SHBGとは?低い・高い原因とテストステロン、女性のニキビ・PCOSとの関係を医師が解説
血液検査で「SHBGが低い」「遊離テストステロンが高い」と指摘されても、何を意味するのか分かりにくい方は多いでしょう。
SHBGは、テストステロンやエストラジオールなどの性ホルモンと結合し、血液中を運ぶタンパク質です。性ホルモンの総量だけでなく、実際に組織へ作用しやすい「遊離ホルモン」の割合を調節しています。
特に女性では、SHBGが低下すると遊離テストステロンの割合が増え、ニキビ、多毛、月経不順などと関連することがあります。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)やインスリン抵抗性を考えるうえでも重要な検査項目です。
この記事では、SHBGの役割、低値・高値になる原因、テストステロンやニキビとの関係、検査結果を見る際の注意点について解説します。
SHBGとは?
SHBGは「Sex Hormone-Binding Globulin」の略で、日本語では性ホルモン結合グロブリンと呼ばれます。
主に肝臓で作られ、血液中で次のような性ホルモンと結合します。
- テストステロン
- ジヒドロテストステロン(DHT)
- エストラジオール
- その他の性ステロイドホルモン
性ホルモンは脂溶性で、そのままでは血液中を安定して移動しにくいため、SHBGやアルブミンなどのタンパク質と結合して運ばれています。
テストステロンの大部分はSHBGまたはアルブミンと結合しており、タンパク質と結合していない「遊離テストステロン」は全体の一部です。[1]
SHBGは、単に性ホルモンを運ぶだけではありません。ホルモンを強く結合することで、標的となる組織へ移行しやすいホルモンの割合を調節しています。つまり、SHBGは性ホルモンの「運搬役」であると同時に、「作用の強さを調整する役割」も担っています。
「総テストステロン」と「遊離テストステロン」の違い
血液中のテストステロンは、大きく3つの状態に分けられます。
| テストステロンの状態 | 特徴 |
|---|---|
| SHBG結合型 | SHBGと強く結合しており、組織へ移行しにくい |
| アルブミン結合型 | 比較的弱く結合し、組織で利用される可能性がある |
| 遊離型 | タンパク質と結合せず、組織へ作用しやすい |
「総テストステロン」は、この3つを合わせた量です。
一方、「遊離テストステロン」は、SHBGやアルブミンと結合していない部分を指します。そのため、同じ総テストステロン値でもSHBGの量によって、体内で作用しやすいテストステロンの割合が変わります。
SHBGが低い場合
SHBGと結合できるテストステロンが少なくなるため、遊離テストステロンの割合が増えやすくなります。
SHBGが高い場合
多くのテストステロンがSHBGと結合するため、遊離テストステロンの割合は減少しやすくなります。
したがって、総テストステロンだけを見て「男性ホルモンが多い・少ない」と判断すると、実際のホルモン作用を正しく評価できないことがあります。
SHBGが低いとどうなる?
SHBGが低い場合、血液中の遊離テストステロンが増え、アンドロゲンの作用が強く現れる可能性があります。
女性では、次のような症状との関連が考えられます。
- 顔や体のニキビ
- 皮脂分泌の増加
- 顎や口周囲の毛が濃くなる
- 頭髪が薄くなる
- 月経不順
- 排卵障害
- 多嚢胞性卵巣症候群
ただし、SHBGが低いだけで必ず症状が現れるわけではありません。症状は総テストステロン、遊離テストステロン、DHTへの変換、アンドロゲン受容体の感受性など、複数の要素に左右されます。
SHBGが低くなる主な原因
SHBG低値は、次のような状態で認められることがあります。
| SHBGが低くなる原因 | 考えられる背景 |
|---|---|
| 肥満 | 肝臓でのSHBG産生が低下しやすい |
| インスリン抵抗性 | 高インスリン血症がSHBG産生を抑える |
| 2型糖尿病 | インスリン抵抗性や肥満を伴うことが多い |
| PCOS | インスリン抵抗性とアンドロゲン過剰が関与する |
| 脂肪肝 | 肝臓におけるSHBG産生との関連がある |
| 甲状腺機能低下症 | 甲状腺ホルモン低下に伴いSHBGが低下することがある |
| ネフローゼ症候群 | タンパク質喪失の影響を受ける |
| クッシング症候群 | コルチゾール過剰が関係する |
| アンドロゲン製剤 | 肝臓でのSHBG産生を抑える |
| 一部のプロゲスチン・ステロイド薬 | 薬剤の影響で低下することがある |
特に肥満、インスリン抵抗性、脂肪肝、2型糖尿病ではSHBGが低い傾向があります。SHBGは性ホルモンを評価する検査であると同時に、代謝状態を反映する指標として研究されています。
SHBGとインスリン抵抗性の関係
インスリン抵抗性とは、インスリンが分泌されているにもかかわらず、その効果が十分に発揮されにくい状態です。
インスリン抵抗性が生じると、血糖値を維持するために膵臓から多量のインスリンが分泌されます。この高インスリン状態は、肝臓におけるSHBG産生を抑える方向に働きます。
SHBGが低下すると遊離テストステロンが増加し、女性ではニキビ、多毛、排卵障害などのアンドロゲン症状が現れやすくなります。
さらに、高インスリン血症は卵巣の莢膜細胞を刺激し、アンドロゲン産生を促進することがあります。
つまりPCOSでは、
インスリン抵抗性
↓
高インスリン血症
↓
肝臓でのSHBG産生低下+卵巣でのアンドロゲン産生増加
↓
遊離テストステロン増加
という流れが生じる可能性があります。[2,3]
SHBGと多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
PCOSは、排卵障害やアンドロゲン過剰、多嚢胞性卵巣などを特徴とする疾患です。
PCOSの女性では、次のような変化が重なることがあります。
- 卵巣でのアンドロゲン産生増加
- インスリン抵抗性
- 肝臓でのSHBG産生低下
- 遊離テストステロンの増加
2023年の国際的なPCOS診療ガイドラインでは、生化学的なアンドロゲン過剰を評価する際、総テストステロンと遊離テストステロンを用いることが推奨されています。遊離テストステロンは、計算式や遊離アンドロゲン指数によって推定することもできます。
ただし、SHBG低値だけでPCOSと診断することはできません。月経周期、臨床症状、血液検査、超音波検査などを組み合わせ、甲状腺疾患、高プロラクチン血症、非古典型先天性副腎過形成などを除外したうえで判断します。
SHBGが低いとニキビができやすい?
SHBGが低下すると、遊離テストステロンの割合が増える可能性があります。
遊離テストステロンや、その代謝物であるDHTが皮脂腺のアンドロゲン受容体へ作用すると、皮脂分泌や毛包角化が促進され、ニキビが悪化する一因になります。
特に次のような場合は、ホルモンの影響を考慮します。
- 成人後もニキビが続いている
- 生理前に顎や口周りのニキビが悪化する
- 月経不順を伴う
- 顎や口周りの毛が濃くなった
- 頭髪の薄毛を伴う
- 体重増加後にニキビが悪化した
ただし、ニキビは皮脂だけで起こる病気ではありません。毛穴の角化、Cutibacterium acnes、炎症、スキンケア、摩擦なども関与します。
また、血液中のアンドロゲン値が正常でも、皮脂腺のアンドロゲン感受性が高いことでニキビが生じる場合があります。SHBG値だけでニキビの原因を断定することはできません。
低用量ピルがSHBGを上昇させる理由
エストロゲンを含む低用量ピル・LEP製剤は、肝臓に作用してSHBGの産生を増加させます。
同時に、視床下部・下垂体から分泌されるゴナドトロピン、とくにLHを抑制することで、卵巣におけるアンドロゲン産生も低下させます。
その結果、
- 卵巣から作られるアンドロゲンが減る
- SHBGが増える
- SHBGと結合するテストステロンが増える
- 遊離テストステロンが減る
- 皮脂腺に届くアンドロゲン刺激が弱くなる
という作用が期待できます。
これが、低用量ピルによって女性のニキビや多毛が改善する理由の一つです。ホルモン避妊薬は、卵巣でのアンドロゲン産生を抑えるとともにSHBGを増加させ、遊離テストステロンを減少させます。
ただし、血栓症リスクなどを考慮する必要があり、すべての方が服用できるわけではありません。ニキビ治療だけを目的に自己判断で服用せず、婦人科や皮膚科で適応を確認する必要があります。
ピル服用中はSHBGの検査結果に注意
エストロゲンを含む低用量ピルを服用していると、SHBGが上昇し、卵巣でのアンドロゲン産生も抑えられます。
そのため、服用中のホルモン検査は本来のアンドロゲン状態を反映しない可能性があります。
2023年の国際PCOSガイドラインでは、低用量ピル服用中に生化学的アンドロゲン過剰を正確に評価することは困難とされています。どうしても評価が必要な場合は、別の避妊方法を確保したうえで、少なくとも3か月間ピルを中止して検査することが示されています。
実際に中止するかどうかは、服用目的や妊娠リスクを踏まえ、処方医と相談してください。
SHBGが高くなる主な原因
SHBGは次のような状態で高くなることがあります。
| SHBGが高くなる原因 | 考えられる背景 |
|---|---|
| 妊娠 | エストロゲン増加などの影響 |
| 低用量ピル・エストロゲン製剤 | 肝臓でのSHBG産生を促す |
| 甲状腺機能亢進症 | 甲状腺ホルモンの影響 |
| 一部の肝疾患 | 肝臓での産生・代謝変化 |
| 低体重・栄養状態の変化 | 代謝状態の影響 |
| 男性のアンドロゲン低下 | SHBGが相対的に上昇する場合がある |
| 一部の抗てんかん薬など | 薬剤による影響 |
| 遺伝的要因 | SHBG遺伝子の個人差 |
SHBGが高いと総テストステロンが正常または高く見えても、遊離テストステロンが不足している場合があります。
男性で性欲低下、勃起機能低下、筋力低下などがある場合は、総テストステロンだけでなくSHBGや遊離テストステロンを含めて評価することが重要です。
SHBGの基準値は?数値の目安と見方
遊離アンドロゲン指数(FAI)とは?
遊離アンドロゲン指数(Free Androgen Index:FAI)は、総テストステロンとSHBGからアンドロゲン作用の強さを推定する指標です。
一般的には次の式で計算されます。
FAI=総テストステロン(nmol/L)÷SHBG(nmol/L)×100
SHBGが低いほどFAIは高くなりやすく、女性の生化学的アンドロゲン過剰を評価する際に用いられることがあります。
ただし、FAIはあくまで推定値です。特にSHBGが30nmol/L未満と著しく低い場合は、FAIが実際の遊離テストステロンを過大評価する可能性があり、慎重な解釈が必要です。計算遊離テストステロンはアルブミンも考慮するため、FAIより安定した指標となる場合があります。
SHBGを上げる方法はある?
SHBGだけを上げることを治療目標にするのではなく、低下している原因を確認することが重要です。
肥満やインスリン抵抗性が背景にある場合は、次のような対応によってSHBGが改善する可能性があります。
- 適正体重を目指す
- 極端な食事制限を避ける
- 有酸素運動と筋力トレーニングを行う
- 睡眠不足を改善する
- 糖尿病や甲状腺疾患を治療する
- 脂肪肝を含めた代謝状態を評価する
- PCOSに対して適切な治療を行う
減量やインスリン抵抗性の改善に伴い、SHBGが上昇することが報告されています。
ただし、やせ過ぎや栄養不足ではSHBGが高くなることもあります。数値だけを操作しようとせず、背景にある疾患や生活習慣を評価することが大切です。
こんな症状がある場合は医療機関へ
次のような症状がある場合は、皮膚科、婦人科、内分泌内科などへ相談しましょう。
- 月経不順や無月経が続く
- 成人後に急にニキビが悪化した
- 多毛や頭髪の脱毛が進行している
- 声が低くなるなど男性化徴候がある
- 短期間で急激に体重が増えた
- 妊娠を希望しているが排卵が不規則
- 男性で性欲低下や勃起機能低下がある
- テストステロン値と症状が一致しない
特に、急速な多毛、声の低音化、筋肉量増加、陰核肥大などがある場合は、アンドロゲン産生腫瘍などを除外する必要があるため、早めの精査が必要です。
まとめ|SHBGは性ホルモンの「作用しやすさ」を左右する
SHBGは肝臓で作られ、テストステロンやエストラジオールなどの性ホルモンと結合するタンパク質です。
SHBGが低いと遊離テストステロンが増えやすく、女性ではニキビ、多毛、月経不順、PCOSなどと関連することがあります。一方、SHBGが高いと、総テストステロンが保たれていても遊離テストステロンが少なくなる場合があります。
重要なのは、SHBGだけで診断しないことです。
総テストステロン、遊離テストステロン、月経周期、症状、服用薬、甲状腺機能、肝機能、インスリン抵抗性などを合わせて評価する必要があります。
とくに月経不順や治りにくいニキビ、多毛を伴う場合は、皮膚だけの問題ではなく、PCOSなどのホルモン・代謝異常が隠れていないか確認することが大切です。
参考文献
- Handelsman DJ. Androgen Physiology, Pharmacology, Use and Misuse. Endotext.
- Winters SJ, et al. Laboratory Assessment of Testicular Function. Endotext.
- Teede HJ, et al. Recommendations From the 2023 International Evidence-based Guideline for the Assessment and Management of Polycystic Ovary Syndrome. J Clin Endocrinol Metab. 2023.
- Martin KA, et al. Evaluation and Treatment of Hirsutism in Premenopausal Women: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2018.
- O’Connell K, Westhoff C. Pharmacology of hormonal contraceptives and acne. Cutis. 2008;81:8-12.
- Carmina E, et al. Female Adult Acne and Androgen Excess: A Report From the Multidisciplinary Androgen Excess and PCOS Committee. J Endocr Soc. 2022.
- Mulhall JP, et al. Testosterone Therapy in Men With Hypogonadism: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2018.
- Society for Endocrinology. Clinical Practice Guideline for the Evaluation of Androgen Excess in Women. 2025.
