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幼稚園出身と保育園出身で性格は違う?「保育園児はたくましい」は本当か、研究から解説

小学校に入った子どもたちを見ていると、

「保育園出身の子は自己主張が強く、たくましい気がする」

「幼稚園出身の子はおとなしく、周囲に合わせるのが上手な気がする」

と感じることがあります。

ドッジボールや鬼ごとのような遊びでも、自分から前へ出てボールを取りに行く子、負けても何度も挑戦する子に、保育園出身者が多いように感じる保護者もいるでしょう。

では、これは単なる印象なのでしょうか。

結論からいうと、「保育園出身だから闘争心が強い」「幼稚園出身だから弱々しくなる」と断定できる研究結果はありません。

しかし、幼児期に経験する集団生活の長さや仲間との相互作用が、自己主張・協調性・自己統制などの社会的スキルに関係することを示した研究はあります。特に、他児と過ごす経験が増えるほど、対人場面で積極的に振る舞う経験も増えるという考え方には一定の研究的な裏付けがあります。

この記事では、「保育園育ちはたくましい」という印象がどこまで研究で説明できるのか、幼稚園と保育園で育つ社会性の違いについて考えます。


そもそも幼稚園と保育園では「子どもが過ごす時間」が違う

まず重要なのが、制度上の違いです。

従来型の幼稚園では、教育時間は1日4時間を標準としています。一方、保育園は保護者の就労などに対応するため、より長時間の生活の場になります。

もちろん現在は認定こども園や預かり保育なども普及しており、「幼稚園=4時間、保育園=8時間」と単純には分けられません。

それでも典型的なケースでは、

保育園の子どもの方が、幼い時期から同年代の子どもと長時間生活する

という違いがあります。

この「時間の差」が、社会経験の量の違いにつながる可能性があります。


保育園は幼児にとって「小さな社会」になりやすい

朝から夕方まで同年代の子どもたちと生活していると、当然いろいろなことが起こります。

おもちゃは一つしかない。

使いたい遊具に別の子がいる。

先生に話しかけたいのに、ほかの子も話しかけている。

自分がやりたい遊びと友達がやりたい遊びが違う。

ゲームで負ける。

仲間に入れてもらえない。

こうした出来事は、大人から見れば小さなことです。

しかし幼児にとっては、かなり本格的な利害調整の経験です。

そこで、

「貸して」

「僕もやりたい」

「次は僕の番」

「それは嫌だ」

「じゃあ一緒にやろう」

と自分の要求を伝えなければならない。

時には譲る。

時には負ける。

時にはケンカする。

そして翌日にはまた一緒に遊ぶ。

こうした経験を何百回、何千回と繰り返します。

つまり保育園は、単に親が働いている時間に預かってもらう場所ではなく、子どもにとってはかなり長時間過ごす**「最初の社会」**でもあるわけです。


「保育園児の方が自己主張が強い」は研究的にもあり得る

ここで重要なのが、自己主張です。

発達心理学では、社会性を単純に「いい子かどうか」で評価しません。

日本の幼児を対象とした研究でも、

  • Cooperation:協調性

  • Self-control:自己統制

  • Assertion:自己主張

は別々の社会的スキルとして扱われています。

つまり、

周囲に合わせる力と、自分の意見を言う力は別の能力

なのです。

自己主張が強いことは、それだけで「わがまま」「攻撃的」という意味ではありません。

「自分もやりたい」

「それは嫌だ」

「僕にやらせて」

と言えることも社会性の一つです。


他の子と過ごす経験が多いほど、対人場面に慣れる可能性

NICHDの研究では、24~36か月の子どもについて、家庭や本人の特性を調整したうえでも、他児のいる保育環境をより多く経験した子どもは、実際の観察では仲間との遊びがよりポジティブで熟練している傾向がありました。

ただし面白いことに、保育者からは仲間とのネガティブなやり取りも多いと評価されました。

つまり、

人との関わりが多い
→ 協力する経験も増える
→ 衝突する経験も増える

ということです。

これなら、「保育園児はなんとなく対人場面でたくましく見える」という印象も理解できます。


ドッジボールで保育園出身の子が活躍して見えるのはなぜ?

「ドッジボールで活躍している子に保育園出身者が多い」という点を直接調べた研究は、確認できませんでした。

したがって、これはあくまで仮説です。

ただ、ドッジボールを考えてみると面白いことが分かります。

運動能力だけではありません。

活躍するには、

ボールに近づく
→ 自分から取りに行く
→ 味方に『ちょうだい』と言う
→ 相手を狙って投げる
→ 当てられても切り替える

必要があります。

つまりドッジボールは、

運動能力 × 自己主張 × 積極性 × 競争への抵抗感

が表面化しやすい遊びです。

だから「競争的な遊びで前へ出る子」と「集団生活の中で自己主張する経験が多かった子」が重なる可能性は十分考えられます。

ただし、これは現時点では研究結果ではなく、既存研究から考えられる仮説として区別しておく必要があります。


「保育園は奪い合いだから強くなる」は半分正しく、半分違う

「奪い合い」という言葉にはかなり本質を突いた部分があります。

ただ、研究的にはもう少し正確に、

限られた資源を他児と共有・調整する経験が多い

と考えるのがよいでしょう。

幼児にとっての資源とは、おもちゃだけではありません。

遊具、場所、役割、先生の注意、友達との関係なども有限です。

そこで、

主張する → 衝突する → 交渉する → 譲る → 仲直りする

という経験が発生します。

大切なのは「奪うことを覚える」のではなく、自分と相手の要求が一致しない場面を処理する経験を積むことです。


幼稚園出身の子は協調性が高いのか?

一方、

「幼稚園出身の子は比較的おとなしく、先生の指示を聞き、周囲に合わせるのが上手」

という印象もあるかもしれません。

幼稚園教育自体も、集団活動や遊びを通して協調性を育てることを重視しています。

ただし、現時点の研究から、

幼稚園出身者の方が保育園出身者より協調性が高い

と一般化できる十分な根拠はありません。

ここはかなり重要です。

「幼稚園=協調性」

「保育園=自己主張」

という二分法にしてしまうと、科学的には言い過ぎになります。


「おとなしい子」と「社会性が高い子」は同じではない

ここは子育てでは非常に重要なポイントです。

例えば、

先生の言うことを聞く。

順番を守る。

友達に譲る。

ケンカをしない。

これらは大切な能力です。

しかし、

自分が本当はやりたいのに何も言えない

のであれば、少し意味が違います。

「どうぞ」と譲れることと、

「欲しいけれど言えない」

ことは同じではありません。

発達心理学で自己主張が独立した社会的スキルとして扱われる理由もここにあります。

社会性が高い子とは、単に従順な子ではなく、

必要なときには自分の意見を言い、必要なときには相手に合わせられる子

と考えた方が適切でしょう。


協調性が高すぎて「引いてしまう」子もいる

小学校では、幼稚園までとは違った場面が増えます。

「誰が代表をやる?」

「誰が最初に発表する?」

「ボールを誰が投げる?」

「チームのリーダーは誰?」

こういう場面では、

周囲に合わせる能力だけではなく、

「僕がやる」と手を挙げる能力

も必要です。

もちろん幼稚園出身でも積極的な子はいくらでもいます。

ただ、もし、

「優しいし先生の言うこともよく聞く。でも競争になるといつも引いてしまう」

のであれば、必要なのは協調性をさらに伸ばすことではなく、自己主張する練習なのかもしれません。


では保育園児は攻撃的になりやすい?

ここは誤解してはいけません。

昔の研究の一部では、長時間保育と外在化行動との関連が報告されたことがあります。

しかし、2023年のかなり重要な研究では、この問題を改めて検証しています。

ドイツ、オランダ、ノルウェー、カナダ、米国の7研究、計10,105人を統合して解析したところ、保育施設で過ごす時間と外在化問題行動との関連は、

r=0.00、p=0.88

でした。

つまり、ほぼゼロです。

したがって、

「保育園に長くいると攻撃的になる」

という単純な説明は現在の研究からは支持されません。


むしろ重要なのは「何時間いたか」より「そこで何を経験したか」

さらに面白いのが、小学3年生まで追跡したNICHD研究です。

1,364人について、24~54か月の保育中の仲間関係と、小学3年時の社会性との関連を調べています。

幼児期にポジティブな仲間との交流を多く経験した子どもは、小学3年生になったとき、

  • 社交性が高い
  • 協力的
  • コミュニケーション能力が高い
  • 攻撃性が低い
  • 親しい友人が多い
  • 仲間から受け入れられやすい

という傾向がありました。

逆に、ネガティブな仲間関係が多かった子どもでは、後の攻撃性が高く、社会的・コミュニケーション能力が低い傾向がありました。

つまり重要なのは、

保育園か幼稚園か

だけではありません。

そこでどんな人間関係を経験したか

なのです。


「保育園児はたくましい」の正体は闘争心より社会経験かもしれない

ここまでの研究をつなげると、一つの仮説が見えてきます。

保育園では比較的早い年齢から長時間、

同年代の子どもと生活する

要求がぶつかる

自分の希望を伝える

断られる

別の方法を考える

また翌日一緒に遊ぶ

という経験を繰り返します。

その結果として、

「負けても平気」

「断られてもまた言える」

「知らない子の中にも入っていける」

「自分の欲しいものを口にできる」

という対人場面での図太さが育つ子がいる可能性はあります。

これを日常語で表現すると、

「たくましい」「闘争心がある」

ように見えるのでしょう。

ただ、研究的には「闘争心」という人格特性が保育園によって形成されたと証明されているわけではありません。

より正確には、

豊富な仲間経験を通じて、自己主張や対人場面への慣れが形成される可能性

と表現するのがよいでしょう。


幼稚園出身と保育園出身、本当に差があるの?

ここで最大の注意点があります。

子どもはランダムに幼稚園と保育園へ振り分けられているわけではありません。

保護者の働き方、家庭環境、地域、教育方針、兄弟の有無などによって、どの施設を利用するか自体が変わります。

さらに、

園児数
クラス人数
自由遊びの量
外遊び
先生の介入方法
園の教育方針
子ども本人の気質

も違います。

だから、

保育園 → 性格A
幼稚園 → 性格B

という単純な因果関係にはできません。

実際、幼児期の仲間能力について調べたNICHD研究でも、母親の感受性や子どもの言語・認知能力などが、複数の場面にわたって仲間能力を予測していました。

家庭と園はどちらも影響しているわけです。


今は「幼稚園vs保育園」という区別自体も曖昧になっている

さらに現在は、

  • 認定こども園
  • 幼稚園の預かり保育
  • 保育園の幼児教育
  • 習い事
  • 学童以前からのスポーツ活動

などがあります。

そのため施設名だけを見ても、その子がどの程度集団生活を経験したのか分からなくなっています。

これは研究を読む際にも注意が必要です。

昔の「幼稚園児」「保育園児」という分類を、そのまま現在の子どもに当てはめることはできません。


結局、子どもに必要なのは「協調性」と「自己主張」の両方

子育てで目指すべきなのは、

保育園児のように強くする

でも、

幼稚園児のように協調的にする

でもないでしょう。

重要なのは、

自己主張

「僕はこうしたい」と言える。

自己統制

言いたいことがあっても、必要なら待てる。

協調性

相手の意見も聞いて、一緒に行動できる。

この3つです。

「強いけれど人の話を聞けない」では困ります。

逆に、

「優しいけれど何も言えない」

のも本人が将来困るかもしれません。

目指したいのは、

自分の意見を持ち、それを言葉にできる。でも相手の意見も聞ける。

そんな子どもではないでしょうか。


幼稚園出身で自己主張が苦手なら、家庭で何ができる?

園を変える必要はありません。

家庭でも自己主張する経験は作れます。

たとえば、

「今日何食べたい?」

ではなく、

「カレーとハンバーグ、どっちがいい?」

から始める。

慣れてきたら、

「今日は何したい?」

と本人に決めさせる。

公園でも、

「何して遊ぶ?」

「誰からボール投げる?」

と本人に選ばせる。

スポーツや集団遊びで負けても、すぐ親が介入しない。

友達との小さな衝突も、危険がなければ大人がすべて解決してしまわない。

つまり、

自分で選ぶ → 言う → 相手とぶつかる → 調整する

経験を奪わないことです。

自己主張は「性格」だけではなく、練習できる社会的スキルでもあります。


保育園出身で自己主張が強すぎるなら?

逆方向も同じです。

「自分がやる」

と言えるのは長所です。

そこから、

「相手はどうしたい?」

「二人ともやりたいならどうする?」

と考えさせれば、

自己主張 → 自己統制 → 協調

へ発展させられます。

つまり、保育園的な「たくましさ」と幼稚園的にイメージされやすい「協調性」は、対立する能力ではありません。

両方持つことができます。


まとめ|「保育園児はたくましい」という印象には一理ある。でも園だけで性格は決まらない

保育園出身の子どもを見て、

「自己主張が強い」
「競争になると前に出る」
「多少のことではへこたれない」

と感じることはあるでしょう。

研究からも、幼児期に他児との集団生活を多く経験することと、仲間との積極的な相互作用には一定の関連が認められています。

また、幼児期の仲間経験が小学校での社会性と関連することも、大規模縦断研究で示されています。

一方で、

保育園に長くいること自体が攻撃性を高める

という考えは、7研究・10,105人を統合した近年の分析では支持されませんでした。

そして、

「幼稚園児は協調的だが弱い」
「保育園児は競争的で強い」

とまで一般化できる科学的根拠もありません。

おそらく見るべきなのは「幼稚園か保育園か」という看板ではなく、

子どもが幼児期に、どれだけ自分を主張し、他人と衝突し、譲り、協力し、失敗して、また人間関係に戻っていく経験をしたか

なのでしょう。

子どもにとって必要なのは、協調性だけでも闘争心だけでもありません。

「自分を出せる強さ」と「相手とやっていける柔らかさ」の両方。

幼児期の集団生活には、その両方を学ぶ大きな意味があります。

参考文献

NICHD Early Child Care Research Network. Child Care and Children’s Peer Interaction at 24 and 36 Months: The NICHD Study of Early Child Care. Child Development. 2001;72:1478-1500.

NICHD Early Child Care Research Network. Social Competence with Peers in Third Grade: Associations with Earlier Peer Experiences in Childcare. Social Development. 2008;17:419-453.

Rey-Guerra C, et al. Do more hours in center-based care cause more externalizing problems? A cross-national replication study. Child Development. 2023;94:458-477.


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