ジュベルックでしこりができたら高周波(RF)で治せる?PDLLA結節に対する治療法と最新エビデンス
ジュベルック(Juvelook)は、PDLLA(poly-D,L-lactic acid:ポリ-D,L-乳酸)とヒアルロン酸を組み合わせたコラーゲンブースターです。
毛穴、小じわ、ニキビ跡、肌質改善などを目的として使用されていますが、注入治療である以上、合併症がまったくないわけではありません。
そのひとつが、
「注入したところに硬いしこりができた」
という症状です。
ヒアルロン酸であれば、ヒアルロニダーゼによってヒアルロン酸を分解できます。一方、PDLLAはヒアルロニダーゼで単純に溶かすことのできる物質ではないため、しこりが生じた場合の対応はより複雑になります。PDLLAによる結節や肉芽腫は稀な合併症ですが、実際に報告されています。PubMed Central (PMC)
そして近年、非常に興味深い治療法が報告されています。
それが、
「PDLLAのしこりに高周波(RF:radiofrequency)を照射して改善させる」
という方法です。
実際にJuvelook系PDLLA注入後に生じた結節にmonopolar RFを使用し、著明に改善した症例が報告されています。さらに2025年のPDLLA結節治療ガイドラインでも、energy-based deviceを利用した治療法として紹介されています。PubMed Central (PMC)
ただし非常に重要なのは、
「ジュベルック後のしこり=全部RFを当てればよい」
という話ではないことです。
むしろ治療で最も重要なのは、最初にその“しこり”が何なのかを診断することです。
ジュベルック後の「しこり」はすべて同じではない
PDLLA注入後に触れる硬結には、大きく分けて、
① 非炎症性結節(non-inflammatory nodule)
と、
② 炎症性結節・異物肉芽腫
さらに、
③ 感染・膿瘍
などがあります。
この区別は極めて重要です。
2025年に報告されたPDLLA nodule management guidelineでも、治療を開始する前に炎症性か非炎症性かを区別し、感染、遅延型過敏反応、肉芽腫などを鑑別することが強調されています。PubMed Central (PMC)
非炎症性結節
比較的典型的なのは、
「触ると硬い」
「コリコリする」
「赤くない」
「痛くない」
「熱感がない」
というタイプです。
これは局所にPDLLA粒子が集中したり、注入深度・注入量・組織内での分布などの影響によって生じると考えられています。
非炎症性結節は硬く境界明瞭ですが、炎症所見に乏しく、ステロイドへの反応も必ずしも良くありません。PubMed Central (PMC)
RF治療が特に注目されているのはこちらのタイプです。
炎症性結節・肉芽腫は話が違う
一方、
- 赤い
- 腫れている
- 痛い
- 熱感がある
- 時間とともに大きくなる
といった場合には、単なるPDLLAの局所集積ではなく、炎症性反応、異物肉芽腫あるいは感染を考えなければなりません。
PDLLAによるgranulomaでは、病理学的確認が必要となるケースもあります。
実際、PDLLA注入4か月後に肉芽腫様反応を生じた症例では、超音波で複数の結節を確認し、局所トリアムシノロンと短期間のプレドニゾンによって治療した報告があります。4回の治療後に完全に改善しています。Wiley Online Library
つまり、
「しこりがあるからRF」ではなく、まず非炎症性結節なのか、炎症性肉芽腫なのか、感染なのかを判断する
ことが重要です。
なぜ高周波でPDLLAのしこりが改善するのか?
ここが非常に面白いところです。
PDLLAは高分子材料であり、温度によって物理的性質が変化します。
重要なのが、
glass transition temperature(ガラス転移温度:Tg)
という概念です。
高分子はガラス転移温度を超えると、硬い状態から、より柔らかく可塑性のある状態へ変化します。
PDLLAは他のcollagen stimulatorと比較して比較的低いガラス転移温度を持つことが、RF治療を考える理論的根拠になっています。
2025年のPDLLA結節management guidelineでは、hydrated PDLLAを38~39℃程度に加温することによって柔軟性を高め、そこにmassageなどのmechanical manipulationを組み合わせるという機序が提示されています。PubMed Central (PMC)
つまり単純化すると、
RFでPDLLAを温める
↓
PDLLA粒子・結節が柔軟になる
↓
圧迫・マッサージを加える
↓
局所に集中していたPDLLAを分散・再構築する
という考え方です。
したがって、「RFでジュベルックを焼いて消す」という表現は正確ではありません。
むしろ、
「PDLLAの熱特性を利用して、結節を軟化・再分布させる」
というイメージの方が近いでしょう。
実際にジュベルックのしこりをRFで治療した報告
この治療法を直接支持する重要な論文があります。
SeoらがJournal of Cosmetic Dermatologyに報告した、
“Energy-Based Device Management of Nodular Reaction Following Poly-D,L-Lactic Acid Injection for Tear Trough Rejuvenation”
です。PubMed
症例は42歳女性。
tear trough、つまり目の下にPDLLAを注入した約3週間後、
硬い結節
が出現しました。
重要なのは、
紅斑なし
圧痛なし
という点です。
つまり典型的なnon-inflammatory noduleに近い状態でした。PubMed Central (PMC)
なお、この報告では通常のJuvelookより粒子径の大きなJuvelook Volume(40~60 μm)をtear troughに使用したことが結節形成に関係した可能性が指摘されています。通常のJuvelookについて同じリスクをそのまま当てはめることはできません。PubMed Central (PMC)
論文で実際に行われたRF治療プロトコール
ここはかなり具体的に報告されています。
使用されたのは、
monopolar radiofrequency
です。
報告された条件は、
| 項目 | プロトコール |
|---|---|
| RF | monopolar RF |
| 周波数 | 1~2 MHz |
| tip | 4 cm² |
| shot数 | 150 shots |
| 最大energy | 115 J |
| energy density | 28.75 J/cm² |
| 表面温度 | 41~42℃ |
| 処置後 | 強いcompression |
患者が熱さを強く感じる場合には、
115 J → 95 J(23.75 J/cm²)→ 75 J(18.75 J/cm²)
とenergyを下げる方法も記載されています。PubMed Central (PMC)
そしてRF照射後に、
strong compression
を行っています。
これは先ほどの「加熱+mechanical manipulation」という理論と一致します。
何℃まで温めるのか?
ここは論文を読む際に少し注意が必要です。
PDLLAそのものについて論じられているhydrated glass transition temperatureは38~39℃程度です。PubMed Central (PMC)
一方、実際のRF症例報告では、温度計を用いて皮膚表面温度を測定し、
41~42℃
に維持しています。Beauty Europe
したがって、
PDLLAの物性変化が起こりやすくなる温度:38~39℃付近
と、
実際の臨床で測定する皮膚表面温度:41~42℃
は分けて理解する必要があります。
実際どれくらい効いたのか?
この症例では非常に劇的です。
RF治療後、
24時間以内に結節が完全に消失
したと報告されています。PubMed Central (PMC)
この症例から言えるのは、
少なくとも非炎症性PDLLA結節に対してmonopolar RF+compressionが急速な改善をもたらした症例が存在する
というところまでです。
「RFをすれば24時間で治る」と一般化できる段階ではありません。
当院で考える実際の治療アルゴリズム
現在の文献を踏まえると、PDLLA注入後のしこりは以下のように考えるのが合理的です。
しこりを触れる
↓
赤み・疼痛・熱感・腫脹を確認
↓
赤み・疼痛・熱感なし
→ non-inflammatory noduleを疑う
まず経過観察やmassageを検討。
改善しない、あるいは整容的に問題となる場合には、
monopolar RFによる加温+compression / massage
が選択肢になります。
PDLLA guidelineでも、非炎症性結節に対してvigorous massageが初期治療として提案され、その後にmechanical/pharmacochemical disruption、RFなどが候補として挙げられています。PubMed Central (PMC)
赤み・疼痛・熱感あり
→ 炎症・感染を鑑別
感染が疑われる場合には、
培養
抗菌薬
必要に応じてドレナージ
などを検討します。
感染性結節は注入後数日~数週間で、圧痛を伴う紅斑性腫脹として出現することがあり、膿瘍化する場合があります。超音波は診断やドレナージにも有用です。PubMed Central (PMC)
遅発性で硬く増大する
→ foreign-body granulomaを考える
肉芽腫は注入6~24か月後に発症することがあり、徐々に増大する硬い結節として現れます。
この場合は、
intralesional corticosteroid
が重要な選択肢になります。PubMed Central (PMC)
超音波検査はかなり重要
PDLLAのしこり治療では、今後かなり重要になると思われるのが**高周波超音波(high-frequency ultrasound)**です。
触診だけでは、
PDLLAの局所集積
肉芽腫
膿瘍
別の皮下腫瘤
を完全に区別できません。
PDLLA nodule guidelineでも、超音波はfillerや合併症を評価するための有用な画像診断として位置づけられています。PubMed Central (PMC)
特に、
赤い
痛い
急に大きくなった
何度も再発する
治療に反応しない
というケースでは、漫然とRFを照射するより、超音波などを含めて原因を評価する方が安全です。
ステロイド注射とRFはどう使い分ける?
ここも重要です。
「しこりだからケナコルト」という単純な使い方は避けた方がよいでしょう。
非炎症性結節
では、ステロイドへの反応が乏しいことがあります。PubMed Central (PMC)
一方、
granulomatous inflammatory nodule
ではintralesional corticosteroidが有効なことがあります。
実際、PDLLAによるgranuloma-like reactionにtriamcinoloneを月2回使用し、4回の治療で完全に改善した症例報告があります。Wiley Online Library
したがって、
PDLLAの物理的集積 → RF・massageなど
免疫学的な肉芽腫 → steroidなど
と病態を分けて考えるのが合理的です。
生理食塩水や5-FUなどを注入する方法もある
RFだけが治療法ではありません。
これまでcollagen stimulatorによる結節に対しては、
生理食塩水
sterile water
5-FU
triamcinolone
mechanical subcision
などさまざまな治療法が提案されています。
PLLAに関するAsian consensusでは、非炎症性結節に対する生理食塩水+lidocaineや、炎症性granulomaに対するtriamcinoloneなどが紹介されています。Wiley Online Library
またPDLLA guidelineでも、mechanical subcisionと各種薬剤によるdisruptionが紹介されていますが、著者らはこれらの方法について必ずしも高い有効性を認めておらず、難治例では外科的切除が必要になる場合もあるとしています。PubMed Central (PMC)
この意味でも、皮膚を切開せず治療できる可能性のあるRFは非常に興味深い選択肢です。
ではRFはジュベルックのしこり治療の「標準治療」なのか?
現時点では、そこまでは言えません。
ここは非常に大切です。
RF治療を直接検討したJuvelook/PDLLAの臨床エビデンスは、現状では主に症例報告レベルです。
2025年のPDLLA management guidelineもRFを紹介していますが、
limited data
であり、
さらなるvalidationとrisk assessmentが必要
と明記しています。Wiley Online Library
つまりエビデンスの強さを並べると、
生物学的・材料工学的な合理性:あり
実際の臨床成功例:あり
expert guidelineへの掲載:あり
多数例case series:まだ乏しい
RCT:なし
という段階です。
ですから、
「RFで治せることが証明された」
ではなく、
「非炎症性PDLLA結節に対する新しい低侵襲治療として、monopolar RFが有望視されている」
くらいの表現が現在のエビデンスには最も忠実です。
まとめ|ジュベルックのしこりにRFは有望だが、まず診断が重要
ジュベルックなどのPDLLA製剤では、まれに注入部位に結節・しこりが生じることがあります。
近年、
monopolar RFでPDLLAを加温し、圧迫・massageを加えることで非炎症性結節を改善させる
という新しい治療法が報告されています。
PDLLAの比較的低いglass transition temperatureという材料特性を利用した方法であり、実際にRF治療後24時間以内に結節が消失した症例も報告されています。PubMed Central (PMC)
ただし、
赤い・痛い・熱を持つ・腫れているしこりまで同じ方法で治療するわけではありません。
PDLLA注入後のしこりには、
非炎症性結節
炎症性結節
異物肉芽腫
感染・膿瘍
など異なる病態が含まれます。
そのため、治療の第一歩は、
「しこりを消すこと」ではなく「しこりの原因を診断すること」
です。
適切に診断したうえで、
経過観察・massage
RF
生理食塩水等によるmechanical disruption
ステロイド
5-FU
抗菌薬
外科的治療
などを病態に応じて使い分けることが重要です。PubMed Central (PMC)
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参考文献
Seo SB, Wan J, Yi KH. Energy-Based Device Management of Nodular Reaction Following Poly-D,L-Lactic Acid Injection for Tear Trough Rejuvenation. Journal of Cosmetic Dermatology. 2025;24:e16575. DOI: 10.1111/jocd.16575。
Magacho-Vieira FN, et al. Clinical Management of Poly-D,L-Lactic Acid Nodules: A Guideline With Diagnostic and Treatment Flowchart. Journal of Cosmetic Dermatology. 2025. DOI: 10.1111/jocd.70158。
Perez Willis KM, Ramirez GR. Granuloma after the Injection of Poly-D,L-Lactic Acid (PDLLA) Treated with Triamcinolone. Case Reports in Dermatological Medicine. 2024:6544506。