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針を使わない局所麻酔とは?ニードルフリー注入器の効果・痛みを臨床研究から解説

「局所麻酔の注射が痛くて苦手」

「麻酔をするときの針が怖い」

「注射針を使わずに麻酔をする方法はないの?」

美容医療や皮膚科の処置を受ける際、施術そのものよりも、最初の局所麻酔注射が怖いと感じる方は少なくありません。

局所麻酔は痛みを抑えるために行うものですが、その麻酔薬を注射するときにも痛みが生じるという問題があります。

そこで注目されているのが、**注射針を使わずに局所麻酔薬を皮膚内へ届ける「ニードルフリー局所麻酔」**です。

実際に海外では、通常の麻酔注射とニードルフリー局所麻酔を比較した臨床研究が複数報告されています。

この記事では、ニードルフリー局所麻酔の仕組みや効果、通常の注射との違い、臨床研究で報告された疼痛軽減効果について詳しく解説します。

1. ニードルフリー局所麻酔とは?

ニードルフリー局所麻酔とは、注射針を使用せず、ジェット注入器などを用いて局所麻酔薬を皮膚や粘膜内へ導入する方法です。

通常の局所麻酔では、細い注射針を皮膚に刺して、リドカインなどの局所麻酔薬を注入します。

一方、ニードルフリー局所麻酔では、麻酔薬を高速の微細なジェット流として射出し、皮膚の表面を通過させて組織内へ届けます。

そのため、注射針を刺さずに局所麻酔薬を投与できるという特徴があります。

ただし、薬液が高速で皮膚に当たるため、刺激や痛みが全くないわけではありません。

2. なぜ局所麻酔の注射は痛いのか?

局所麻酔注射で痛みが生じる理由には、主に3つあります。

① 注射針による皮膚への刺激

皮膚には痛みを感じる神経が分布しています。注射針が皮膚を通過する際には、痛みが生じることがあります。

② 麻酔薬を注入する際の圧力

麻酔薬が組織内へ注入されると、周囲の組織が押し広げられ、圧迫感や痛みが生じることがあります。

③ 麻酔薬そのものによる刺激

局所麻酔薬の製剤特性や注入速度などによっても、注射時の痛みは変化します。

ニードルフリー局所麻酔は、このうち注射針による穿刺をなくすことで、患者さんの負担を軽減することを目指す方法です。

3. 2014年の臨床研究|麻酔時の痛みが通常注射より有意に少ない

ニードルフリー局所麻酔について、興味深いランダム化比較試験が報告されています。

2014年、イランの研究グループは、顔面の小さな外傷に対して縫合処置を受ける患者53名を対象に、ジェット式局所麻酔と通常の注射による局所麻酔を比較しました。

評価したのは、麻酔薬を投与するときの痛み、縫合中の痛み、麻酔効果が現れるまでの時間です。

麻酔薬を投与するときの痛みに大きな差

麻酔時の疼痛VASは、次のような結果でした。

局所麻酔の方法疼痛VAS
通常の注射4.4 ± 1.4
ニードルフリー1.1 ± 1.0

この差は統計学的に有意でした(p<0.0001)。

つまり、ジェット式局所麻酔では、通常の麻酔注射よりも投与時の痛みが大幅に少なかったという結果です。

さらに、縫合処置中の痛みについては、両群に統計学的に有意な差が認められませんでした。

この結果は、針を使わずに局所麻酔薬を投与することで、麻酔時の痛みを減らしながら、処置に必要な鎮痛効果を得られる可能性を示しています。

4. 2026年の研究|皮膚科手術35名でも疼痛軽減効果を確認

2026年には、皮膚科の小手術を対象とした新しい比較研究が報告されています。

この研究では、左右に類似した皮膚病変を持つ成人35名を対象に、一方には通常の注射、もう一方にはニードルフリージェット注入器を使用して局所麻酔を行いました。

局所麻酔時の痛みはニードルフリーの方が有意に少ない

局所麻酔の方法疼痛VAS
通常の注射5.48 ± 1.82
ニードルフリー2.20 ± 1.30

ニードルフリー局所麻酔では、通常の注射よりも痛みが有意に少ない結果でした(p<0.001)。

一方、実際の皮膚科処置中の痛みは、両方の方法で少なく、統計学的に有意な差は認められませんでした。

この研究でも、麻酔薬を投与する際の痛みを軽減しながら、処置中の鎮痛効果を確保できる可能性が示されています。

2014年の研究と同じ方向の結果が得られたことは、ニードルフリー局所麻酔の臨床的な有用性を考えるうえで重要です。

5. 2023年のシステマティックレビュー|ニードルフリー局所麻酔の有効性は?

2023年、オランダのエラスムス大学医療センターのBekkersらは、皮膚科領域におけるニードルフリージェット注入器の有効性と安全性について、システマティックレビューを発表しました。

システマティックレビューとは、特定のテーマに関する複数の研究を体系的に収集・評価し、現在までに得られている科学的根拠を整理する研究方法です。

このレビューでは、2022年4月までに発表された研究を検索し、最終的に37研究、合計1,911名を対象とした論文が採用されました。

対象となった治療は、ケロイド・肥厚性瘢痕、ニキビ跡、円形脱毛症、多汗症、爪疾患、皮膚腫瘍、美容医療、局所麻酔など多岐にわたります。

そのうち、局所麻酔を目的としたニードルフリー投与の研究は3件でした。

局所麻酔に関する3つの研究結果

これらの研究では、バネの力を利用するジェット注入器を使用し、縫合処置や皮膚科手術に必要な局所麻酔を行っています。

① 局所麻酔時の痛みが通常の注射より有意に少ない

通常の注射とジェット式局所麻酔を比較した研究では、麻酔薬を投与するときの痛みをVAS(視覚的アナログ尺度)で評価しました。

その結果、通常の注射では平均4.4だったのに対し、ジェット式局所麻酔では平均1.1でした。

この差は統計学的に有意でした(p<0.0001)。

一方、その後の縫合処置中の痛みには、両群で統計学的に有意な差が認められませんでした。

つまり、麻酔薬を投与するときの痛みは軽減され、縫合中の鎮痛効果については明らかな差が認められなかったという結果です。

ただし、処置中の痛みに有意差がなかったことは、両者の麻酔効果が完全に同等であると証明したことを意味するわけではありません。

② 小児の縫合処置でも良好な麻酔効果

別の研究では、小児の縫合処置において、ジェット式局所麻酔と通常の注射による局所麻酔を比較しました。

その結果、縫合処置中に痛みを感じなかった割合は、次のとおりでした。

局所麻酔の方法縫合中に痛みがなかった割合
ニードルフリー局所麻酔94%
通常の局所麻酔注射83%

この研究では、ジェット式局所麻酔でも多くの小児が痛みを感じずに縫合処置を受けられたことが示されています。

ただし、この数値だけでジェット式局所麻酔の方が麻酔効果に優れていると結論づけることはできません。

③ 皮膚科手術で約80%の病変に十分な鎮痛効果

3つ目の研究では、メピバカインという局所麻酔薬をジェット注入器で投与し、その後の皮膚科手術中の痛みを評価しました。

その結果、79.6%の病変で、手術中に痛みがなかったと報告されています。

この研究には通常の注射による比較群がなく、統計学的な比較も行われていません。

それでも、針を使わずに局所麻酔薬を導入することで、実際の皮膚科手術に必要な鎮痛効果が得られる場合があることを示しています。

3つの研究から分かったこと

評価項目研究結果
麻酔薬を投与するときの痛み通常の注射より有意に少ない研究がある
縫合処置中の痛み通常注射との比較で有意差なしとの報告
小児の縫合処置94%で処置中の痛みなし
皮膚科手術79.6%の病変で処置中の痛みなし
エビデンスの限界研究数が少なく、機器や処置条件も異なる

これらの結果は、ニードルフリー局所麻酔が単に「針を使わない」というだけでなく、実際に麻酔薬を皮膚内へ届け、処置に必要な鎮痛効果を得られる可能性があることを示しています。

システマティックレビュー全体の結論と限界

Bekkersらのレビューでは、ニードルフリージェット注入器を用いた皮膚科治療について、複数の疾患で良好な治療成績が報告されていました。

また、採用された研究では重篤な有害反応は報告されず、全体として良好な忍容性が示されていました。

麻酔薬を投与する際の痛みを軽減しながら、実際の処置に必要な鎮痛効果を得られる可能性が示されている点は、ニードルフリー局所麻酔の大きな特徴といえるでしょう。

参考文献

Bekkers VZ, Bik L, van Huijstee JC, et al. Efficacy and safety of needle-free jet injector-assisted intralesional treatments in dermatology—a systematic review. Drug Delivery and Translational Research. 2023;13:1584–1599.

DOI:https://doi.org/10.1007/s13346-023-01295-x

全文:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10126042/

6. ニードルフリー局所麻酔のメリット

① 注射針を使わない

針を刺す必要がないため、注射に対する恐怖感が強い方にも検討しやすい方法です。

② 麻酔時の痛みを軽減できる可能性

複数の臨床研究で、通常の注射よりも局所麻酔薬の投与時の痛みが少ない結果が報告されています。

③ 皮膚科の小処置への応用が期待できる

皮膚の縫合や小さな皮膚病変の処置などで、ニードルフリー局所麻酔の有用性が検討されています。

④ 注射針への恐怖感を軽減できる可能性

針を刺されることが苦手な方にとって、針を使わないという特徴そのものがメリットになる場合があります。

7. ニードルフリー局所麻酔の限界と注意点

ニードルフリー局所麻酔は、すべての局所麻酔注射を置き換えられる方法ではありません。

特に重要なのは、麻酔薬が届く深さと範囲です。

皮膚の浅い部分の処置では十分な鎮痛効果が得られても、深い組織を操作する手術では追加の麻酔注射が必要になることがあります。

また、使用する機器や薬剤、投与設定によって、麻酔薬の分布や鎮痛効果は異なります。

歯科領域の研究をまとめた2022年のシステマティックレビューでも、ニードルフリー局所麻酔は有用な選択肢になり得る一方、多くの治療では追加麻酔が必要だったと報告されています。

さらに、ジェット注入による痛み、腫れ、内出血などの局所反応が生じる可能性もあります。

8. キュアジェットでも局所麻酔はできる?

キュアジェット(CUREJET)は、電磁力を利用して薬剤を高速の微細なジェット流として射出し、注射針を使わずに皮膚内へ届ける医療機器です。

これまで紹介したように、海外ではニードルフリージェット注入器を用いた局所麻酔について、複数の臨床研究が報告されています。

これらの研究では、通常の注射と比較して麻酔薬を投与する際の痛みが少なく、実際の皮膚科処置でも良好な鎮痛効果が得られたことが報告されています。

キュアジェットも、薬剤を高速のジェット流として皮膚内へ導入するという共通の仕組みを持っています。

そのため、キュアジェットを用いた局所麻酔でも、従来のニードルフリー機器と同様に、麻酔時の痛みを軽減しながら十分な鎮痛効果が得られる可能性が期待されます。

特に、局所麻酔の注射が苦手な方や、針による痛みをできるだけ避けたい方にとって、魅力的な選択肢となる可能性があります。

ただし、キュアジェットそのものを用いた局所麻酔の有効性については、現時点で十分な臨床データが蓄積されているわけではありません。また、麻酔効果は薬剤の種類や投与量、導入深度、施術部位などによって異なります。

今後、キュアジェットによる局所麻酔の有効性と安全性について研究が進むことで、美容医療や皮膚科診療における新しい麻酔方法として、さらに活用が広がることが期待されます。

9. よくある質問

Q. ニードルフリー局所麻酔は痛くないですか?

注射針による穿刺はありませんが、ジェット流による刺激や痛みは生じることがあります。

臨床研究では通常の注射より痛みが少なかった例が報告されていますが、無痛を保証するものではありません。

Q. 通常の麻酔注射と同じように効きますか?

皮膚科の小処置を対象とした研究では、処置中の痛みに有意差が認められなかったという結果があります。

ただし、手術の深さや範囲によっては、通常の注射による追加麻酔が必要になることがあります。

Q. 顔の美容医療にも使えますか?

顔面の小外傷に対する縫合処置などで研究されています。

ただし、顔のすべての美容施術に適しているわけではなく、施術内容に応じた判断が必要です。

Q. 手汗ボトックスの前にニードルフリー局所麻酔を使うことはできますか?

はい。実際に、ニードルフリー機器を用いて局所麻酔を行った後に、手汗ボトックスを注射する方法が臨床研究で検討されています。

2017年、カナダの研究グループは、手掌多汗症患者20名を対象に、次の2つの方法を比較しました。

  • 右手: ジェット注入器で1%リドカインによる局所麻酔を行い、その後、通常の注射針でボトックスを投与
  • 左手: 局所麻酔を行わず、ジェット注入器でボトックスを直接投与

その結果、両方の治療方法で手汗の改善が認められました。

治療1か月後の多汗症重症度スコア(HDSS)の改善幅は、通常注射側で1.60点、ニードルフリー側で1.25点でした。

通常注射側の方が改善幅は有意に大きかったものの、HDSSが1点以上改善した割合には統計学的な有意差はありませんでした。

また、施術時の痛みにも有意差は認められませんでした(p=0.1925)。

この研究で注目したいのは、ニードルフリー機器による局所麻酔を組み合わせることで、通常のボトックス注射も疼痛に配慮して実施できる可能性が示されていることです。

ただし、局所麻酔を行わない通常注射との比較ではないため、ジェット式局所麻酔単独の疼痛軽減効果を証明した研究ではありません。

それでも、ニードルフリー機器はボトックスそのものの投与だけでなく、ボトックス注射前の局所麻酔にも活用できる可能性があることを示す興味深い研究といえるでしょう。

参考文献: Vadeboncoeur S, et al. Dermatologic Surgery. 2017;43(2):264–269. DOI: 10.1097/DSS.0000000000000970

10. まとめ|局所麻酔そのものの痛みを減らす新しい選択肢

局所麻酔は、施術時の痛みを抑えるために欠かせない治療です。

しかし、その麻酔注射自体が痛いという問題があります。

ニードルフリー局所麻酔は、注射針を使わずに麻酔薬を皮膚内へ届けることで、この問題を軽減することを目指した技術です。

実際に2014年と2026年の臨床研究では、通常の麻酔注射よりも投与時の痛みが有意に少なく、処置中の鎮痛効果については有意な差が認められませんでした。

「痛みを取るための麻酔が痛い」という問題を、針を使わない技術で解決できる可能性があります。

今後、機器ごとの有効性や安全性についてさらに研究が進むことで、美容医療や皮膚科診療における新しい局所麻酔の選択肢として発展することが期待されます。

参考文献

  1. Efficacy of the jet injector in local anaesthesia for small wound sutures: a randomised clinical trial compared with the needle infiltration technique. 2014.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25052218/
  2. Saravanan DI, Kanagarajan A, Chandrasekaran S. Needle-free Jet Injector Versus Conventional Needle Infiltration for Local Anesthesia in Minor Dermatologic Procedures: A Prospective Split-Body Comparative Study. Dermatol Surg. 2026.
    https://doi.org/10.1097/DSS.0000000000005283
  3. Bekkers VZ, Bik L, van Huijstee JC, et al. Efficacy and safety of needle-free jet injector-assisted intralesional treatments in dermatology—a systematic review. Drug Deliv Transl Res. 2023;13:1584–1599.
    https://doi.org/10.1007/s13346-023-01295-x
  4. The feasibility of needleless jet injection versus conventional needle local anesthesia during dental procedures: a systematic review. J Korean Assoc Oral Maxillofac Surg. 2022;48(6):331–340.
    https://doi.org/10.5125/jkaoms.2022.48.6.331
  5. Vadeboncoeur S, Richer V, Nantel-Battista M, Benohanian A. Treatment of Palmar Hyperhidrosis With Needle Injection Versus Low-Pressure Needle-Free Jet Injection of OnabotulinumtoxinA: An Open-Label Prospective Study. Dermatol Surg. 2017;43(2):264–269.
    https://doi.org/10.1097/DSS.0000000000000970
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