【東海地方の防災】熊本地震から学ぶ南海トラフ地震への備え|今すぐできる対策を解説
今後30年以内に80%程度の確率で発生すると予測される南海トラフ地震に対し、「何をすればいいのか」と漠然とした不安を感じていませんか。2026年7月の熊本地震が示したように、大規模災害は決して他人事ではなく、東海地方に住む私たちにとって現実的な脅威といえます。
この記事では、熊本地震の具体的な教訓に基づき、命と生活を守るための防災対策を網羅的に解説します。本当に必要な防災グッズから自宅の安全対策、家族と決めておくべきルールまで、今すぐ実践できるチェックリスト形式で具体的に紹介します。
読み終える頃には、漠然とした不安が「備えがある」という具体的な安心感に変わります。あなたと大切な家族を守るための最初の一歩が明確になり、すぐに行動へ移せるようになるでしょう。
熊本地震の教訓から知る南海トラフ地震の被害想定
2026年の熊本地震がもたらした被害は、決して他人事ではありません。家屋の倒壊や土砂災害だけでなく、ライフラインや物流の停止、行政機能の麻痺といった事態は、より広範囲での被害が予測される南海トラフ地震で起こりうる未来を具体的に示しています。
この教訓から目をそらさず、これから起こりうる被害を正しく知ることが、あなたとあなたの大切な人の命を守る「備え」の第一歩です。
南海トラフ地震はいつ来る?最新の発生確率と規模
南海トラフ地震は、今後30年以内に80%程度の確率で発生すると予測されており、その規模はマグニチュード8〜9クラスに達すると想定されています※。これは、国の地震調査研究推進本部が公表している公式見解です。
過去の記録をたどると、南海トラフ沿いではおよそ100年から200年の間隔で巨大地震が繰り返されてきました。さらに「地震考古学」という、遺跡に残された液状化の跡などから過去の地震を探る研究では、驚くべき事実がわかっています。
文字の記録が残っていない弥生時代や古墳時代の遺跡からも巨大地震の痕跡が発見されており、この地域では数百年から千年という単位で、繰り返し大地が揺さぶられてきたことが科学的に裏付けられているのです※。
また、歴史上、東海地方の地震と四国・九州沖の地震が数年から数日の間に連続して発生する「連動型」の地震も確認されています。実際に1854年の安政地震では、東海地震の約30時間後に南海地震が発生し、被害を拡大させました※。一度揺れが収まっても、決して油断はできないのです。
ご自身の地域は?東海地方で想定される震度・津波・液状化
お住まいの地域では、具体的にどのような被害が想定されているでしょうか。まずは自治体が公表しているハザードマップを手に取り、ご自身の目で確かめることが不可欠です。
東海地方の広い範囲で震度6強から7の激しい揺れが予測されています。それに加え、沿岸部には非常に高い津波が到達し、埋立地など地盤の弱い土地では大規模な液状化現象の発生が想定されています。
こうした被害想定は、人々の行動にも実際に影響を与えています。ある研究では、政府が津波の高さを引き上げた被害想定を公表した後、津波リスクが高いとされた地域で転出する人が増え、転入する人が減るという人口移動が確認されました※。これは、多くの人が災害リスクを現実のものとして捉え、具体的な行動に移している証拠といえます。
事実、静岡県内の遺跡からは、西暦684年の白鳳地震の際に発生したと考えられる液状化の跡が見つかっており、地盤の弱い土地では1300年以上も前から同様の被害が繰り返されてきたことがわかっています※。
熊本地震で被災者が「本当に困ったこと」とは?
熊本地震で被災した方々が直面したのは、単なる物資不足だけではありませんでした。ライフラインが絶たれた状況下で、生活の質を著しく低下させる、より深刻な問題が浮き彫りになったのです。
実際に被災された方々からは、次のような切実な声が多く聞かれます。
- **トイレ問題:**断水で水洗トイレが使えず、衛生環境が急速に悪化した。
- **避難所のストレス:**過密状態でプライバシーがなく、心身ともに全く休まらなかった。
- **要配慮者への支援不足:**高齢者や持病のある人、障がいのある人へのケアが行き届かず、福祉避難所も十分に機能しなかった。
- **行政機能の麻痺:**支援物資の要請さえできず、必要な情報も届かない「公助の限界」に直面した。
- **繰り返す余震への恐怖:**終わりの見えない揺れに、精神的に追い詰められた。
これらの問題は、被害がより広範囲に及ぶ南海トラフ地震では、さらに深刻化する可能性があります。
特に、持病をお持ちの方や定期的な医療ケアを必要とする方にとって、停電や断水、物資輸送の遅れは命に直結します。公的な支援(公助)がすぐには届かない現実を直視し、自分自身で備える「自助」と、地域で助け合う「共助」がいかに重要か、熊本地震の教訓は私たちに強く問いかけているのです。
【保存版】命と生活を守る防災対策チェックリスト
大規模な災害では、行政機能そのものが麻痺し、公的な支援(公助)がすぐには届かない事態を想定しなければなりません。熊本地震の教訓からも、自分自身で命を守る「自助」と、近隣住民と助け合う「共助」の重要性は明らかです。
特に南海トラフ地震では、政府の能力を超える甚大な被害が予測されており、東日本大震災の教訓を踏まえても、国や自治体だけでは対応しきれない状況が考えられます※。
漠然とした不安を「備えがある」という具体的な安心感に変えるため、今すぐできる対策をリストで確認しましょう。備えは「モノ」「家」「家族のルール」の3つの視点で進めるのが基本です。
【最低3日分】本当に必要な防災グッズ一覧
災害発生後の最初の72時間(3日間)は、人命救助が最優先されるため、公的な支援物資が手元に届くのは難しいと考えられています。まずは自力で生き抜くための「最低3日分」の備えが不可欠です。
しかし、南海トラフ地震では広範囲で1カ月以上の長期停電が発生し、それに伴い医療機器の故障や社会機能の麻痺が深刻化する可能性も指摘されています※。ライフラインや物流が完全に停止することも想定し、「最低3日、できれば1週間以上」の備えを目標にしましょう。
【一次避難用:非常用持ち出し袋】 命を守るため、避難時にすぐに持ち出す最小限のセットです。リュックサックなど両手が空くものに入れ、玄関や寝室などすぐに持ち出せる場所に置きましょう。
| カテゴリ | 具体例 | ポイント |
|---|---|---|
| 命を守る必需品 | ・飲料水(500ml×2本程度) ・非常食(栄養補助食品、ゼリー飲料など) ・医薬品(持病の薬、お薬手帳のコピー) | ・薬は最低でも1週間分以上 ・お薬手帳はスマホで撮影しておくのも有効 |
| 情報・安全確保 | ・携帯ラジオ(手回し充電式が便利) ・ライト(ヘッドライトが両手を空けられる) ・モバイルバッテリー | ・ラジオは最新の被害状況や避難情報を得るために必須 |
| 衛生用品 | ・マスク ・除菌シート/スプレー ・携帯トイレ ・常備薬(痛み止め、胃腸薬など) | ・避難所での感染症対策にもなる ・断水に備え、水が不要なものを中心に |
| 貴重品 | ・現金(公衆電話用に小銭も) ・身分証明書のコピー | ・電子マネーやカードは停電で使えない可能性 |
【二次避難・在宅避難用:備蓄品】 避難所生活や自宅での避難生活を支えるための備えです。
- 飲料水: 1人1日3リットルを目安に、最低3日~1週間分
- 食料: 加熱不要で食べられるものを中心に、最低3日~1週間分
- 生活用品:
- カセットコンロ、ガスボンベ(多めに)
- 大量のトイレットペーパー、ティッシュ
- 簡易トイレ(断水時の必需品)
- ラップ、アルミホイル、ポリ袋(食器を汚さず使う、身体の保温など多用途)
- 新聞紙(防寒、着火剤など)

食料・水は何日分必要?賢い備蓄ローリングストック法
食料と水は、公的な支援が届きにくい発災後を乗り切るため「最低3日分」、物流網の寸断が長期化する事態に備えて「できれば1週間分以上」を目標に備蓄しましょう。
そこでおすすめしたいのが「ローリングストック法」です。これは、普段使っている食品を少し多めにストックし、消費した分を買い足していくことで、常に一定量の備蓄を保つ方法です。
【ローリングストック法の実践ステップ】
- 「少し多め」に買う: 普段から食べているレトルトご飯、缶詰、パスタ、カップ麺などを、いつもより1~2個多く購入します。
- 「手前から」使う: ストック棚の古いものから順番に消費します。賞味期限を定期的にチェックする習慣がつきます。
- 「使った分」を買い足す: 消費した分だけ、新しいものを補充します。
この方法の最大の利点は、災害時という非日常の状況下で「食べ慣れた日常の味」がもたらす安心感です。特別な非常食を用意する負担がなく、賞味期限切れによる無駄も防げます。
日々の生活の中に防災を無理なく組み込むことが、いざという時の心の回復力(レジリエンス)にも繋がります※。
【備蓄におすすめの食品例】
- 主食: パックごはん、乾麺(パスタ、そうめん)、カップ麺、シリアル
- 主菜: 缶詰(サバ、ツナ、焼き鳥)、レトルトカレー、牛丼の具
- その他: フリーズドライのスープや味噌汁、野菜ジュース、お菓子
今すぐできる自宅の安全対策(家具固定・ガラス飛散防止)
地震による死傷者の多くは、家屋の倒壊そのものよりも、家具の転倒や落下物が原因です。つまり、自宅内の安全対策を徹底するだけで、命が助かる可能性は格段に高まります。
【家具の転倒・落下・移動防止対策】 揺れを感じた瞬間に、家の中が凶器に変わるのを防ぎます。
- 背の高い家具: タンス、本棚、食器棚などは、L字金具や突っ張り棒で壁にしっかり固定する。
- 家電製品: テレビや電子レンジは、粘着性のジェルマットで台に固定する。キャスター付きの家具はロックする。
- 配置の見直し:
- 寝室や子どもの部屋には、できるだけ背の高い家具を置かない。
- 避難経路となる廊下やドアの近くに、倒れやすいものを置かない。
【ガラスの飛散防止対策】 割れたガラスによる怪我や、避難経路がふさがれるのを防ぎます。
- 飛散防止フィルム: 窓ガラス、食器棚の扉、ガラス製のテーブルなどに貼る。
- カーテンを閉める: 就寝時や外出時はカーテンを閉めておくだけでも、ガラスの飛散をある程度抑えられます。
特に沿岸部では、津波によって運ばれた漂流物やがれきが窓ガラスを破壊する危険性も指摘されています※。フィルムによる対策は、津波被害を軽減する上でも有効といえます。
家族と決めておくべき安否確認方法と避難場所
大災害が発生すると、安否を気遣う電話が殺到し、通信網がパンク状態(輻輳:ふくそう)に陥るため、電話はほぼ繋がりません。家族が離れ離れになった状況で再会するために、事前に「連絡方法」と「集合場所」を具体的に決めておくことが、何よりの安心材料になります。
【安否確認の方法を複数決めておく】 1つの方法に頼らず、複数の手段を組み合わせてリスクを分散させましょう。
| 確認方法 | 特徴・使い方 |
|---|---|
| 災害用伝言ダイヤル(171) | ・音声メッセージを録音・再生できるサービス ・毎月1日と15日などに体験利用ができるので、家族で練習しておく |
| 災害用伝言板(web171) | ・インターネット上で安否情報を登録・確認できる ・携帯キャリア各社も同様のサービスを提供 |
| SNS(X, LINEなど) | ・どのSNSで、どのようなキーワード(例: #〇〇家安否)を使って発信するか決めておく ・バッテリー消費には注意が必要 |
| 遠方の親戚・知人 | ・被災地から離れた特定の親戚などを連絡の中継点に決め、そこへ各自が連絡を入れるルールにする |
【避難場所と避難経路を「歩いて」確認する】 まず、お住まいの自治体が発行するハザードマップで、以下の3点を確認します。
- 自宅周辺のリスク: 浸水想定区域、土砂災害警戒区域など、自宅がどのような危険にさらされているか。
- 避難場所の種類と場所:
- 緊急避難場所: 津波や洪水から一時的に命を守る高台など。
- 避難所: 一定期間、生活を送るための小中学校など。
- 危険な経路: 冠水しやすいアンダーパス、崖崩れの恐れがある道、古いブロック塀など。
地図で確認するだけでなく、必ず家族全員で、昼と夜の両方の時間帯に実際に歩いてみることが重要です。災害時には、避難する人や車で道が混雑し、思うように進めない事態も想定されます※。複数の安全なルートを確認しておきましょう。
【状況別】地震発生から72時間、どう行動すべきか
地震発生から最初の72時間は、人命救助が最優先されるため、公的な支援(公助)がすぐに行き届かない「自助」と「共助」で乗り切るべき時間です。熊本地震では行政機能そのものが麻痺し、支援要請さえ困難になりました。この72時間を自力で生き抜くための冷静な判断と具体的な行動を知っておくことが、あなたと家族の運命を分けます。
その時どうする?地震発生直後の安全確保行動
地震の揺れを感じた直後は、パニックにならず「まず、その場で身の安全を守ること」が最優先です。突発的な揺れの中で慌てて動くと、転倒や落下物で重大な怪我につながる可能性があります。
【屋内にいる場合】
- まず、丈夫な机やテーブルの下にもぐり、頭部をクッションなどで保護します。
- 揺れが収まったら、火の始末を徹底し、いつでも避難できるようドアや窓を開けて避難経路を確保します。
- 足元に散乱したガラス片などで怪我をする恐れがあるため、スリッパや靴を履いてから行動しましょう。慌てて外に飛び出すのは危険です。
【屋外にいる場合】
- ブロック塀、自動販売機、垂れ下がった電線など、倒れたり落下したりする危険があるものから、すぐに離れます。
- カバンや上着などで頭を守りながら、周囲を見渡し、落下物のない公園や広場などの開けた場所へ移動します。
南海トラフ地震は、明瞭な前兆なく突発的に発生する可能性も十分に考えられます。さらに地震の揺れだけでなく、津波や土砂崩れといった二次災害にも厳重な警戒が必要です。特に、土石流のような突発的で破壊的な災害が発生すると、道路が寸断され、救助隊や医療チームの到着が著しく困難になることが指摘されています※。崖や川の近くなど、ハザードマップで危険とされている場所には、決して近づかないでください。
在宅避難と避難所生活のメリット・デメリット
自宅の倒壊・損壊がなく、安全が確認できる場合は、住み慣れた家で避難生活を送る「在宅避難」が基本となります。熊本地震では、避難所がすぐに過密状態となり、プライバシーの欠如や衛生環境の悪化から、車中泊や在宅避難を選んだ被災者が多くいました。どちらの避難方法にも一長一短があるため、状況に応じて冷静に判断することが求められます。
それぞれのメリット・デメリットを以下に整理します。
| メリット | デメリット | |
|---|---|---|
| 在宅避難 | ・住み慣れた環境で精神的負担が少ない ・プライバシーが保たれる ・ペットと一緒にいられる | ・食料、水、トイレなどの備蓄がなければ生活できない ・地域から孤立し、情報が得にくくなる可能性がある ・余震による建物の倒壊リスクが残る場合がある |
| 避難所生活 | ・食料や飲料水の配給を受けやすい ・災害に関する正確な情報を得やすい ・医療や専門的なケアを受けられる可能性がある | ・プライバシーの確保が極めて難しい ・集団生活による感染症の流行リスク ・精神的なストレスが非常に大きい |
大規模災害時には、医療機関も被災し、医療リソースが極端に限られます。迅速な医療ケアの提供は困難になるという現実を直視しなくてはなりません※。どの避難方法を選択するにせよ、特に車中泊などではエコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)を防ぐため、こまめな水分補給と足の運動を意識的に行いましょう。
停電・断水・通信障害が起きた時の具体的な対処法
停電、断水、通信障害は、大規模地震では「必ず起きる」ものと想定して備えることが、被災後の生活の質を大きく左右します。
【停電が起きたら】 懐中電灯やラジオ、モバイルバッテリーなどの備えはもちろんですが、最も注意すべきは「通電火災」です。避難で家を離れる際は、電気が復旧した際に、倒れた家電や傷ついたコードから火災が発生するのを防ぐため、必ず分電盤のブレーカーを落としてください。
【断水が起きたら】 飲料水の備蓄(1人1日3リットル×最低3日分)に加え、トイレを流したりするための「生活用水」の確保が死活問題となります。普段から浴槽に水を溜めておく習慣は、非常に有効な対策です。断水で水洗トイレが使えなくなると、衛生環境は急速に悪化します。熊本地震でも深刻な問題となったトイレ対策として、携帯トイレや簡易トイレの備蓄は必須といえます。
【通信障害が起きたら】 災害直後は安否確認の電話が殺到し、通信回線がパンク状態(輻輳:ふくそう)になるため、電話はほぼ繋がりません。家族の安否確認は、事前にルールを決めておいた「災害用伝言ダイヤル(171)」や「災害用伝言板(web171)」、SNSなどを活用します。また、携帯電話網がダウンしても、国や自治体からの正確な情報を得るために、電池や手回し充電で動く携帯ラジオが最後のライフラインとなる可能性があります。デマに惑わされず、公的機関からの情報に基づいて冷静に行動してください。
【家族構成別】特別な配慮が必要な方のための備え
大規模災害は、すべての人に等しく困難をもたらしますが、ご家族の中に特別な配慮が必要な方がいる場合、その困難は何倍にもなります。一般的な備えに加えて、一人ひとりの状況に合わせた個別の準備が、命を守る最後の砦となるのです。
熊本地震では、避難所での集団生活が難しい高齢者や障がいのある方、環境の変化に弱い乳幼児などが、支援の手からこぼれ落ちてしまう事例が数多く報告されました。この問題の根底には、平時の福祉サービスと災害時の防災対策がうまく連携していない「社会の仕組みの課題」があります※。
日頃受けているケアと避難計画を結びつけ、具体的なシミュレーションを重ねておくこと。それが、いざという時の混乱と心身の負担を大きく減らす鍵となります。
高齢者や要介護者がいる家庭で準備すべきこと
高齢者や要介護者がいるご家庭では、普段の生活を支える医薬品や介護用品を「最低7日分以上」確保すること、そしてライフラインが絶たれた状況を具体的に想定した情報収集と連携が不可欠です。
特に、南海トラフ地震では広範囲で1カ月以上の長期停電が発生し、医療機器が使えなくなる深刻な事態も想定されています※。単なる物資の備蓄だけでなく、「もしも」の時の行動計画を家族や支援者と共有しておきましょう。
| 項目 | 準備すべきこと・確認すべきこと | ポイント |
|---|---|---|
| 医薬品・医療機器 | ・持病の薬(最低7日分、できればそれ以上) ・お薬手帳(スマホでの撮影も有効) ・在宅医療機器のバッテリー対策 | ・かかりつけ医や訪問看護師と、停電時の対処法を具体的に相談しておく ・ポータブル電源の確保や、代替手段の検討が命を守る |
| 介護用品 | ・杖、補聴器(予備電池も)、入れ歯 ・おむつ、尿とりパッド、清拭シート ・介護用食品(刻み食、とろみ剤など) | ・普段使っているものを多めにストックするローリングストック法を実践する |
| 情報・連携 | ・福祉避難所の場所と受け入れ条件の確認 ・ケアマネージャーとの災害時連絡体制の構築 ・避難を手伝ってくれる近所の方との関係づくり | ・福祉避行所は誰でも入れるわけではないため、事前の確認が必須 ・平時のケアプランに「災害時の動き」を盛り込んでもらう |

乳幼児・妊婦さんが備えておきたい専用グッズ
環境の変化に敏感で、心身ともに大きな影響を受けやすい乳幼児や妊婦さんは、専用の衛生用品や栄養補助食品を多めに準備し、ストレスを少しでも和らげる工夫が大切になります。
特にアレルギー対応ミルクや特定の食品は、避難所ではまず手に入らないと考えてください。普段の生活の中で少し多めにストックしておく「ローリングストック法」が、母子の健康を守る生命線となります。
| 対象 | 準備しておきたい専用グッズ | ポイント |
|---|---|---|
| 乳幼児向け | ・液体ミルク、使い捨て哺乳瓶 ・ベビーフード、アレルギー対応食 ・おむつ、おしりふき(普段より多めに) ・抱っこひも ・お気に入りのおもちゃや絵本 | ・停電や断水時でも授乳できる液体ミルクは必需品 ・抱っこひもは、がれきの中でも両手を空けて安全に移動するために役立つ ・子どもの不安を和らげる「心の備え」も忘れずに |
| 妊婦さん向け | ・母子健康手帳、健康保険証のコピー ・破水に備えたナプキンや産褥パッド、タオル ・普段飲んでいるサプリメント ・体を冷やさないための保温グッズ | ・避難生活での冷えは禁物 ・カイロやブランケット、厚手の靴下などを準備しておく |

大切なペットを守るための同行避難の準備
ペットは法律上「物」として扱われますが、飼い主にとってはかけがえのない家族の一員です。その命を守るためには、災害時にペットと一緒に避難する「同行避難」を前提とした準備と、日頃からのしつけが極めて重要になります。
お住まいの自治体が定めるペットの同行避難ルール(受け入れ可能な避難場所、滞在の条件など)は、必ず事前に確認しておきましょう。
| 項目 | 準備すべきこと・確認すべきこと | ポイント |
|---|---|---|
| 準備品 | ・ペットフードと水(最低5日分以上) ・常備薬、療法食 ・トイレ用品(ペットシーツ、猫砂など) ・ケージやキャリーバッグ ・鑑札、マイクロチップ、迷子札 | ・フードや水は、慣れたものを準備する ・ケージは避難所でのペットの居場所となるため、落ち着ける大きさのものを |
| しつけ・訓練 | ・ケージやキャリーバッグに慣れさせておく ・無駄吠えさせないなどの基本的なしつけ ・他の人や動物に慣れさせておく社会化訓練 | ・災害時の対応力を高めるには、現実に近いシミュレーションが効果的※ ・普段からケージを「安心できる場所」と認識させることが、避難時のストレス軽減につながる |
| 健康管理 | ・狂犬病予防接種、混合ワクチン接種 ・ノミ、ダニの予防 | ・避難所での集団生活では、他の動物への感染症対策が必須となる |

漠然とした不安を「備えがある安心」に変える心の防災
防災対策は、物資の準備だけでは万全ではありません。本当に重要なのは、パニックにならず冷静な判断を下すための「心の準備」です。漠然とした不安を具体的な行動に変え、いざという時に自分と家族を守れる「備えがある」という安心感を育てていきましょう。
「自分だけは大丈夫」という正常性バイアスを乗り越える
災害時に避難を遅らせる最大の敵は、「自分だけは大丈夫」「たいしたことはない」といった根拠のない思い込み(正常性バイアス)です。この危険な心の働きを乗り越えるには、災害を「自分ごと」として捉える体験が欠かせません。
地域の防災訓練への参加はもちろんですが、近年ではAR(拡張現実)技術を使い、スマホをかざすだけで自宅周辺の浸水リスクなどを視覚的に体験できるアプリも登場しています。こうした技術は、津波などの危険を直感的に理解する上で非常に有効です※。
研究でも、現実に近いシミュレーション訓練を体験することが、災害対応の技術を高めるだけでなく、いざという時の自信につながることがわかっています※。知識として知るだけでなく、リアルな体験を通して危険を肌で感じることが、行動を変える第一歩です。
デマに惑わされないための正しい情報収集の方法
災害時には、不安な心理につけ込むデマや不正確な情報がSNSなどを通じて急速に拡散します。パニックに陥らず、命を守る行動をとるためには、公的機関が発信する信頼できる情報にアクセスすることが極めて重要です。
東日本大震災の教訓から、現在では沖合の津波を直接観測する技術などが進化し、より迅速で正確な情報提供が目指されています※。いざという時に慌てないよう、以下の情報源を日頃から確認する習慣をつけておきましょう。
- 国:気象庁、首相官邸、内閣府防災情報など
- 自治体:お住まいの都道府県や市町村の公式ウェブサイト、防災アプリ、公式SNSアカウント
- 公共放送:テレビやラジオ(NHKなど)
特に、お住まいの自治体の防災アプリや公式SNSは、避難情報などを得るために不可欠です。あらかじめスマートフォンに登録しておくことを強く推奨します。
完璧じゃなくていい「これだけは」という最低限の備え
防災対策で最も大切なのは、「完璧を目指さない」ことです。「あれもこれもやらないと」と気負うと、かえって一歩も踏み出せなくなってしまいます。まずは命を守るために本当に必要な「これだけは」という対策から始めましょう。
- 身の安全を守る:寝室など、長く過ごす部屋の大きな家具を1つだけでも固定する。
- 命をつなぐ備え:最低3日分の水と、加熱不要で食べられる食料、そして携帯トイレを準備する。
- 情報を確保する:停電に備え、電池や手回し充電で動くラジオと、モバイルバッテリーを用意する。
防災は「体験」から学ぶことで、自信と心の回復力(レジリエンス)を育みます※。まずは年に一度、備蓄した非常食を家族で食べてみるだけでも、立派な防災訓練です。小さな一歩の積み重ねが、「備えがある」という確かな安心感につながります。
まとめ
南海トラフ地震への備えは、熊本地震の教訓から「自助」と「共助」の重要性を学び、今すぐできることから始めるのが何より大切です。
食料や水の備蓄、家具の固定といった物理的な対策に加え、災害時の安否確認方法を家族で話し合うことも命を守る備えといえます。漠然とした不安は、具体的な行動によって「備えがある」という安心感に変わるでしょう。
完璧を目指す必要はありません。まずは寝室の家具を1つ固定する、携帯トイレを買ってみるなど、ご自身ができる小さな一歩から始めてみましょう。その行動が、あなたと大切な人の未来を守ることにつながります。
参考文献
- 地震調査委員会. 南海トラフの地震活動の長期評価(第二版).
- 直井道生, 佐藤慶一, 田中陽三, 松浦広明, 永松伸吾. 南海トラフ巨大地震の被害想定地域における社会移動 〜DID(差分の差分)法による影響の検証〜.
- 寒川旭. 地震考古学から見た南海トラフの巨大地震.
- (公財)ひょうご震災記念21世紀研究機構 研究戦略センター 研究調査部. 南海トラフ地震に備える政策研究 研究調査中間報告書.
- 高橋智幸. 南海トラフ地震津波に備えるための今後の対策-東日本大震災での津波被害を踏まえて-.
- 平成29年9月 中央防災会議 防災対策実行会議. 南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応のあり方について(報告).