています。

  • タクロリムス(プロトピック)  先述のネットワークメタ解析では、症状を改善する一方で、重篤な有害事象を増やさないことが示されています。
  • デルゴシチニブ(コレクチム)  慢性手湿疹の試験では、16週間の使用で良好な忍容性(にんようせい:副作用が少なく、治療を続けやすいこと)が確認されました。

これらの科学的データは、医師が安心して薬を処方し、患者さんが治療を続ける上での大きな支えとなります。 もちろん、どのような薬でも副作用のリスクはゼロではありません。 だからこそ、定期的に診察を受け、皮膚の状態を医師に確認してもらうことが大切です。 ご自身の症状や治療に関する不安な点は、どんな些細なことでも、当院の専門医にご相談ください。

個別化治療を実現する薬物動態と処方の工夫

同じアトピー性皮膚炎でも、薬の効果の感じ方は人それぞれです。 「とても効いた」という方もいれば、「あまり変化がない」と感じる方もいます。

この違いは、薬が体の中でどう作用するかという「薬物動態」に個人差があるためです。 薬物動態とは、薬の吸収、分布、代謝、排泄という一連の流れを指します。

ここでは、プロトピック軟膏、コレクチム軟膏、モイゼルト軟膏について解説します。 医師が薬の体内での動きをどう考え、処方を工夫しているのかを具体的にお伝えします。

個別化治療を実現する薬物動態と処方の工夫
個別化治療を実現する薬物動態と処方の工夫

プロトピック(タクロリムス)の血中濃度と個人差の理由

プロトピック軟膏は高い効果が期待できる一方、効き方には個人差が出やすい薬です。 これは有効成分「タクロリムス」の吸収や代謝(分解)のされ方に違いがあるためです。

タクロリムスはもともと内服薬として使われ、その薬物動態には大きな個人差があることが知られています。 外用薬でも同様に、効き方には体質や皮膚の状態が大きく関わってきます。

個人差が生まれる主な要因

要因具体的な内容
皮膚の状態炎症が強くバリア機能が壊れた皮膚からは吸収されやすくなります。重症な方ほど吸収量が増え、血中濃度も上がる傾向があります。
塗る部位顔や首など皮膚が薄い部位は、体の他の部位より吸収率が高くなります。
遺伝的な体質薬を分解する肝臓の酵素(CYP3A4など)の働きに個人差があります。分解が速い方もいれば、ゆっくりな方もいます。
併用薬一部の飲み薬はタクロリムスの分解速度に影響を与えることがあります。

タクロリムスは効果が期待できる範囲(治療域)が狭いという特徴があります。 そのため、吸収されすぎても、されなさすぎても、望ましい効果が得られません。 医師はこれらの要因を総合的に判断し、安全で効果的な治療を目指します。


Q&A:プロトピックを塗ると、血液中にどれくらい薬が入りますか?

A.  指示された量を守って正しく使用する限り、全身に影響が出るほど血中濃度が高くなることはまれです。しかし、特に乳幼児や重症の方、広範囲に塗る場合は注意が必要です。安全のため、1回あたりの使用量に上限が設けられています。

代謝速度を考慮した効果的なタクロリムス処方とは

タクロリムスの効果を最大限に引き出す鍵は、「代謝速度」の考慮にあります。 代謝速度とは、体が薬を分解するスピードのことです。

内服薬の治療では、血中濃度を測定し、投与量で割った「C/D比」で代謝速度を評価します。 外用薬では毎回採血はしませんが、医師は以下の点で患者さんの代謝タイプを推測します。

  • 効果が表れるまでの時間
  • 副作用(ヒリヒリ感など)の出やすさ
  • 症状の改善度合い

これらの観察から、一人ひとりに合わせた処方の微調整を行っていきます。

具体的な処方の工夫

  • 濃度と使用部位の調整  プロトピックには0.1%(成人用)と0.03%(小児用)があります。皮膚が薄い顔には、成人でも刺激を和らげるため0.03%から始めることがあります。

  • 刺激感への対応  使い始めのヒリヒリ感は、薬が効いているサインでもあります。しかし、つらい場合は以下の方法で和らげることが可能です。

    • 保湿剤を塗った上から重ねて塗る
    • 冷蔵庫で冷やしてから塗る
    • ごく狭い範囲から試してみる
  • 用法・用量の個別指導  代謝がゆっくりな方(薬が効きやすい方)には、塗る回数を減らすなどの調整を行います。自己判断で量を変えず、必ず医師に相談してください。

治療効果を高め、副作用を抑えるには、医師との密な連携が不可欠です。 当院では、患者様一人ひとりの状態に合わせた丁寧な処方調整を心がけております。

外用JAK阻害薬の全身への影響はどの程度か

コレクチム軟膏やモイゼルト軟膏は、比較的新しいタイプの塗り薬です。 これらの薬の全身への影響について、ご心配される方もいらっしゃるかもしれません。

結論として、これらの薬は皮膚の局所で作用するよう設計されています。 そのため、全身への影響は少ないと考えられています。

  • 皮膚の中での作用  コレクチムは「JAK」、モイゼルトは「PDE4」という、炎症の信号伝達に関わる特定の物質をピンポイントでブロックします。

  • 全身への吸収と安全性  皮膚から吸収はされますが、全身に影響するほどの血中濃度にはなりにくいよう開発されています。例えばモイゼルトは、臨床試験で2歳以上の小児に対しても良好な安全性が確認されています。

プロトピックが免疫細胞の働きを広く抑えるのに対し、新しい薬は炎症に関わる特定の経路だけを狙い撃ちにするイメージです。 もちろん、医師から指示された用法・用量を守ることが大前提となります。


Q&A:コレクチムやモイゼルトにも、プロトピックのような刺激感はありますか?

A.  一般的に、コレクチムやモイゼルトは、プロトピックでみられるような特有の熱感やヒリヒリ感が少ないとされています。そのため、お薬の刺激が苦手な方や、デリケートな部位の治療にも使いやすい選択肢です。

患者のライフスタイルに合わせた薬剤選択のポイント

アトピー性皮膚炎の治療を快適に続けるには、生活スタイルに合った薬選びが重要です。 医師は、効果や安全性だけでなく、以下の点も考慮して最適な薬を提案します。

【あなたのライフスタイルに合うのは?薬剤選択のチェックポイント】

  • ① 主な悩みはどの部位ですか?

    • □ 顔、首、まぶたなどデリケートな部位  → 刺激の少ないコレクチムモイゼルトが適しているかもしれません。
    • □ 体や手足など、皮膚が比較的丈夫な部位  → しっかりとした効果が期待できるプロトピックも有力な選択肢です。
  • ② 薬の刺激感は気になりますか?

    • □ 以前、薬でヒリヒリした経験があり、刺激は避けたい  → コレクチムモイゼルトから試すのが良いでしょう。
    • □ 多少の刺激はあっても、まずは効果を優先したい  → プロトピックが症状改善への近道になる可能性があります。
  • ③ どのような効果を期待しますか?

    • □ まずはつらい炎症をしっかり抑えたい  → プロトピックは効果を実感しやすい方が多い薬剤です。
    • □ 穏やかに、肌の状態をじっくり良くしていきたい  → コレクチムモイゼルトが向いています。特にモイゼルトは、比較的早く効果が現れるとのデータもあります。
  • ④ 塗り心地や日中の使用を重視しますか?

    • □ べたつきが少なく、塗った後にメイクもしたい  → 使用感の良いコレクチムモイゼルトが適しています。
    • □ 夜に1回、しっかり塗れれば問題ない  → プロトピックは夜間の使用が基本となることが多いです。

最適な薬は一つではありません。 当院では、患者様の症状だけでなく、生活背景や治療へのご希望を丁寧にお伺いします。 そして、形成外科専門医・美容外科専門医が、あなたに合った治療法を一緒に見つけていきます。 どの薬が自分に合うか迷われた際は、ぜひ一度ご相談ください。

まとめ

今回は、アトピー性皮膚炎の治療で使われるコレクチム、モイゼルト、プロトピックについて、それぞれの仕組みや選び方を詳しく解説しました。

 

長年の実績があり高い効果が期待できるプロトピックと、刺激が少なくデリケートな部位にも使いやすい新しい選択肢のコレクチムやモイゼルト。どの薬にも長所があり、大切なのはご自身の症状や肌の状態、そしてライフスタイルに合ったものを選ぶことです。

 

「どの薬が自分に合っているのだろう?」と迷われたときは、ご自身で判断せず、ぜひ専門の医師にご相談ください。最新の知見をもとに、あなたにとって最適な治療プランを一緒に見つけていきましょう。不安なことや気になることがあれば、どんな些細なことでもお気軽にお話しくださいね。

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