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ジューンブライドは本当に人気? 6月の結婚式とブライダル業界の マーケティングをデータで検証

「6月は閑散期だから作られた」は、半分正しく、半分は言い過ぎです

ジューンブライドなのに、6月は結婚式が少ない?

「6月に結婚した花嫁は幸せになれる」。ジューンブライドは、日本でもっとも有名な結婚式の季節イメージの一つです。ところが、長年の実施データを見ると、6月が必ずしも一番人気だったわけではありません。2012年の首都圏調査では6月は8.7%で5位、2014年も8.9%で5位。2024年の全国推計では8.5%で6位となり、11月、10月、5月など春秋の月が上位でした。[1][2][3]

この数字だけを見ると、「梅雨で予約が入りにくい6月を売るために、式場業界がジューンブライドを広めた」という説明は、かなり説得力があるように見えます。ただし、最新データまで確認すると、話はもう少し複雑です。

この記事の結論

ジューンブライドは式場業界がゼロから発明した言葉ではありません。欧州に以前からあった婚礼の物語を、日本のホテル・式場業界が梅雨期の需要喚起にも利用し、広告や雑誌によって定着させた――と考えるのが妥当です。一方、「コロナ後、6月の空きが一方的に増え続けた」とまでは公開データから言えません。


最新の2025年調査では、6月が14.0%で1位

ここで無視できないのが「結婚マーケット調査2025」です。この調査では、6月のウエディングイベント実施割合が14.0%で1位となりました。[4] したがって、現時点で「6月は実際には不人気」と断定する記事は正確ではありません。

ただし、2025年から調査設計が大きく変わっています。従来は主にゼクシィ読者・会員で、挙式または披露宴・パーティーを行った妻側が対象でした。2025年は全国20〜49歳の男女へ対象を広げ、挙式・披露宴だけでなく、結婚を機とした食事会も含む市場調査へ再編されました。リクルートブライダル総研自身が「単年調査として扱い、過去との時系列比較には適さない」と明記しています。[4]

つまり「2024年8.5%から2025年14.0%へ急増した」「コロナ後の流れが反転した」とは言えません。測っている集団とウエディングの定義が変わったためです。それでも、少なくとも現在の広い意味でのウエディング市場では、6月が選ばれるケースが相当数ある、という点は押さえる必要があります。

ジューンブライドの由来は、式場業界の創作ではない

結婚と女性を守る女神「Juno」

ジューンブライドの由来として広く語られるのは、ローマ神話の女神Juno(ユノ、英語読みでジュノー)です。Junoは女性、婚姻、出産と深く結び付いた神とされ、英語のJuneはJunoに由来するという説があります。6月に結婚すると加護を受けられる、という西洋の言い伝えは、日本の式場業界よりはるか以前から存在します。[5][6]

また欧米では、日本の6月と違って初夏の気候が比較的よく、日照時間も長い地域があります。農作業、移動、生活暦など複数の要因も重なり、6月の婚礼が現実的な選択になりやすかったと説明されます。つまり、元の文化では「物語」と「季節条件」がある程度一致していました。

日本では6月が梅雨に重なる

日本へ持ち込むと条件が変わります。6月は多くの地域で梅雨に当たり、雨、湿度、蒸し暑さが問題になります。ガーデン挙式、屋外撮影、移動、衣装やヘアメイクへの影響を考えれば、春や秋を選びたくなるのは自然です。実際、2024年までの複数調査では、6月より春秋の月が上位でした。[1][2][3]

「閑散期対策のマーケティング」はどこまで本当?

日本では高度経済成長期に都市型ホテルが相次いで開業し、ホテル婚や披露宴市場が発展しました。[7] 一方、梅雨の6月は春秋より販売しにくい。そこで、すでに西洋に存在したジューンブライドの物語を、ホテルや式場、百貨店、結婚情報誌などが広告に活用した――という説明は、マーケティングの構造として極めて自然です。

重要なのは、「空いている6月を売るために日本の業界が伝説そのものを捏造した」という証拠があるわけではない点です。確認できるのは、①元の言い伝えは海外に存在した、②日本では6月が梅雨で春秋ほど選ばれない年が多かった、③事業者がジューンブライドを販促の物語として積極的に使ってきた、という三点です。

マーケティングとして優秀だった3つの理由

🔘値引きではなく「幸せになれる月」という意味を付けられる

🔘雨や湿度という欠点を、ロマンチックな物語で上書きできる

🔘ドレス、装花、紫陽花、雨の日写真など商品展開へ広げやすい

単なる「6月割引」では価格でしか訴求できません。しかしジューンブライドなら、消費者側が日程を選ぶ理由そのものを作れます。これは、需要の弱い時期に意味や物語を与えて選択肢へ変える、典型的な需要創造型マーケティングです。

コロナ禍以降、「空きが増えた」は本当か

市場全体は急減後に回復したが、構造は元に戻っていない

挙式・披露宴・披露パーティー市場は、2019年の約1兆3,940億円から2020年に約5,610億円へ急減しました。その後、2024年は約1兆2,520億円、2025年は約1兆2,670億円の見込みまで回復していますが、コロナ前水準には届いていません。[8] 婚姻件数も2019年の599,007件に対し、2024年は485,092件でした。[9]

したがって式場側から見れば、年間を通した予約枠の競争はコロナ前より厳しくなりやすく、「6月に限らず空きが見つかりやすい会場が増えた」という実感には合理性があります。ただし、これは6月固有の季節性というより、婚姻数の減少、結婚式をしない選択、少人数化、フォト婚・会食婚への分散が重なった市場構造の変化です。

「コロナ後に6月離れが加速」は断定できない

公開された月別調査からは、コロナ後に6月の割合が一貫して低下したという連続データを確認できません。むしろ2025年の新調査では6月が1位です。ただし調査設計が変わっているため、これを“6月人気の復活”と断定することもできません。正確な表現は、「市場全体の母数は縮小し、式の形は多様化した。一方、6月の相対的な人気は調査定義によって見え方が変わる」です。

6月は本当に“狙い目”なのか

6月が必ず安い、必ず空いているとは限りません。人気式場、大安・友引、土曜日、屋内設備の充実した会場は埋まりやすく、2025年の調査結果からも一律に閑散期とは言えません。それでも、会場や曜日によっては春秋より条件のよいプランが提示される可能性があります。

確認項目メリット注意点
料金・特典割引や特典が付く場合総額と最低保証人数を比較
日程希望日を押さえやすい場合土曜・吉日は別
天候雨天写真や紫陽花の演出屋外演出の代替案が必要
ゲスト暑さが本格化する前雨天移動、足元、湿度への配慮
会場屋内完結なら天候影響が小さい駅からの動線・送迎を確認

まとめ|ジューンブライドは「伝説×販促」の成功例

ジューンブライドは、日本の結婚式場業界がゼロから作った作り話ではありません。結婚と女性を守る女神Junoに由来する西洋の物語が先にあり、日本の業界が梅雨期の販売を後押しする魅力的なストーリーとして活用した、と見るのが妥当です。

実際、2012年、2014年、2024年の調査では6月は1位ではなく、春秋が強い傾向でした。一方、調査を再設計した2025年は6月が14.0%で1位です。この変化を単純な時系列として扱うことはできませんが、「今も6月は必ず閑散期」という見方も修正する必要があります。

コロナ後に加速したのは、6月離れだけではなく、婚姻数の減少と結婚式の多様化です。ジューンブライドは、需要の弱点を物語で補うマーケティングの成功例でありながら、その物語自体が消費者の選択を変え、現在では実際の需要も作り出している――そこが一番興味深い点ではないでしょうか。

参考文献・データ

1. リクルートブライダル総研「『ジューンブライド』でもある6月の花嫁が、一番多い!は本当か?」2013年(ゼクシィ結婚トレンド調査2012首都圏版)。

2. リクルートマーケティングパートナーズ/ゼクシィ結婚トレンド調査2014:6月8.9%、第5位。

3. リクルートブライダル総研「ゼクシィ結婚トレンド調査2024」(全国推計値):6月8.5%、第6位。

4. リクルートブライダル総研「結婚マーケット調査2025」2026年1月22日公開。6月14.0%。2025年度より調査対象・定義を変更し、過去との時系列比較に不適。

5. 国立国会図書館 レファレンス協同データベース「ジューン・ブライド(June bride六月の花嫁)は、幸せになるといわれていますが、なぜですか?」

6. Encyclopædia Britannica, 1911 ed., “June” and “Juno”; Juno and marriage rites, month-name traditions.

7. 日本ホスピタリティ推進協会「我が国ホテル産業の歩み」;東急株式会社「東急100年史 1960–1969」。

8. 矢野経済研究所「ブライダル産業年鑑」掲載値(ブラス株式会社 2025年7月期決算補足説明資料による):挙式・披露宴・披露パーティー市場規模。

9. 厚生労働省「人口動態統計」2024年確定数:婚姻件数485,092件。2019年599,007件。

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