【医師監修】ステロイド軟膏ランク一覧、使い分けも解説!【2026年最新版】
処方されたステロイド薬を前に、「この薬はどのくらい強いのだろう」「顔に塗っても大丈夫だろうか」と不安を感じていませんか。効果が高いと聞く一方で、自己判断での使用には多くの疑問が伴います。
この記事では、ステロイド外用薬の強さを決める「ランク」について、医師監修のもとで詳しく解説。日本の5段階分類を基準に、処方薬から市販薬までを網羅した一覧表で、ご自身の薬の位置づけが明確になります。
部位別の正しい使い方や治療のゴール設定を理解することで、副作用への不安が和らぎ、医師と共に前向きに治療を進めるための知識が身につきます。
ステロイドの強さはどう決まる?国内外のランク分類
ステロイド外用薬の強さは、主に「有効成分の種類」と「濃度」の組み合わせによって決まります。
医師が処方する際は、症状の重さや塗る体の部位に合わせて適切なランクの薬を選ぶため、この「強さ」の分類が非常に重要なものさしとなります。
分類方法は国や地域によって異なり、日本では5段階分類が一般的ですが、海外ではさらに細かく分類されることもあります。
日本の5段階分類と海外の4段階・6段階分類
ステロイド外用薬の強さの分類は、日本では5段階、英国などでは4段階、米国などでは6段階と、国によって基準が異なります。
日本の分類は、日本皮膚科学会のガイドラインに基づき、最も強い「I群:ストロンゲスト」から最も弱い「V群:ウィーク」までの5段階に分けられています。
一方、海外では血管収縮試験の結果などに基づいて、より細かく分類されることがあります。 血管収縮試験とは、ステロイドを皮膚に塗った際に血管が収縮して白くなる度合いを測るテストのことです。この反応が強いほど、薬の抗炎症作用も強いと評価されます※。
各国の分類の対応関係は、以下の表で確認できます。
| 強さの目安 | 日本(5段階) | 英国など(4段階)※ | 米国など(6段階)※ |
|---|---|---|---|
| 最強 | I群 (Strongest) | Very Potent | VERY HIGH POTENCY |
| ↓ | II群 (Very Strong) | Potent | HIGH POTENCY |
| III群 (Strong) | MEDIUM POTENCY | ||
| IV群 (Medium) | Moderate | LOW POTENCY | |
| 最弱 | V群 (Weak) | Mild | LOWEST POTENCY |
どの分類方法であっても、症状の重さや塗る部位に応じて強さを使い分けるという治療の基本原則は世界共通です。
有効成分の種類と濃度による違い
ステロイド外用薬の強さは、「どの種類のステロイドが」「どれくらいの濃度で」含まれているかによって決まります。
例えば、同じステロイドという名前がついていても、成分が違えば強さは全く異なります。
- クロベタゾールプロピオン酸エステル:「最強(Strongest)」ランクに分類される成分
- プレドニゾロン:「最弱(Weak)」ランクに分類される成分
このように、有効成分の種類そのものが、ランクを決定する大きな要因です。
さらに、薬の効き目は有効成分だけでなく、軟膏・クリーム・ローションといった「基剤(剤形)」によっても吸収率が変わるため、注意が必要です。
一般的に、有効成分の吸収のしやすさは以下の順で高くなる傾向があり、それに伴い効力も強まります※。
ローション < クリーム < 軟膏
軟膏は皮膚を覆って保護する作用(密封効果)が高く、有効成分がじっくり浸透するため、同じ成分でもクリームやローションより効果が高く出やすいと考えられています。
医師はこれらの「有効成分」「濃度」「剤形」という複数の要素を総合的に判断し、一人ひとりの患者さんの症状や皮膚の状態に最も適した薬を処方しているのです。
【軟膏・クリーム・ローション】剤形による効果と吸収率の違い
ステロイド外用薬は、たとえ有効成分がまったく同じでも、軟膏・クリーム・ローションといった「剤形(ざいけい)」の違いによって、皮膚への吸収率や効果の強さが変化します。
これは、有効成分を溶かしている「基剤(きざい:vehicle)」が、薬の浸透しやすさを左右するためです。
一般的に、有効成分の吸収のしやすさは以下の順で高くなる傾向があり、それに伴い効力も強まります※。
ローション < クリーム < 軟膏
医師はこれらの特性を深く理解したうえで、症状の性質、塗る部位、そして患者さんのライフスタイルまで考慮し、最適な一剤を処方しています。
最も効果が高いのは軟膏
軟膏が他の剤形に比べて効果が高い理由は、その優れた「皮膚保護作用」と「密封効果」にあります。
主成分であるワセリンなどの油性基剤が、皮膚の表面にしっかりと油膜を形成。これにより、皮膚からの水分蒸発を防ぐ高い保湿効果を発揮すると同時に、有効成分を角質層に閉じ込め、じっくりと浸透させます。
この状態は、ラップで患部を覆う「密封療法(ODT)」に近い環境を作り出し、薬の吸収率を高める働きがあります※。
【軟膏はこんな時に最適】
- メリット
- 刺激が極めて少なく、皮膚保護作用に長けている
- 乾燥してカサカサになった病変や、ひび割れがある部位にも安心して使える
- デメリット
- 油分特有のベタつきが強く、使用感を好まない人もいる
- 夏場や、毛の多い部分への使用には不向きなことがある
使用感が良いクリームやローション
軟膏のベタつきが苦手な方や、塗る範囲が広い場合に選択されやすいのが、使用感に優れたクリームやローションです。
剤形ごとの特徴を下記に整理します。
| 剤形 | 主な基剤 | 特徴と使い分け |
|---|---|---|
| クリーム | 油と水の乳剤 | ・軟膏より伸びが良く、サラッとした使用感 ・広い範囲に塗りやすい ・ジュクジュクした患部、カサカサの患部の両方に使える ・掻き壊した傷口などには、基剤に含まれる水分や添加物がしみて刺激を感じることがある |
| ローション | 液体(水、アルコールなど) | ・最もサラッとしていて、液体のため広げやすい ・特に頭皮のような毛の生えている部位に適している ・製品によってはアルコールを含み、清涼感がある一方、傷があると強い刺激になるため注意が必要 |
このように、どの剤形が一番良いというわけではなく、それぞれの長所と短所を理解することが重要です。医師は、皮膚の状態や部位を診察したうえで、最も治療効果が高く、かつ患者さんが継続して使いやすい剤形を選択しています。
【医師監修】ステロイド外用薬の強さランク一覧表
ステロイド外用薬の強さは、含まれる「有効成分の種類」と「濃度」の組み合わせによって、日本では主に5段階のランクに分類されます。
このランク分けは、ステロイドを皮膚に塗った際の血管収縮の度合いを測る試験など、科学的な根拠に基づいて客観的に決められています※。
ただし、薬の効き目は成分だけで決まるわけではありません。軟膏・クリーム・ローションといった「剤形」の違いも、皮膚への吸収率を左右する重要な要素です。製品全体の設計(フォーミュレーション)が、最終的な薬の効力を決定づけるのです※。
医師はこれらの要素を総合的に判断し、症状の重さ、炎症が起きている部位、そして患者さん一人ひとりの皮膚の状態に合わせて最適な一剤を処方します。
ランク別の代表的な処方薬(一般名・商品名)
処方されるステロイド外用薬は、ランクごとに多岐にわたります。ご自身が使っている薬がどのランクに位置するのかを把握しておくことは、治療への理解を深めるうえで役立ちます。
以下に、日本の5段階分類における代表的な処方薬をまとめました。
| ランク | 強さ(日本分類) | 代表的な薬(商品名 / 一般名) |
|---|---|---|
| Ⅰ群 | 最強 (Strongest) | ・デルモベート (クロベタゾールプロピオン酸エステル) ・ジフラール、ダイアコート (ジフロラゾン酢酸エステル) |
| Ⅱ群 | 非常に強い (Very Strong) | ・アンテベート (ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル) ・マイザー (ジフルプレドナート) |
| Ⅲ群 | 強い (Strong) | ・リンデロン-V (ベタメタゾン吉草酸エステル) ・フルコート (フルオシノロンアセトニド) |
| Ⅳ群 | 中等度 (Medium) | ・キンダベート (クロベタゾン酪酸エステル) ・リドメックス (プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル) |
| Ⅴ群 | 弱い (Weak) | ・プレドニゾロン (プレドニゾロン) |
ここで特に注意が必要なのは、皮膚が薄く薬剤を吸収しやすい顔・首・陰部などへの使用です。海外のガイドラインでは、「Very Potent(最強)」や「Potent(非常に強い・強い)」ランクの薬をこれらのデリケートな部位に使うことは、原則として禁じられています※。
自己判断で強い薬を安易に使用することは、副作用のリスクを高めるため、必ず医師の指示に従ってください。
市販で購入可能なステロイド薬リスト
薬局やドラッグストアで購入できるステロイド外用薬は、安全性の観点から、処方薬のランクのうち「強い(Strong)」「中等度(Medium)」「弱い(Weak)」の3段階に相当する製品に限られています。
症状や部位に合わせて正しく選ぶことが重要ですが、あくまで一時的な対処と考えるべきです。
| 強さの目安 (処方薬での相当ランク) | 特徴と注意点 | 代表的な市販薬の例 |
|---|---|---|
| ストロング (処方薬のⅢ群相当) | ・処方薬の「強い」ランクに相当する成分を含む ・急な悪化でつらい湿疹やかぶれなど、炎症をしっかり抑えたい場合に適する ・顔、首、陰部などのデリケートな部位や、広範囲への漫然とした使用は避ける | ・ベトネベートN軟膏AS ・フルコートf |
| ミディアム (処方薬のⅣ群相当) | ・比較的マイルドな効き目 ・顔などのデリケートな部位にも短期間であれば使用できる製品がある(添付文書の確認が必要) | ・セロナ軟膏 ・ロコイダン軟膏 |
| ウィーク (処方薬のⅤ群相当) | ・最も作用が穏やか ・赤ちゃんのあせもや、ちょっとした皮膚炎など、ごく軽い症状に用いられる | ・コートf MD軟膏 |
市販薬を5~6日間使用しても症状が改善しない、あるいは悪化するような場合は、自己判断で治療を続けるのは危険です。それは、市販薬で対応できる範囲を超えているサインかもしれません。
また、長期間の使用や広範囲への塗布は、有効成分の吸収量を意図せず増やしてしまい、副作用のリスクを高める可能性があります※。速やかに皮膚科を受診し、専門医の診断を仰ぎましょう。
顔や陰部にはNG?部位別の使用禁忌と注意すべきステロイド
ステロイド外用薬は、塗る体の部位によって推奨される強さが厳密に決まっています。
なぜなら、人の皮膚は部位によって厚さが大きく異なり、薬の成分を吸収する率も全く違うからです。
特に、顔や首、陰部といった皮膚の薄い部分は薬を吸収しやすく、そのぶん副作用も現れやすくなります。
そのため、「強い薬なら早く治るはず」という自己判断で、体の治療に使っている強いステロイドを安易に顔へ塗るような使い方は、思わぬ副作用を招く危険な行為です。
「Very Potent」「Potent」ランクの使用が禁じられる部位
「最強(Strongest)」や「非常に強い(Very Strong)」といった強力なステロイドは、皮膚が薄くデリケートな部位への使用が原則として禁じられています。
海外の診療ガイドラインでは、これらの強力なステロイド(Very Potent, Potent)を以下の部位に使うことは「DO NOT USE ON(使用してはならない)」と明確に指定されています※。
- 顔、まぶた
- 首、わきの下
- 鼠径部(そけいぶ:足の付け根)
- 陰部
これらの部位は皮膚が薄く、薬の吸収率が腕の内側などと比べて格段に高いため、皮膚が紙のように薄くなる「皮膚萎縮」や、赤ら顔のように血管が浮き出て見える「毛細血管拡張」といった副作用が起こりやすいのです。
同様の理由から、皮膚が薄くデリケートな子どもへの使用も、原則として禁じられています※。
中等度(Moderate)ランクでも専門家の指示が必要な理由
「中等度(Moderate)」ランクのステロイドであっても、顔などのデリケートな部位に自己判断で使用することは避け、必ず専門家である医師の指示に従う必要があります。
海外の指針でも、中等度のステロイドをこれらの部位に使う際は「専門家の意見なしに使うべきではない」と注意喚起されています※。
「弱いランクなら大丈夫だろう」という安易な自己判断が危険な理由は、主に2つあります。
診断が不正確なまま使用するリスク そもそも、その症状が本当にステロイドを塗ってよいものか、専門家による正確な診断が不可欠です。もし、ニキビやヘルペスといった感染症にステロイドを塗ってしまうと、かえって症状を悪化させる可能性があります。
目に関する重い副作用のリスク 特に目の周りに長期間使用すると、緑内障や白内障といった目の病気を引き起こす可能性が指摘されています。もし使用中に視界がかすむ、視力が落ちるなどの異常を感じたら、薬の使用を中止し、すぐに医師や薬剤師へ報告してください※。
安全な治療の鍵は、適切な強さ・量・期間を厳密に守ることに尽きます。その判断は専門家である医師にしかできません。
再発を繰り返さないための新常識「プロアクティブ療法」
プロアクティブ療法は、湿疹やかゆみが良くなった後も、あえて定期的に薬を塗り続けることで、症状のぶり返し(再燃)そのものを防ぐ治療戦略です。
これまでの「症状が出たら塗る」という対症療法(リアクティブ療法)では、見た目がきれいになっても皮膚の奥深くには炎症の火種が残っていることが少なくありません。
この目に見えない炎症をコントロールし、良い皮膚の状態を長く維持する。それがプロアクティブ療法の本質であり、アトピー性皮膚炎診療ガイドラインにおいても、再燃を繰り返す病変に対し強く推奨されている治療法です※。
症状が消えても週に数回塗る理由
症状が消えた後も週に数回薬を塗り続けるのは、皮膚の下に潜んでいる「見えない炎症」を根本からコントロールするためです。
アトピー性皮膚炎などの慢性的な皮膚疾患では、赤みやかゆみが引いてツルツルに見える皮膚でも、内部ではまだ炎症がくすぶっています。これは、皮膚のバリア機能が低下した状態が続いているため、わずかな刺激でも炎症が再燃しやすい状態にあることを意味します※。
この「見えない炎症」を放置すると、汗や乾燥といったささいなきっかけで再び症状が悪化し、治療が振り出しに戻ってしまいます。
そこで、症状が落ち着いた後も、医師の指示通りに週2回など間隔をあけて薬を塗ることで、このくすぶる炎症の火種を消し去り、再発しにくい健やかな皮膚へと導いていくのです。
寛解維持と再燃予防の効果
プロアクティブ療法に取り組む最大の目的は、症状がほとんどない「寛解(かんかい)」という穏やかな状態を長く保ち、急な悪化(再燃)の頻度を減らすことです。
治療のゴールは、薬を完全にやめることだけではありません。薬を上手に使いながら、かゆみや湿疹に悩まされず快適な毎日を送れる状態を維持することも、非常に重要な目標とされています※。
プロアクティブ療法によって得られる主なメリットは、以下のとおりです。
- QOL(生活の質)の向上 症状の波が小さくなり、安定した状態を保てるため、「また悪化するかもしれない」という不安が軽減します。
- 薬剤の総使用量の減少 一見すると薬を使い続けているように感じますが、急な悪化を繰り返してその都度大量の薬を使うよりも、結果的に年間の総使用量を減らせる可能性があります。
- 治療への前向きな姿勢 ご自身で皮膚の状態をコントロールできているという感覚は、治療を続けるうえで大きな自信につながります。

治療のゴールを見据えた「ステップダウン(漸減)」という考え方
ステロイド外用薬の治療では、症状の改善に合わせて薬の強さや使用頻度を計画的に減らしていく「ステップダウン(漸減)」が極めて重要です。
この戦略の目的は、治療効果を損なうことなく、副作用のリスクを安全に下げていくことにあります。
「もう良くなったから」と自己判断で塗るのをやめてしまうと、皮膚の奥深くに残っていた炎症の火種が再び燃え上がる「リバウンド」を招きかねません。医師の指示のもと、段階的に薬を調整することが、健やかな皮膚を取り戻すための賢明なアプローチといえます。
強いランクから始めて徐々に弱めていく治療戦略
ステップダウンは、症状の改善に応じてステロイドの効力を段階的に下げるための実用的な治療戦略で、「Topical Steroid Ladder(局所ステロイドラダー)」とも呼ばれます※。
これは、まず最初に症状に見合った十分な強さの薬で炎症をしっかりと鎮火させ、改善が確認できたら、はしご(ラダー)を一段ずつ降りるように薬のランクを下げていく考え方です。
中途半端な強さの薬で治療が長引くよりも、効果的に炎症をコントロールすることで、結果として薬の総使用量を減らせる場合があると考えられています。
具体的なステップダウンの方法には、主に以下のようなものがあります。
- ランクを下げる
- 例:「ストロング(強い)」から「ミディアム(中等度)」の薬へ変更する
- 使用回数を減らす
- 例:「1日2回」を「1日1回」、さらに「2日に1回」へと間隔をあける
- 弱い薬や保湿剤に切り替える
- 例:症状が落ち着いている日は保湿剤のみでケアする
このように段階を踏むことで、皮膚を安定させながら、一人ひとりに合った「最低限の有効な薬の量」を見つけていくのです※。どのタイミングで、どのように薬を減らすかは専門的な判断が必要なため、必ず医師の指示に従ってください。
副作用リスクを最小限に抑えるメリット
ステップダウン治療を計画的に行う最大のメリットは、ステロイドの長期使用で起こりうる副作用のリスクを最小限に抑えられる点です。
ステロイド外用薬は優れた効果を発揮しますが、必要以上に強い薬を漫然と使い続けると、皮膚に負担がかかることも事実です。
<長期使用で起こりうる主な副作用>
- 皮膚が薄くなる(皮膚萎縮)
- 皮膚の血管が赤く浮き出て見える(毛細血管拡張)
- ニキビのようなブツブツができる(ステロイドざ瘡)
ステップダウンは、症状を管理しながら薬の効力を段階的に下げていくことで、これらの副作用が起こる可能性を低減させるための重要な戦略です※。
最終的には保湿剤を中心としたスキンケアに移行したり、再発しやすい部位にだけ週に数回塗る「プロアクティブ療法」へとつなげたりすることで、薬に頼りすぎずに快適な状態を維持することを目指します。
知っておきたい特別なステロイド薬と注意点
ステロイド外用薬には、炎症を抑える基本の薬とは別に、特別な成分が加わった「複合薬」という種類があります。
また、塗る部位によっては副作用のリスクが格段に高まるため、特に注意深い使用が求められるケースも存在します。自己判断での使用は思わぬトラブルを招く危険があるため、医師の指示を厳守することが治療の前提です。
抗菌薬・抗真菌薬を含む複合薬の適切な使用期間
抗菌薬や抗真菌薬を含むステロイド複合薬は、細菌やカビの感染を伴う湿疹(二次感染)に対して、原則として短期間のみ使用される薬剤です。
湿疹によって皮膚のバリア機能が壊れると、そこから細菌やカビが入り込み、症状をさらに悪化させることがあります。
<二次感染が疑われる皮膚の状態>
- 患部がジュクジュクして、黄色い汁やカサブタができる(細菌感染の可能性)
- かゆみの強い赤い発疹の周りに、小さなブツブツやカサカサが広がる(カビ感染の可能性)
このような場合に、炎症と感染の両方を同時に抑える目的で複合薬が処方されます。
しかし、このタイプの薬を不必要に長く使い続けると、薬が効きにくい「耐性菌」を生み出すリスクが高まります。そのため、海外の指針でも感染症状を抑えるための使用は最長で7〜14日間までとし、その後は抗菌薬を含まない通常のステロイド薬に切り替えるべきだとされています※。
処方された期間を守り、自己判断で中止したり、漫然と使い続けたりしないようにしてください。
眼の周りの使用と緑内障・白内障のリスク
ステロイド外用薬を目の周りに使用すると、眼圧が上昇して緑内障を引き起こしたり、目のレンズにあたる水晶体が濁る白内障を招いたりするリスクがあるため、医師による厳重な管理が不可欠です。
なぜなら、目の周りの皮膚は顔の他の部分と比べても特に薄く、薬の成分が吸収されやすいからです。
海外のガイドラインでは、効力の強い「Very Potent(最強)」や「Potent(非常に強い・強い)」ランクの薬を、まぶたや顔へ使用することは**「DO NOT USE ON(使用してはならない)」**として明確に禁じられています※。
自己判断で体の治療に使っている強い薬を安易に目の周りに塗ることは、絶対に避けてください。
万が一、ステロイド薬の使用中に下記のような症状が現れた場合は、目の病気のサインかもしれません。直ちに使用を中止し、処方した医師や眼科医に報告してください※。
- 目のかすみ
- 視力の低下
- 光がまぶしく感じる
- 視野が狭くなった気がする
目の周りの治療では、必ず医師の指示通りのランクの薬を、決められた期間・回数だけ使用することが、深刻な副作用を避けるための大原則です。
ステロイド以外の治療選択肢
アトピー性皮膚炎などの治療では、ステロイド外用薬が基本となる一方で、それ以外の有効な塗り薬も第一選択肢として確立されています。
特に、副作用の懸念からステロイドを使いにくい顔や首などのデリケートな部位、あるいは症状が良くなった後の再発予防(プロアクティブ療法)において、ステロイドとは異なる仕組みで働く薬が重要な役割を果たします。
最新の『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024』でも、これから紹介する薬はステロイドと並び、治療の柱として強く推奨されています※。
タクロリムス軟膏(免疫抑制外用薬)
タクロリムス軟膏は、免疫細胞の過剰な働きをピンポイントで抑え込むことで、皮膚の炎症を鎮める非ステロイド性の塗り薬です。
ステロイドとは全く異なる作用を持つため、長期使用による皮膚萎縮(皮膚が薄くなる)などの副作用の心配がありません。そのため、顔や首といったデリケートな部位の治療や、良い状態を長く維持するための「プロアクティブ療法」にも適しています※。
効果の強さは、ステロイドの「ストロング(III群)」ランクに相当すると考えられており、治療の第一選択薬として強力な選択肢の一つです。
この薬の主な特徴を以下に整理します。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| メリット | ・顔、首など皮膚が薄い部位にも使いやすい ・ステロイド特有の副作用(皮膚萎縮、毛細血管拡張など)が起こりにくい |
| 注意点 | ・塗り始めの数日間、ヒリヒリとした灼熱感やほてりを感じることがある ・この刺激感は、皮膚の炎症が改善するにつれて1週間ほどで自然と治まる場合がほとんど |
治療戦略としては、まずステロイドで強い炎症をしっかり抑え込み、症状が落ち着いた段階でこのタクロリムス軟膏に切り替えて再発を防ぐ、という使い方も広く行われています。
デルゴシチニブ軟膏(JAK阻害外用薬)
デルゴシチニブ軟膏は、炎症やかゆみを引き起こす指令が細胞の中で伝わるのを内側からブロックする、比較的新しい作用機序の塗り薬です。
この薬は「JAK(ジャック)阻害薬」と呼ばれ、細胞内にある「JAK」という情報伝達に関わる酵素の働きを妨げることで、炎症やかゆみの信号そのものを遮断します。
タクロリムス軟膏と同様に、最新の診療ガイドラインで第一選択薬として強く推奨されており、治療の新たな柱となっています※。
この薬の主な特徴は、以下のとおりです。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| メリット | ・タクロリムス軟膏で感じやすい、塗り始めのヒリヒリとした刺激感が少ないとされる ・しつこい「かゆみ」の信号もブロックするため、かゆみに対する効果も期待できる |
| 使い分け | ・ステロイドやタクロリムス軟膏で効果が不十分な場合 ・塗り薬の刺激感が苦手な方の選択肢 |
ステロイドが効きにくい場合や、副作用が心配な状況において、デルゴシチニブ軟膏は心強い選択肢といえます。
これらのステロイド以外の薬も、効果を最大限に引き出し、安全に治療を進めるためには、専門医による診断と処方が不可欠です。自己判断で使用を中止したりせず、気になることがあれば必ず医師や薬剤師に相談してください。
まとめ
ステロイド外用薬には強さのランクがあり、症状や塗る部位に合わせて適切に使い分けることが、安全で効果的な治療の基本です。 薬の強さや剤形の違いだけでなく、再発を防ぐための塗り方やステロイド以外の選択肢など、治療法は多岐にわたります。 自己判断で薬を選んだり使い方を変えたりすると、症状の悪化や副作用を招く可能性があります。 皮膚の症状に悩むときは、まず皮膚科を受診し、専門医の診断のもとでご自身に合った治療法を見つけていきましょう。
参考文献
- アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024