【形成外科専門医が解説】ピアスが埋まったときどうしたらいい?埋まる理由と放置の危険性、対処法などについて

ある日突然、お気に入りのピアスが耳に見当たらなくなったら…と考えると、とても不安になりますよね。ピアスが皮膚に食い込んだり、完全に埋まったりする「埋没」は、誰にでも起こりうる身近なトラブルです。「痛みがないから大丈夫」と軽く考えてしまいがちですが、その自己判断が深刻な事態を招くかもしれません。
実は、ピアスによる局所的な感染は全体の約20%でみられる一般的な合併症と報告されています。埋まったピアスを放置することで感染が悪化し、膿が溜まったり、傷跡がケロイドとして残ったりするリスクがあります。最悪の場合、皮膚を切開して取り出す外科的な処置が必要になることもあるのです。
この記事では、形成外科専門医が、ピアスが埋まる原因から、ご自身でできる応急処置と絶対にやってはいけないNG行動、病院での治療法までを詳しく解説します。正しい知識を身につけ、大切な耳を守りながら、これからも安心しておしゃれを楽しみましょう。
まずはセルフチェック!ピアスが埋まった状態とは?
ピアスが突然見えなくなると、「どうしよう」と不安になりますよね。
ピアスの飾り(ヘッド)や留め具(キャッチ)が皮膚の中に食い込んだり、完全に覆われたりする状態を「埋没(まいぼつ)」と呼びます。
痛みを感じないこともありますが、放置することで深刻なトラブルにつながる可能性があります。まずは慌てずに、ご自身の耳の状態を冷静に確認することから始めましょう。
写真で見る「埋没」の典型的なサイン
鏡を見ながら、ピアスホール周りを優しくチェックしてみてください。もし以下のサインが一つでも見られたら、埋没が起きているかもしれません。
皮膚の盛り上がり ピアスという「異物」に対して体が反応し、周りの皮膚が堤防のようにドーナツ状に盛り上がって食い込んでいる状態です。
赤み・腫れ・痛み ピアスホールから細菌が侵入し、感染を起こしているサインです。熱っぽさを感じることもあります。
膿や浸出液(しんしゅつえき) 感染が進行すると、体が細菌と戦った結果として黄色い膿が出たり、傷を治そうとして透明~黄色っぽい液体(浸出液)が出たりします。
ピアスが見えない 強い腫れや、新しく作られた皮膚によって、ピアスのヘッドやキャッチが完全に隠れてしまっている状態です。
硬いしこり 皮膚の下で、埋まったピアスが硬い塊のように触れることがあります。実際に、ピアスのキャッチが埋まったまま数ヶ月が経過し、痛みを伴う硬い結節(けっせつ:しこりのこと)を形成したという報告もあります※。
これらのサインは、体がSOSを発している証拠です。早めに気づいて正しく対処することが、きれいに治すための第一歩です。
これは埋没?ただの腫れ?自分で判断する基準
「これは埋まっているの?それともただ腫れているだけ?」と、ご自身で見分けるのは難しいかもしれません。簡単なチェックポイントをまとめましたので、参考にしてください。
| チェック項目 | 埋没の可能性が高い状態 | ただの腫れの可能性が高い状態 |
|---|---|---|
| ピアスの見え方 | ヘッドやキャッチの一部または全部が皮膚に隠れている | ピアス全体は見えているが、周りの皮膚が赤く腫れている |
| 触ったときの感触 | 皮膚の下に硬い異物(ピアス本体)をはっきりと感じる | 全体的に熱っぽく、ブヨブヨと軟らかく腫れている感じがする |
| ピアスは動くか | 前後から優しく押しても、ピアスがほとんど、または全く動かない | 痛みはあるが、ゆっくりであればピアスを前後に少し動かせる |
たとえ「ただの腫れ」に見えても、決して油断はできません。内部で炎症が進んでいる可能性もありますし、長期間埋まったピアスが体全体の免疫に影響を及ぼし、耳とは全く別の場所に症状を引き起こしたと考えられる、非常に稀なケースも報告されています※。
表の「埋没の可能性が高い状態」に当てはまる場合や、判断に迷うときは、自己判断で放置せずに専門の医療機関を受診してください。
自分で取り出せるケースとすぐに病院へ行くべきケース
埋まっていることに気づくと、すぐにでも自分で取りたくなりますが、無理なセルフケアは症状を悪化させるだけです。以下の基準を参考に、慎重に行動しましょう。
【注意しながらであれば、自分で取り出せる可能性のあるケース】 以下のすべてに当てはまる場合に限ります。
- 埋まり方がごく浅く、飾りやキャッチのほとんどが見えている
- 痛み・腫れ・赤み・出血・膿などが一切ない
- 清潔な手でピアスの軸を軽く押しただけで、何の抵抗もなくスルッと出てくる
※少しでも痛みや抵抗を感じたら、その場で中止してください。無理は禁物です。
【すぐに病院へ行くべきケース】
- ピアスが完全に皮膚の下に埋まり、外から全く見えない
- 強い痛み、腫れ、赤み、熱感がある
- 膿や血が出ている
- 皮膚の下に硬いしこりができている
- 自分で少し押してみたが、全く出てくる気配がない
ピンセットで掘り起こしたり、無理やり押し出したりする行為は、絶対にやめてください。皮膚のバリア機能を壊して感染を広げたり、大切な軟骨を傷つけて耳の変形につながったりするリスクがあります。
不安なとき、迷ったときは、それが受診のサインです。ためらわずに形成外科や皮膚科へ相談しましょう。
なぜピアスは埋まるの?考えられる5つの原因
ピアスが皮膚に埋まるのには、必ず何らかの理由があります。ご自身の状況がどれに当てはまるかを知ることは、適切な対処と今後の再発予防に直結します。ここでは、ピアスが埋没する代表的な5つの原因を、専門家の視点から詳しく解説します。
原因1 キャッチの締めすぎによる圧迫
ピアス埋没の最も一般的な原因は、キャッチの締めすぎです。「ピアスを落としたくない」という気持ちから、つい耳たぶを強く挟み込んでしまうケースが後を絶ちません。
耳たぶが強く圧迫されると血行が悪くなり、むくみや腫れを引き起こします。その結果、腫れた皮膚がピアスのヘッド(飾り部分)やキャッチに乗り上げるようにして、どんどん食い込んでしまうのです。
特に、バネの力で装着するスプリング式のピアッサーは、意図せず耳を強く圧迫し続ける構造のため、埋没のリスクを高める可能性が指摘されています※。
理想は、ピアスの軸と皮膚の間に少し隙間があり、指で前後に軽く動かせるくらいの余裕がある状態です。
原因2 ピアスのシャフト(軸)が短い
ご自身の耳たぶの厚みに対して、ピアスのシャフト(軸)が短すぎることも埋没の大きな原因です。耳の厚さは人によって全く違いますし、同じ人でもその日の体調やむくみによって微妙に変化します。
特にピアスを開けた直後は、耳が炎症で腫れることを想定しなければなりません。腫れ上がったときにシャフトの長さに余裕がないと、ピアスの両端がパンパンになった皮膚に食い込み、逃げ場を失って埋まってしまいます。
ファーストピアスを選ぶ際は、ご自身の耳たぶの厚さより2〜3mm長い、有効軸長が8mm以上のものを選ぶとよいでしょう。
原因3 金属アレルギーによる炎症と腫れ
ピアスに使われている金属が体質に合わない場合、アレルギー反応としてピアスホール周辺が赤く腫れ上がることがあります。この強い腫れによってピアスの逃げ場がなくなり、結果的に埋没してしまうのです。
アレルギーは、ただ皮膚が荒れるだけの問題ではありません。長期間埋没したピアスから溶け出した金属成分(アレルゲン)が体内に吸収され、耳とは全く異なる部位で免疫反応を引き起こしたという非常に稀なケースも報告されています※。
アレルギーを起こしやすい金属としては、ニッケル、コバルト、クロムなどが知られています。もしアレルギーが心配であれば、チタンやサージカルステンレス(医療用ステンレス)、樹脂といった素材を選ぶようにしましょう。
原因4 ピアスの重さや不適切な形状
まだピアスホールが安定していない時期に、重すぎるピアスや大きすぎるデザインのピアスを着けることは、皮膚への大きな負担となります。ピアスの重みで常にホールが下に引っ張られ、ヘッド部分が皮膚に食い込みやすくなるのです。
逆に、ヘッドの飾りが小さすぎるピアスも注意が必要です。ふとした拍子に、ピアスホールの中にすっぽりと入り込んでしまう危険があります。
また、就寝中に枕などでピアスが長時間圧迫されることも埋没の引き金になります。ホールが完成するまでは、なるべくシンプルで軽いデザインのピアスを選び、寝るときの姿勢にも気を配ることが大切です。
原因5 感染や体質的な要因
不衛生な手でピアスを触ったり、ケアを怠ったりすると、ピアスホールから細菌が侵入して感染を起こします。感染するとホール周辺は熱をもって強く腫れ上がり、その圧力でピアスが皮膚の中に押し込まれてしまうのです。
感染のリスクはご自身のケア不足だけでなく、ピアスを開ける際の衛生管理や技術不足に起因することもあります※。
また、傷が治る過程で皮膚が盛り上がりやすい「ケロイド体質」の方も、ピアスホールで同様の反応が起こり、埋没につながる場合があります。日頃からピアスホールを清潔に保つことが、感染とそれに伴う埋没を防ぐための基本です。
ピアスが埋まったらどうする?正しい応急処置とNG行動
ピアスが皮膚に埋まってしまったとき、焦りからつい自分で何とかしようとしがちですが、それが最も危険な選択肢となることがあります。
誤った対処は症状を悪化させるだけでなく、深刻な感染症を引き起こす引き金にもなりかねません。まずは冷静に、これから解説する応急処置と、絶対に避けるべき行動を理解することが重要です。
悪化させないために自宅でできること
ご自宅でできることは、あくまで「症状をこれ以上悪化させない」ための応急処置に限られます。根本的な解決にはならないことを念頭に、以下のことを試してください。
患部に触れる前には必ず手を洗う 石鹸と流水で指の間や爪の先まで丁寧に洗い、清潔な状態にしてください。細菌の侵入を防ぐための大原則です。
圧迫を和らげる もしキャッチの締めすぎで食い込んでいるようなら、そっと緩めて圧迫を解除します。ただし、少しでも痛みを感じたり、埋まっていて動かせなかったりする場合は、絶対に無理をしてはいけません。
清潔を保つ 入浴の際は、シャワーのぬるま湯でそっと洗い流す程度にとどめましょう。石鹸やボディソープがしみることがあるため、無理に使う必要はありません。洗浄後は、清潔なタオルやガーゼで水分を軽く押さえるように拭き取ってください。
これらの処置をしても改善しない、あるいは少しでも不安がある場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。
感染を広げる!絶対にやってはいけないこと
良かれと思ってやったことが、取り返しのつかない事態を招くことがあります。以下の行動は感染リスクを著しく高めるため、絶対に避けてください。
無理やりピアスを掘り出そうとする ピンセットや針で皮膚をこじ開けたり、指で力ずくで押し出したりする行為は、皮膚のバリア機能を破壊し、細菌が体内に侵入する入口を作ってしまいます。ピアスに関連する合併症の中で最も頻度が高いのは感染症であり、安易な自己処置はそのリスクを格段に高めてしまうのです※。
不潔な手で何度も触る 気になってつい触ってしまう気持ちはわかりますが、手には目に見えない細菌が無数に付着しています。不衛生な管理は、ピアス埋没をはじめとする様々なトラブルの直接的な原因となります。
「痛くないから」と放置する 痛みがないからといって安心はできません。気づかないうちに皮膚の下で静かに炎症が進行している可能性があります。放置した結果、ピアスが完全に埋もれてしまい、いざ治療する際に皮膚を大きく切開せざるを得なくなるケースも少なくありません。
ご自身での解決が難しいと感じたとき、あるいは判断に迷ったときは、それが専門家である医師に相談すべきサインです。
放置は危険!ピアス埋没が引き起こす深刻なトラブル
「痛みもないし、少し食い込んでいるだけだから大丈夫だろう」 その油断が、後悔につながるかもしれません。
埋まったピアスを放置することは、皮膚の中に異物を抱え続けるのと同じです。体はこれを「侵入者」とみなし、さまざまな防御反応を起こします。
その結果、見た目の問題だけでは済まない、深刻なトラブルを引き起こすことがあるのです。
細菌感染や膿瘍(のうよう)の形成
ピアスホールは、常に外部と体内がつながっているデリケートなトンネルです。ここにピアスが埋まると、皮膚のバリア機能が損なわれ、細菌にとって格好の侵入口となります。
初めは赤みや軽い痛みだけでも、内部では感染が着々と進行。やがて、体が細菌と戦った残骸である膿(うみ)が溜まり、袋状の「膿瘍(のうよう)」を形成することがあります。
こうなると、皮膚を切開して膿を排出する処置が必要になり、治療も長引きます。
さらに、問題は耳だけにとどまりません。 ピアスホールから血管内に侵入した細菌が血流に乗って全身を巡り、心臓で「心内膜炎」を、脳で「脳膿瘍」を引き起こすといった、命に関わる重篤な合併症につながる可能性も報告されているのです※。
肉芽(にくげ)やケロイドになってしまうリスク
埋まったピアスという「異物」による刺激が続くと、私たちの体は傷を治そうとして過剰に反応してしまうことがあります。
この「頑張りすぎた」治癒反応の結果、ピアスホールの周りにできるのが、赤く柔らかな「肉芽(にくげ)」や、傷の範囲を越えて硬く盛り上がる「ケロイド」です。
特にケロイドは体質的な要因も大きいですが、ピアスが引き金となる代表的な合併症の一つとして知られています※。
一度できてしまうと、自然に元通りになることはほとんどありません。 見た目の問題だけでなく、かゆみや痛みを伴うこともあります。治療にはステロイドの注射や手術が必要になるなど、根気強い付き合いが求められるため、原因となる刺激を早く取り除くことが何より大切です。
皮膚の下に完全に埋もれてしまう可能性
「少し食い込んでいるだけ」の状態を放置すると、皮膚の再生能力が働き、ピアスのうえに新しい皮膚が覆いかぶさって、まるで蓋をするように完全に埋め込んでしまうことがあります。
これが「完全埋没」です。
こうなると、ご自身で取り出すことは不可能になります。 医療機関での処置も、単にピアスを引っ張り出すだけでは済まなくなります。局所麻酔の後、皮膚をメスで小さく切開して、埋もれたピアスを摘出しなければなりません。
ピアストラブルの治療は、初期段階であればあるほどシンプルです。しかし放置すればするほど、外科的な処置が必要になり、患者さんの体への負担も大きくなっていきます※。
「まだ大丈夫」と思っているうちに、治療のハードルが上がってしまう前に、ぜひ専門医に相談してください。
病院での治療法と流れを詳しく解説
「病院に行くほどではないかも…」とためらってしまうかもしれませんが、埋まったピアスをご自身で無理に扱うのは大変危険です。
実は、ピアスによる局所的な感染は決して珍しいものではなく、全体の約20%でみられる一般的な合併症と報告されています※。
放置することで状況が悪化する前に、専門の医療機関を受診しましょう。ここでは、実際の治療がどのように進むのか、費用はどのくらいかかるのか、具体的な流れを解説します。
何科を受診すればいい?形成外科と皮膚科の選び方
ピアスが埋まってしまったら、「形成外科」か「皮膚科」が主な相談先になります。どちらも対応可能ですが、それぞれ得意な分野が少し異なります。ご自身の状況に合わせて選ぶと、よりスムーズに治療を受けられます。
| 形成外科 | 皮膚科 | |
|---|---|---|
| 専門分野 | 傷や変形をできるだけきれいに治すプロフェッショナル | 皮膚の病気(炎症・感染症)治療の専門家 |
| 得意な処置 | メスを使った外科的な処置 (切開、摘出、縫合など) | 薬を使った内科的な治療 (抗生物質、ステロイド外用薬など) |
| こんなときにおすすめ | ・ピアスが皮膚に完全に埋まっている ・触ると硬いしこりになっている ・傷跡を最小限にしたい | ・赤み、腫れ、痛みが非常に強い ・黄色い膿が出ている ・まずは薬で炎症を抑えたい |
迷った場合は、まず電話で「ピアスが埋まってしまったのですが、診察は可能ですか?」と問い合わせてみてください。症状を伝えれば、どちらの科が適切か案内してもらえます。
治療の具体的な手順(局所麻酔と摘出術)
治療と聞くと少し怖いイメージがあるかもしれませんが、処置自体は短時間で終わります。一般的な流れを知っておくことで、少しでも不安が和らげば幸いです。
診察・カウンセリング まず、ピアスがどの程度埋まっているか、感染の有無などを丁寧に診察します。そのうえで、これから行う治療法について、わかりやすく説明しますので、心配なことは何でも聞いてください。
局所麻酔 処置中の痛みを取り除くため、耳たぶに直接、ごく細い針で麻酔薬を注射します。チクッとした痛みはこの一瞬だけ。麻酔が効いてくれば、処置中に痛みを感じることはありません。
切開と摘出 麻酔が十分に効いたことを確認してから、埋まっているピアスを取り出します。メスで数ミリほど皮膚を小さく切開し、そこからピアス本体やキャッチを慎重に摘出します。
洗浄・処置後のケア 傷口をきれいに洗浄し、感染予防のために抗生物質の軟膏を塗ります。状態によっては、飲み薬の抗生物質が処方されることもあります。実際に、埋没したピアスの除去と抗生物質による治療で、症状が改善したという報告もあります※。
処置にかかる時間は、麻酔なども含めて10〜20分程度です。
治療にかかる費用と保険適用の有無
ピアス埋没の治療は、原則として自費診療となり、健康保険は適用されないことが多いです。これは、ピアスのトラブルが美容目的の行為に関連するものと見なされるためです。ただ、実際には保険診療で対応している病院もあります。詳しくは受診を考えてる医療機関に問い合わせて見てください。
クリニックによって料金設定は異なりますが、費用の目安は以下の通りです。
【費用の目安(自費診療の場合)】
- 総額: 15,000円 〜 20,000円程度
- (内訳例: 診察料、局所麻酔料、摘出処置料、薬剤費など)
ただし、感染が悪化して膿が溜まる「膿瘍(のうよう)」の状態になっているなど、医師が明らかに「病気の治療」が必要だと判断した場合は、保険適用となることもあります。
正確な費用については、受診前にホームページで確認したり、電話で問い合わせたりすると安心です。診察の際に、治療内容と合わせて費用についても詳しく説明しますので、納得したうえで治療に進んでいただけます。
ピアス埋没に関するよくある質問
一度ピアスが埋まるというつらい経験をすると、治療後の傷跡や、今後のおしゃれについて不安になるのは自然なことです。
ここでは、そうした疑問に一つひとつお答えし、二度と繰り返さないためのポイントを専門家の視点から解説します。
治療後の傷跡は残る?きれいに治す方法は?
ピアスを取り出す処置では、皮膚を数ミリほど小さく切開するため、傷跡が完全にゼロになるわけではありません。
しかし、傷はごく小さいため、大きく跡が残る心配はほとんどありません。治療直後は少し赤みが気になるかもしれませんが、通常は数ヶ月から半年ほどかけて、徐々に周りの皮膚の色に馴染んで目立たなくなっていきます。
傷跡をできるだけきれいに治すには、治療後のセルフケアが鍵となります。
医師の指示を守る 処方された軟膏を塗ったり、保護テープを貼ったり、医師の指示に必ず従ってください。
患部を刺激しない 気になっても、傷跡を不必要にこすったり、かいたりするのはやめましょう。
紫外線対策を徹底する 紫外線は、傷跡に色素が沈着し、シミのようになってしまう原因になります。外出時は日焼け止めを塗るなど、しっかり対策を行いましょう。
これらの点を守り、傷跡が落ち着くまで丁寧にケアすることが大切です。
治療後、同じ場所にまたピアスを開けられる?
はい、治療した部分の炎症が完全におさまり、皮膚の状態が落ち着けば、同じ場所に再びピアスを開けることは可能です。
ただし、焦りは禁物です。 皮膚の表面はきれいに見えても、内部の組織が完全に回復するには時間がかかります。目安として、最低でも3ヶ月〜半年程度は期間をあけるようにしましょう。
また、治療した部分が、傷が治る過程でできた硬い組織(瘢痕:はんこん)として残ることがあります。硬い組織に再度穴を開けると皮膚への負担が大きく、再びトラブルを起こすリスクが高まるため、その場合は少し位置をずらして開けることをお勧めします。
いずれにしても、ご自身の判断で再開するのは避けてください。医師が診察すれば、皮膚の内部の状態まで判断し、最も安全なタイミングや位置をアドバイスできます。
ピアス穴を残したまま治療できる?
はい、特殊なシリコンチューブを留置することでピアス穴を塞がず埋没ピアス治療を行うことができます。
シリコンリングは1ヶ月程度留置します。その間も抗生剤内服や外用でのケアが必要です。
この治療を行っているクリニックが限られておりますので、ピアス穴を開けたままの治療をご希望の場合は受診先の病院に直接問い合わせてみてください。
今後のために知っておきたいピアス埋没の予防策
つらい経験を繰り返さないために、そしてこれからも安全にピアスのおしゃれを楽しむために、何よりも大切なのは「ご自身でリスクを理解し、対策する」ことです。
世界中でピアスの人気が高まる一方で、それに伴う様々な合併症も増えているのが現状です。患者さん自身が感染症や金属アレルギーといった多様なリスクを正しく知ることが、トラブルを防ぐ第一歩となります※。
ゆとりのある長さのシャフトを選ぶ 特に開けたての腫れやすい時期は、耳たぶの厚さより2〜3mm長いものを選びましょう。
キャッチは締めすぎない 耳とピアスの間に紙が一枚入るくらいの隙間が理想です。圧迫は血行不良と埋没の直接的な原因になります。
体に合った素材を選ぶ アレルギーによる腫れは埋没の引き金になります。不安な方は、チタンやサージカルステンレス、樹脂などの素材が安心です。
ホールを清潔に保つ 不衛生な手で触るのは厳禁です。入浴時に優しく洗い流し、水分をしっかり拭き取る習慣をつけましょう。
まとめ
今回は、ピアスが埋まる原因から危険性、病院での治療法まで詳しく解説しました。
キャッチの締めすぎや短いシャフトなど、ほんの些細なことがきっかけでピアスは埋まってしまいます。 痛みがないからと放置してしまうと、感染症やケロイドといった、治療が長引く深刻なトラブルにつながる可能性も否定できません。
ピンセットで無理に掘り出すなどの自己流の対処は、症状を悪化させるだけです。 「おかしいな?」と少しでも不安に感じたら、それが専門家に相談するべき大切なサインです。 ためらわずに形成外科や皮膚科を受診し、適切な処置を受けましょう。 正しい知識を身につけて、これからも安全にピアスのおしゃれを楽しんでくださいね。
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